昔身寄りのない薪売りの少年がいました。
山でとれた薪を町で売った帰り道少年はいつもここでひと休みします。
今日は全部売れて団子が買えただ。
おっかあも食べておくれ。
少年は母親の顔も覚えていません。
けれども海のはるか彼方には常世という国があり幼い頃亡くなった母親が住んでいると聞かされていました。
大晦日のこと少年は正月の餅を買おうといつもよりたくさん薪をとりました。
背中の薪が重くてひと休みしたときです。
不思議な音が聞こえてきます。
それは沖の彼方から近づいてくる波の音でした。
うわぁ〜!クルクル波が踊ってるみたいだ。
回れ回れもっと回れ!回れ回れもっと回れ!アハハハハ!回れ回れ!あっしまった!《腹減った。
なんで薪を一本残らずやってしまったんだろう?》はっ!あなたは誰です?昨日はたくさんの薪をありがとうございました。
私は海の竜宮の乙姫様に仕える若姫といいます。
いつも心のこもった贈りものをいただいてそのお礼に参りました。
もしかしておっかあもそこにいるのか!?ええ乙姫様のもとで元気に暮らしています。
そうかぁ。
水しかねえけど。
あっ!うわぁすごいごちそうだ!お正月のお餅もある!乙姫様に言いつかって来たのです。
しばらくお世話をするようにと。
その日から2人は姉と弟のように仲よく暮らし始めました。
今夜のおかずこんなに釣れただ!まあ。
ハハハハ!ところがある日のこと…。
止まれ。
近くを通りかかった殿様が若姫の美しさに目を留め2人を館に呼びつけたのです。
翌朝までに米を千俵館の前に積み上げよ。
できぬときはその娘を館に召し抱える。
えっ!?若姫さんを?そんな…。
命令に従わねば我が領内に住むことは相ならん。
承知いたしました。
若姫さん。
朝までに米を千俵だなんてとてもムリだ。
大丈夫。
任せてください。
うわっ!こ…こんなにたくさんの馬が米俵を!千の米俵を積んだ馬は輝く夜空を館へと駆けていきました。
これで若姫さんは館に行かずに済む。
殿様はまた私たちを困らそうとするかもしれません。
そのときはこれを渡しなさい。
翌朝千の米俵があると聞いて殿様は…。
わしが命じたのは千と一俵じゃ。
ウソだ!殿様は千俵と…。
黙れ黙れ!わしをウソつき呼ばわりするつもりか!お待ちください。
では代わりにこれを差し上げます。
ぴいぴいどんどんエイサァの箱です。
何じゃそりゃ。
こんな箱でごまかされんぞ。
ん?ほうこれはおもしろい。
(笛の音)そっちの箱は何じゃ?ハハハハ!これは愉快じゃ。
ぴいぴいどんどん!〜次は…。
うわ〜っ!!エイサァエイサァ!エイサァエイサァ!い…痛い!やめろ!早く取り押さえろ!やめてくれやめてくれ…。
やめてくれ!しずまれ!痛い痛い…。
む…娘!こやつらを鎮めろ。
この子を殿様の跡継ぎにするなら兵たちを鎮めましょう。
バカな!薪売りの子供を跡継ぎになどできるか。
ええい者どもかかれ!ムリです。
殿様…降参です…。
ヒーッ!!わかった!跡継ぎにする!約束する。
フフッ。
若姫が竜宮へ帰る日がきました。
ありがとう若姫さん。
なんだかおいらのおっかあみたいだ。
そうなのかい?だったらおいら殿様の跡継ぎになんぞならん。
いい着物もいらん。
いつまでも一緒に暮らしたい。
それはこの世では叶わぬこと。
でも困ったときはきっと助けてあげます。
おっかあ…。
母を慕い懸命に生きる少年を竜宮の使いが助けたという噂は国じゅうに広まりました。
少年は成長しやがて領民に慕われるよき殿様になったということです。
昔むかし港町に兄弟が住んでいました。
兄は町でも指折りの廻船問屋の主でしたが弟は貧しい漁師でした。
はぁ…。
金を都合してほしいだと?お父に言われて来たのか?いや…。
まったく…。
困ったときだけ頼ってくるなんざムシがよすぎるってもんだ。
不漁続きでこのままじゃ年を越せねえ。
だから…。
いつまでも親の面倒みてねえでおめぇもさっさと家を出てしまえ。
お父だってケガがよくなればまた仕事に出られる。
それまではおらとかみさんで何とかする。
そんならおらに頼るな。
困った者を見ると手を貸そうとするのはおめぇの悪い癖だ。
兄は貧乏暮らしのなかで大工の父親に厳しく育てられるのがいやで家を出て商いを始めたのでした。
弟は父親と母親の面倒をみていたのです。
ん?じいさんどうした?ああすまん。
ちょっと疲れただけじゃ。
少し休めばよくなるじゃろう。
弟は街道までじいさんの道具箱を背負ってあげました。
こんな道具箱を背負って旅をするのは難儀じゃのう。
体が羽になったようじゃ。
(2人)ハハハッ…。
じいさんは旅をしながら小さな社を造るのが仕事だと言いました。
アンタ近頃珍しく親切な人じゃ。
お礼にいいことを教えてやろう。
いいこと?今朝港を見下ろす丘に社を造ったんじゃがそろそろ社の精が来る頃じゃ。
社の精?丹精込めて造った社には社の精が宿る。
お参りして願い事が叶うのは社の精のおかげなんじゃ。
ホントかい?社の精に会ったらこれを見せなさい。
食い意地の張ったヤツらじゃ。
のどから手が出るほど欲しがるはずじゃ。
この饅頭を差し上げるのかい?お礼に願い事を叶えるとか金を払うというが耳を貸してはいかん。
ひき臼と交換するのじゃ。
ひき臼?フフフッ…。
ただのひき臼ではない。
アンタが今いちばん必要とするものじゃよ。
おらが?ご両親を大事になアハハハッ…。
あっ…。
探し物かな?あっいや…。
おっそこにお持ちなのは饅頭ではござりませんか。
これはその…。
ものは相談ですがそなたの願い事を叶えてさしあげる代わりにその饅頭を譲っていただけませんかな。
いや願い事というか…。
やっぱりねお金ですか。
いくらで売っていただけるのですか?金じゃないひき臼だ。
ひき臼と交換だ。
あ痛っ!あれはうちの家宝ですぞ。
家宝!ダメかい?う〜ん致し方ない。
使い方はおわかりですね?使い方?欲しいものを唱えて右へ回せば出てくる。
左へ回せば止まる。
いたって簡単であります。
えったったそれだけのことなのかい?はい。
ひき臼を持ち帰った弟が半信半疑で回したひき臼からは唱えたものが何でも好きなだけ出てきました。
もう年越しの心配も必要なくなったので弟は町の貧しい人々を呼んでひき臼から出した食べ物や着るものを分け与えました。
弟のヤツどうして…。
年が明けると弟は家を建て替え新築の祝いに町の人々とともに兄を招きました。
兄貴が来てくれて本当に嬉しいよ。
おらたちもう面倒かけねえから。
こうしてみんなで集まると…。
まるで昔に戻ったようだね。
お前いったいどうやってこんなになった?ヘヘッ秘密さ。
フンッ。
兄はおもしろくありませんでしたが一計を案じました。
饅頭が食いてぇ。
おらに饅頭出してくれ。
おやすいご用さ。
ちょっと待ってくれ。
兄貴の所望だ。
饅頭を出してくれ。
ひき臼の不思議な力を知ってしまった兄は弟の家からその臼を盗み出してしまいました。
これさえあれば知らない土地でも大尽暮らしだ。
アハハハッ!ひき臼が消え失せたことに気づいた弟は兄が落とした饅頭を追って港まで来ました。
兄貴どうして…。
うまい饅頭だった。
口直しにしょっぱいものが欲しい。
塩を出せ。
あっもういいぞ!しまった止め方がわからん!ああっ…うわ〜っ!まずい!重みで舟が沈む!た…助けてくれ!兄貴おらの舟に乗れ!いかん臼が臼が沈んでしまう!あきらめるんじゃ!臼などほっとけ!命あってこそじゃ!それから兄弟は仲よく助け合って暮らすようになりました。
海の底ではひき臼が今でも回り続け海の水が塩辛いのはそのせいだということです。
昔むかしある宿場町での出来事。
お泊まりでございますか。
どうぞこちらへ。
泊まれるよ。
よし泊まってやろう。
おとっつぁんお客。
これはこれは。
ようこそいらっしゃいました。
しばらく逗留するぞ。
内金に100両でも置いておこうか。
ひゃ…100両などめっそうもございません!そうかではやめておこう。
あがるぞ。
朝飯はいらん昼は外で食う。
晩飯と酒だけは忘れるなよ。
へいかしこまりました。
さてそれからというものこの男酒を飲んではぐうたら寝ているばかり。
ん?う〜ん。
なんかあったら言いな。
客にその口の利き方はなんだ!何か不満でもあるのか!?こんな貧乏宿じゃ婿もとれない。
ずっとここで働くのかと思うと…。
ったくぞんざいな娘だ。
はぁ…もう7日だよ?うん。
今までの勘定取っておいたほうがいいんじゃないの?わかってるよ。
失礼します。
なんだ?そのそろそろ内金を入れていただかないと…。
金か。
金ならない!そそんなあなた!?代わりに絵を描いてやろう。
墨をすれ!え?さっさと墨をすれ!ははい!よし!どうだ?なんです?お前の眉の下にピカッと光っているものは何だ?眉の下…目です。
ならば銀紙でも貼っておけ!雀が5羽描いてある。
1羽1両だ。
だがこれは形に置いてゆくだけだ。
金を払いに来るまでは売ってはならぬ。
は?世話になったな。
え?ああの…。
お客さ〜ん!はぁ…。
お前がいけねんだ!ろくでもねえヤツ引っ張り込みやがって。
フンッ!
(雀の鳴き声)あ〜っ!絵の中の雀が抜け出るこれがたちまち大評判となり大勢の客が集まるようになった。
儲かった儲かったヘヘヘッ…。
お前に着物でも買ってやろうか?あんな雀じきに死んじまうよ。
こらっなんてことを言う!う〜む…。
お客様いかがでございます?これを描いたのは25〜26の小太りの男であろう?へへい。
どうしてそれを?この雀はな死ぬぞ。
え〜!?止まり木がない。
やがて疲れて落ちる。
えっええ〜!?描き足してやろう。
墨をすれ。
へへい。
よし。
これはなんです?お前の眉の下に光っているものは何だ?はぁ目です。
ならば銀紙でも貼っておけ!これはカゴだ。
カゴ?あ〜っ!絵はますます評判になり2,000両で買おうという人まで現れました。
けれども主人は律儀に男が帰ってくるまで決して売ろうとはしなかった。
やがて…。
来たぞ。
あっあのときの!どうぞお二階へ。
あっ!不孝の段お許しください。
え?どういうことです?この絵を描いたのは俺の親父殿だ!それじゃあ親子2代の名人…。
親父殿あほうな雀に立派なカゴはもったいのうございます。
(泣き声)いつぞやの宿代だ。
ありがとうございます。
絵はお前にやる。
え!?世話になった。
おっお気をつけて。
行っちまうのかい?出直すことにした。
娘…。
親は止まり木カゴは家。
おとっつぁんを大事にしろよ。
は?はぁ…フッ。
お泊まりでございますか?それからというもの絵から抜け出る雀と娘の愛嬌で宿はたいそう繁盛したという。
2015/01/11(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「竜宮の若姫」
「塩ふき臼」
「抜け雀」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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