奈良県生駒郡。摂津との国境に近い山。
海の底沖つ白波竜田山いつか越えなむ妹があたり見む 古歌
朝霞やまずたなびく竜田山舟出すなむ日我れ恋ひむかも 古集
ひともねのうらぶれ居るに竜田山御馬近づかば忘らしなむか 憶良
風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらん 伊勢物語
唐錦たつたの山も今よりは紅葉ながらに常磐ならなん 貫之
唐衣たつたの山のもみぢ葉ははた物もなき錦なりけり 貫之
竜田山ふもとの里は遠けれどあらしのつてにもみぢをぞ見る 祝部成仲
もみぢばをふきこす風はたつた山みねの松にも錦織りかく 経信
たつた山しぐれにまどふ旅人を待つらむ宿につげよかりがね 経信
たつた山夜半のしぐれさそらふと高く雁がねふ人につげなむ 経信
竜田山散るもみぢ葉を来て見れば秋はふもとに帰るなりけり 匡房
竜田山松の村立ちなかりせばいづくか残るみどりならまし 清輔
立田山梢まばらになるままに深くも鹿のそよぐなるかな 俊惠
立田山月すむ嶺のかひぞなきふもとに霧の晴れぬかぎりは 西行
立田山しぐれしぬべく曇る空に心の色を染はじめつる 西行
立田山秋行く人の袖を見よ木木のこずゑはしぐれざりけり 慈円
心とや紅葉はすらむ龍田山松はしぐれにぬれぬものかは 俊成
あけぬともなほ面影のたつた山恋しかるべき夜半のそらかな 定家
龍田山紅葉ふみわけたづぬればゆふつけどりのこゑのみぞする 定家
夏衣たつたの山にともしすといく夜かさねてそでぬらすらん 定家
龍田山やまのかよひぢおしなべて もみぢをわくる秋のくれ哉 定家
龍田山一葉おちちるなつかげもおもひそめてし色は見えけり 定家
龍田山すそ野のあらしつゆふけばやがて乱るるまつむしの声 定家
または見じ秋をかぎりの立田山もみじの上にしぐれふるころ 定家
面影はたつたの山の初もみぢいろに染めてしむねぞ焦るる 定家
たつた山よものこずゑの色ながら鹿の音さそふ秋のかはかぜ 定家
時雨さし色はにほはずからにしきたつたの嶺のはるの夕風 定家
昨日けふ山のかひより白雲のたつたのさくら今かさくらむ 定家
龍田山ゆふつけ鳥のをりはへて我がころもでにしぐれふるころ 定家
心あてのおもひのいろぞたつた山けさしもそめし木ぎの白露 定家
たつた山ゆふつけどりの鳴く声にあらぬ時雨の色ぞきこゆる 定家
立田姫手ぞめの露のくれなゐに神代もきかぬみねのいろかな 定家
龍田山かみのみけしに手向くとや暮れ行くあきの錦おるらむ 定家
立田山木葉のしたのかりまくらかはすもあだに露こぼれつつ 定家
夏衣たつたの山のほととぎすいつしかなかむこゑをきかばや 実朝
雁なきてさむき嵐のふくなべに立田の山はいろづきにけり 実朝
けさ来なく雁がねさむみから衣立田の山はもみぢしぬらん 実朝
はるかすみたつたの山の桜花おほつかなきをしる人のなさ 実朝