にっぽん紀行「妻がのこしたレシピ〜池袋 小さなパン屋の物語〜」 2015.01.13


こんにちは。
今日の主役はこのパン。
あったかくて柔らかくてどこか優しい。
実はこのパンの力が一人の人生を変えようとしています。
ここは東京・池袋のすぐそばにある住宅街。
路地裏のこの一軒家はかつて地元で評判のパン屋さんでした。
でも5年前に店主が亡くなり閉店してしまいました。
ところが…いい香りがしてきていますよ。

(テーマ音楽)うんおいしいよ。
パンありますよパン。
パンいりますか?毎日250万人が行き交う大都市です。
次々と誕生するピカピカの高層ビル。
街は目まぐるしく変化し続けています。
一方で片隅には取り残された人たち。
華やかな街のもう一つの姿です。
ビル群の西には古くからの住宅地が広がっています。
ここにちょっと変わったパン工房があるんです。
それがこの一軒家。
オープンするのは毎週1回水曜日。
自宅の一室でパン作りを始めた…ぶどうが出ると焦げると苦いですから。
こんな感じで見えるような見えないような。
自費で材料を買いNPOの人たちと一緒に池袋のホームレスの人に配るパンを作っているんです。
実は山田さん6年前に定年になるまで会社一筋バリバリのサラリーマン。
パン作りのきっかけはがんで亡くなった妻と最後に交わした約束でした。
その事をやってほしいという。
パンなんか焼けないから。
山田さんの妻和子さんです。
自宅を改築して小さなパン屋さんを20年営んできました。
天然酵母にこだわった和子さんのパン。
その素朴で優しい味を求めて地元の人たちが連日訪れました。
その一方で和子さんはパンをホームレスの人たちに配る活動にも協力していました。
(鈴の音)5年前末期の膵臓がんと告げられ僅か4か月で亡くなった和子さん。
山田さんが定年になった直後でした。
亡くなる1か月前和子さんは山田さんに1枚の紙を書き残しました。
それはパンのレシピでした。
種類は最も簡単なパン。
材料や発酵のさせ方オーブンの温度。
初心者の山田さんでも作れるようにイラストまで描き込まれていました。
子供も独立し二人の時間を持てると考えていた山田さん。
和子さんの突然の死を受け入れられませんでした。
和子さんが読んでいた本や遺品は手付かずのままです。
店の明かりが消えた一軒家に一人残された山田さん。
なぜ和子さんは最後にレシピを渡したのか。
その思いを知りたいとパン作りを始める事にしたのです。

(テーマ音楽)そうなのねっていうとこで…こんばんは。
あのパン1個でいいですかね?ありがとう。
たった一人でスタートしたパン作り。
山田さんに思いがけない縁をもたらしました。
支援を受けた元ホームレスの人たちがパン作りを手伝いに来るようになったのです。
山田さん寝てたね。
おはようございます。
焼き加減を真剣なまなざしで見極める男性。
山田さんに生地の作り方を懸命に教わる男性。
人生につまずきながらももう一度やり直そうとやってきた人たちです。
でも少しずつ知ってくるといいやつじゃないみたいな。
苦労してるんだとか素直だなとか真面目だなとかそういうのが見えてくるよね。
計量始めるよ。
サラリーマン時代駅で見かけても気にも留める事のなかった人たち。
今ではこうした人たちとの気の置けない会話を毎週楽しみにしています。
今日は思いっきり使うよ。
和子さんのレシピがもたらした不思議な縁です。
クリスマスが近づく池袋。
山田さんはある特別なパン作りに挑もうとしていました。
焼き菓子風のパンやリースをかたどったパン。
毎年クリスマスになると和子さんが作ってくれた思い出のパンです。
和子さんはいつも誕生日やクリスマスには山田さんにパンを焼いてくれました。
定年まであと5年になった年。
仕事に打ち込む山田さんをねぎらって作ってくれたパン。
がんが進行し入院してからも山田さんの誕生日に紙でケーキを作ってくれました。
今度は自分が特別なパンを作りたい。
山田さんは1か月前から近所のパン屋さんを訪ね作り方や材料を調べてきました。
今度のクリスマスそのパンをホームレスの人たちに配る事にしたのです。
クリスマスイブ。
山田さんは焼きたてのパンを持って夜の池袋の街に出かけました。
パンありますよパン。
パンいりませんか?パン。
今日はねクリスマスのパンです。
メリークリスマス。
じゃあまた。
クリスマスのリースのパンですので。
メリークリスマス。
じゃあ暖かくして下さいね。
やっぱりうれしそうにもらってくれた。
それがご褒美だよね。
なぜ和子さんは自分にパン作りを託したのか。
山田さんはその思いに触れられた気がしました。
このパンが手渡して…渡っていくとその幸せ感も伝わっていける。
この夜山田さんはずっと作ってもらってきたクリスマスのパンを和子さんに供える事ができました。
あのパンしか焼けない私がシュトーレンまでいけるとは思ってなかったでしょう。
一人で焼いたわけじゃないけどね。
パン作りを通して新しい人生を歩み始めた山田さん。
和子さんの遺品に少しずつ手が付けられるようになりました。
和子さんがお客さんに配っていた注文書。
こんなの出てきちゃったよ。
まいったな。
息子が撮ってくれた夫婦の写真。
開きかけの手紙も出てきました。
レシピを山田さんに託した和子さん。
闘病先の療養所から送ってきた最後の手紙です。
山田さんは当時妻のがんを受け入れられず封は切ったものの読めないまま埋もれていたものでした。
「私のいっぱいのわがままを聞いて下さる事ありがとうと感謝します」。
「おやすみなさいいい夢をいっぱい見るからね」って。
和子さんは最後の手紙でも山田さんをねぎらっていました。
こういう手紙だったんだな。
もっと早く読んであげてもよかったけど今読んでもよかった。
今だともっとよく分かる。

(テーマ音楽)パンを通じて知り合った元ホームレスの仲間たち。
この日山田さんへのクリスマスプレゼントを用意していました。
パン作りに欠かせない冷蔵庫です。
(女性)いいねえ。
(男性)サンタさん…。
(男性)じゃあサンタさん上げて…サンタさんそっちでいいよ。
今使っている冷蔵庫の扉が壊れている事を知り中古のものを譲り受けてきてくれたのです。
おお〜!そういう事か!妻が残した1枚のレシピ。
気付けばそれが笑顔あふれる今日につながっている。
池袋の路地裏からは今日もパンのいい香りが漂ってきます。
2015/01/13(火) 00:10〜00:35
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「妻がのこしたレシピ〜池袋 小さなパン屋の物語〜」[字][再]

華やかなネオンが彩る東京・池袋の一角にある小さなパン屋。店主は不器用な元サラリーマン。5年前にガンで亡くなった妻との約束を果たすため、パンを焼く日々を見つめた。

詳細情報
番組内容
小さなパン屋の店主は、山田和夫さん(66)。妻の和子さんは、元気なころ天然酵母を使ったパン屋を営んでいた。そして、そのパンを池袋のホームレスの人たちに無料で配っていた。和子さんは、亡くなる直前、「ホームレスの人たちへのパン提供を続けてほしい」とレシピを和夫さんに手渡した。妻はなぜパンを焼いていたのか…。大都会の片隅で香り立つ、優しく暖かい焼きたてパンの匂い。そこに込められた夫婦の物語を見つめる。
出演者
【語り】イッセー尾形

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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