NHK短歌 題「こちらからは連絡しない人」 2015.01.11


ご機嫌いかがでしょうか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第二週の選者斉藤斎藤さんです。
今日もよろしくお願い致します。
またまた変わった印象の歌ですね。
最後は「足もとに床」のこの「床」という言葉が何で出てきたのかっていうお話があとのお話につながってきます。
またまた謎めいた…楽しみですね。
どうぞよろしくお願い致します。
さて今日お迎えしたゲストをご紹介致します。
俳人の佐藤文香さんでございます。
ようこそお越し下さいました。
どうもこんにちは。
佐藤さんは2009年に第一句集「海藻標本」で宗左近俳句大賞を受賞されましたがつい先頃待望の第二句集が発表されました。
こちらでございます。
「君に目があり見開かれ」と題された句集ですが第一句集から少し間が空きましたかね。
時間かかったんですよ。
ちょっとね。
黄色くて軽くて薄い本ができましたので皆さんお手に取って頂ければと思います。
なかなか興味深い句がたくさんありますよね。
表紙の色と同じでダ〜ンとインパクトが飛び込んでくるような強い句が多いですね。
佐藤さんは短歌にも大変親しまれていらっしゃってご自身でもお詠みになるしどういうイメージをお持ちなんですか。
同世代の若い人が短歌をたくさん作ってるんですよね。
すごい面白いなと思ってたまに歌会にも参加させて頂いたりしております。
俳句も短歌もお作りになる佐藤さん短歌のイメージを短い言葉にいつもゲストにはして頂いておりますがどんな言葉になりましょうか?いかがでしょうか?タオルとハンカチですね。
この差をどういうふうに佐藤さんがご説明頂きますか後ほどよろしくお願い致します。
では今週の入選歌のご紹介ですがなんとテーマが面白かったんですね。
「こちらからは連絡しない人」。
このテーマでどんな歌が集まりましたでしょうか斉藤斎藤選入選九首です。
一首目。
まず好きな時にやめられるってそんなものを勧めてくるなよっていうのが内容で一つありますししかも「おやめできます」って変な敬語ですかね。
やめてほしい敬語ですね。
この内容と言い方の違和感それが「明るく言った」っていう「明るく」で際立ってますよね。
面白い歌です。
では次二首目にまいりましょう。
佐藤さんどう読まれました?最近こういうの多いんですよ私の周り。
年齢もあってですね。
でも「さようなら」って言っといて最後「幸せになれ」って付け加える感じが私もちょっとそういう気持ちだなと思っていいなと思いました。
同感って事ですか?そうですね。
年賀状で近況を知る事って多いですよね。
結婚であったりご出産であったり。
相手との微妙な距離感みたいないろいろ想像できて面白い歌ですよね。
さあでは次にまいりましょう。
三首目。
基本的にずっと独りでいるのが楽しいんだけれどもそれだとちょっと寂しいんで絵葉書をポツリポツリとやり取りするぐらいの距離感。
その絵葉書をくれる相手とこの作者の方の2人の距離感みたいなものがちょうどいい感じだったんでしょうね。
「先にくれた」というところに温かみがあってすてきな下の句だと思いました。
では次にまいりましょう。
四首目。
去年まで毎年年賀状をくれていたのに今年はその人の名前が見当たらないと。
ありますよねこういう事。
いろいろ想像しちゃいますよね。
何かよからぬ事があったんじゃないかとか。
でもこちらからそれを電話して確認するほどではないのでその疑問は疑問のままに元に戻して輪ゴムで束ねると。
「輪ゴムで括る」が非常にうまいなと思いましたね。
では次五首目です。
恐らくお母さん亡くされてだいぶたっている。
だいぶたって亡くなる前とずっと同じような距離感が生まれてきたんだと思うんですね。
出たい時出てくる夢の中でもいつもどおりの母さんで最後に「バイバイ」というこの収め方も非常に巧みだなと思いました。
「冗談ばっかり言って」というところまでは夢でそこから覚めて夢の外に出てからお母さんにバイバイと言ってお母さんもバイバイって言ってくれるようなそういう雰囲気が最後にバイバイいうのがいいなと思いましたね。
この「バイバイ」目覚めてから言ってる感じがしますよね。
さあでは次にまいりましょう。
今度は六首目です。
これは佐藤さんどう読まれましたか?面白かったんですよ一読。
だって「俺俺」ってきたらオレオレ詐欺かってまず思うじゃないですか。
でも「ドラ息子」って言ってるから本当の息子かなってちょっと思ってでもこの人多分本物の息子であっても偽物の息子であっても顔さえ見せたら家ごとあげちゃうような人なんじゃないかとそういう勢いがいいなと思いました。
「家ごと遣る」にはびっくりしましたね。
最後までひょっとすると実際これは息子さんの事だと思いますけどね1割2割ぐらいは実はオレオレ詐欺なんじゃないかって疑惑が残ってる感じがいいんですよね。
はいでは七首目にまいります。
1,500人が絶妙な感じがしますね。
連絡をどちらかがね私からしても向こうから来てもおかしくはない。
おかしくはないけどまあしないっていう人が多分1,500人ぐらい皆さんいるような気がするんですよね。
「こちらからは連絡しない人」ってお題でこの歌送って頂いて一本取られましたって感じですね。
「どちらからも連絡をしない人」ときましたね。
なるほど。
では次にまいります。
八首目です。
これも面白いですね。
「断りつづけて四十五年」という謎の老舗感がまず面白いのと「爺婆と話す気はなし」って最初の頃みんな爺婆だったわけはないんで同窓会四十五年断る理由としてはおかしいんですよね。
最近はお年を召したかもしれませんけどもね。
上の句と下の句の微妙につじつまが合ってない感じが妙にリアルというか面白かったですね。
さあそれではおしまい九首目を鑑賞致しましょう。
佐藤さんどう読まれましたか?これは片思いの彼から連絡が来たのかなというちょっとドキドキして読んだんですけど真ん中三句目の「冬の日に」というところが連絡が来たのが冬の日なのか飲もうじゃないかって誘われたその日が冬の日なのかっていうのがどっちにも係ってる。
どっちも冬の日なんでしょうけどね。
その構造がすごくいいなと思いました。
どうですか?斉藤さん。
それがうまくて連絡が来たのが冬の日だったら何かちょっと暖かい感じがするじゃないですか。
昼間日だまりで電話を受けてるような感じがする。
冬の日に連絡が来て驚いたって感じだと暖かい感じがすると。
逆に下にくっつけて「冬の日に飲もうじゃないか」だと何か寒そうでしょ?寒い夜って感じでしょ?冬の日が暖かいような寒いようなその微妙なところが非常にうまいですね。
これは絶妙な位置にあると思います。
以上入選九首でした。
さあそれではこの中から斉藤斎藤さんの選んだ特選三首の発表でございます。
まずは三席です。
吉岡英太さんの歌です。
では続いて二席です。
大野美波さんの歌です。
ではいよいよ一席の発表です。
中村秀夫さんの歌です。
「こちらからは連絡しない人」というお題で「出たいとき出てくる」というこの入り方がお題の返し方としてもすばらしいですね。
先ほど佐藤さんがおっしゃったように何げない日常の場面のようでいて最後の「バイバイ」が夢の外に出る感じがとてもうまいなと思いました。
いい歌ですね。
今日ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品はこちら「NHK短歌」のテキストにも掲載されます。
是非テキストの方もご覧下さい。
さあそれでは「うた人のことば」です。
大学紛争のさなかで学生部の団交係そういう役をさせられていてでも僕たちが戦後もう少し真剣に考えておかなければならなかった事を今この学生たちが苦しんでいるんだっていう思いがあったもんですから真剣に話してやっと終電車に間に合ってうちへ帰ろうとする。
そうするとつり革に下がっている人も腰掛けている人もガクッと頭垂れて沈んでいるわけですね。
地方の村に古くから伝わっている盆踊りっていうのは実に深い歌とそして踊りが一体になってて「またひとり顔なき男あらはれて」というのは頬被りをして女の人たちが踊りの輪にそっと加わってだんだん輪が大きくなっていくんですけど一人一人自分の戦死した亭主だとか子供だとかあるいはまだ終戦になって帰ってこない男たちの魂を背中にしょって踊っているんですね。
続いて「入選への道」のコーナーです。
たくさん頂戴するご投稿歌の中から斉藤斎藤さんが一首取り上げまして斉藤さんらしい改作を試みられます。
皆さんもどのように歌が変貌するか参考にして頂きたいと思います。
では今日の歌は?はいこちらの歌です。
これ気持ちの籠もったいい歌だと思いますね。
一つだけ気になるのは恐らく電話するまいと思っているよりも夫の余命を言ってくれたのは前の出来事だと思うんで多分「告げた友」になると思います。
この歌はこのままでもとてもいい歌だと思うんですがちょっと説明のために極端な改作例を出してみますね。
こんな感じです。
これ友達を泣かせるためのの「ための」にちょっと泣かせてやろうみたいな悪意みたいなものが若干混じっているじゃないですか。
恐らく作者の方こういうお気持ちではなかったと思うんですが極端な話をすると恐らく友達との関係って8割ぐらい善意であっても2割ぐらい悪意とか好奇心とかあるいは面倒な事になるから電話したくないなという面倒くさがる気持ちだとかネガティブな気持ちがちょっと混ざる事ってあると思うんですね。
ただ善意が主で悪意がちょっと混じってるぐらいの気持ちってあると思うんです。
そのように自分の気持ちを見つめて頂いて100%善意よりもちょっと混ざっている邪な気持ちみたいなものにも目を向けて頂きながらこの元歌のような本当に友達を100%思いやる歌と改作のような悪意の強い歌の間に何か自分の本当の気持ちの配分みたいなもののぴったりな表現が恐らくあるんじゃないかと思いますので作者の方この歌はこの歌でいいと思うんですが一般論として自分の気持ちのバランスブレンドみたいなものを合わせて頂くという事を気をつけて頂ければと思います。
一つの参考にして頂ければと。
どうぞ皆さん参考になさって下さい。
さあ投稿のご案内を致しましょう。
私の担当最後なのでちょっと大きめのお題でガツンと言って頂ければと思いますね。
では選者のお話です。
斉藤斎藤さんの「初心者になるための短歌入門」今日のお話は「迷ったら事実」です。
今回は事実とフィクションの関係についてご説明します。
まずはこちらをご覧頂きたいんですが今挙げて頂いた塚本邦雄の歌っていうのは塚本邦雄って現実にはありえない幻想的な光景を描く前衛短歌の巨匠なんですね。
「すこしづつ液化してゆくピアノ」ピアノが液化してゆくってありえない光景を歌ってます。
逆に奥村晃作さんの歌ですね。
ドライバーがみんな前を向いてるって当たり前の事ですよね。
「ただごと歌」というんですけど事実を見たまんま歌うっていう奥村さんの作風。
正反対に見られがちなんですが実は同じ事をやってるんじゃないかっていうお話です。
何でかっていうとこの塚本さんの歌をもし奥村さんであればこう歌ったと思うんです。
「液化してゆくピアノ」じゃなくて「ピアノは固体」だって歌ったと思うんですね。
逆に奥村さんの歌を塚本さんなら…。
前を向くじゃなくて後ろ向きっていうふうに歌ったんじゃないかと。
つまりどういう事かというとピアノは液体であったり固体であったりという普通ピアノは固体か液体かなんて考えないですよね。
同様に自動車運転する人が前向きとか横向きとか考えない。
塚本さんも奥村さんもピアノや自動車のドライバーに普通は当てないような物差しを当てているというレベルでは同じ事をやっている。
ただそこにおいてその物差しの中で事実と違う液体を選ぶか事実と同じ前向きを選ぶかの違いであるという事です。
つまり事実かフィクションかという事よりも普通は当てないような物差し当てないような角度でものを見るっていう事を考えて頂けるとより歌が深くなるかなというお話でした。
ありがとうございました。
選者のお話でございました。
どうぞ皆さん参考になさって下さい。
ゲストにお迎えしている俳人の佐藤文香さんにもいろいろとお話を伺いたいのですがまずは入り口の短歌のイメージはこんな短い言葉で表現できますという事ですがさて…もう一度。
この意味合いをご説明下さい。
基本的にタオルの方がハンカチより大きいので短歌は31音俳句は17音というところで違いがあるんですがサイズだけじゃなくてタオルとハンカチは染みこむ水の量も違うかなと思うんですね。
染みこむ水っていうのが感情なんじゃないかなと思いましていろんなのがあると思うんですけどハンカチはあんまり水を染みこませないですよね。
トイレ行ったあと手を洗ったのを拭くぐらいなんですけどタオルはやっぱりバスタオルで体全体を拭いたりできると。
そういう違いがあるのではないかと。
自分としてはサイズはハンカチぐらいで染みこむ量はタオルみたいな競泳選手がよく使うセームタオルというものがあるんですがそういった俳句が書けないものだろうかと思って現在頑張っています。
セームタオルは小さくてでもすごく水を吸うんですよね。
絞ったら全部水出ちゃうんですよね。
そういう俳句を目指してらっしゃると。
はい。
先ほどの句集「君に目があり見開かれ」を読ませて頂いて恋愛句集というぐらい感情が籠もってる感じがするんですね。
私の好きな句一句挙げさせて頂くと…。
私が君宛に出した手紙はすべて君にあるよっていうそれはそうだろうという事なんですけれども私が君にすごい強い太い矢印が出てるような気がするんですよね。
「君宛の手紙はすべて君に」って字余りもあって水分をすごい吸ってる感じがしますね。
俳句そこまで不勉強で読ませて頂いてないんですけどこんな水分の含有量が多い俳句はあんまりないような気がして強いなと思いましたね。
これは普通のハンカチではないですね。
私さっきの入選歌の中で一つ気になるものがありまして二首目なんですけれども…。
これ例えば俳句だったら「年賀状にて結婚を知らせくる」で終われるんですよね。
それだとそういう人もいるよな…ぐらいでいいんですけど「さようなら幸せになれ」っていうとこまで言っちゃうのが短歌っぽい水いっぱい吸うなっていう気がしてですねただこれ2とおりの読みがあるかなと思って元恋人の女性が俺に対してくれる年賀状の話なのかあるいは同性の私だったら女性なので女の子が「あああの子も結婚しちゃったか〜遊べなくなるな」っていうのなのか普通に読んだら元恋人の方なのかなって思ったりするんですが短歌の人はどう読まれます?短歌の人…私はね元カレ元カノ考えなかったですね。
完全に同性決めうっちゃってそれはちょっと特殊すぎるのかもしれないですけどつまり何でかなって思うと異性…昔つきあっていた人から年賀状で結婚って言われるとすごいドラマチックすぎるというかすごい水吸いすぎかなって感じ。
ジャブジャブ。
ベタベタ。
逆に同性から例えば男同士で結婚の知らせが来て何だよっていうようなぐらいのちょっと水くさい感じもするし何かいいかなこいつは…みたいなぐらいのドラマ。
もしかして読む側としては鑑賞する側としてはじわじわというのを味わうのがいいのかもしれないんですが作り手としてはタオルより手ぬぐい辺りを目指して作った方がよかったりします?手ぬぐいね…。
あんまり手ぬぐいって水吸わないですよね。
タオルほどはね。
短歌って長い分もともと水は吸いやすいわけじゃないですかハンカチよりも。
おっしゃるように俳句でセームタオル吸う素材でちょっと短いみたいのと短歌だとやっぱり長い分手ぬぐいぐらいのねあんまり吸わない気味でも吸っちゃうからねっていうそのぐらいでいいのかもしれないですね。
勉強になりました。
面白かったです。
両方手がけられるわけですからその辺の使い分けのスイッチみたいなのがスッスッといくんでしょうか。
自分の好きな水分量みたいなのがあるかもしれないですね。
短歌でも俳句でも同じぐらい水分を入れたかったりあるいは少なくしてみたりみたいな…。
佐藤さんは俳句の方が佐藤さん作られる短歌よりも水分量が多そうに見えたりしますもんね。
短歌ってちょっと手ぬぐいっぽいかもしれない。
本日は短歌・俳句の水分量という事で大変分かりやすいお話をして頂きました。
大変興味深いお話ありがとうございました。
俳人の佐藤文香さんをお迎えしてお送りしました。
どうもありがとうございました。
では斉藤斎藤さん次回もどうぞよろしくお願い致します。
「NHK短歌」時間でございます。
ごきげんよう。
2015/01/11(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「こちらからは連絡しない人」[字]

選者は斉藤斎藤さん。ゲストは俳人の佐藤文香さん。第二句集「君に目があり見開かれ」を出版した佐藤さん。俳句だけでなく、短歌を詠むことも好きだという。司会 濱中博久

詳細情報
番組内容
選者は斉藤斎藤さん。ゲストは俳人の佐藤文香さん。第二句集「君に目があり見開かれ」を出版した佐藤さん。俳句だけでなく、短歌を詠むことも好きだという。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】佐藤文香,斉藤斎藤,【司会】濱中博久

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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