子どもの睡眠を専門に診る病院です。
朝起きられず、不登校になってしまった子どもたちが全国から集まってきます。
昨年度の小中学生の不登校は12万人。
前の年より7000人増えています。
原因として今、注目されているのが睡眠障害です。
真面目に勉強や部活に打ち込む子どもが突然朝、起きられなくなるといいます。
睡眠障害が悪化すると脳の発達に影響を及ぼすだけでなく糖尿病など将来にわたる病気のリスクも高まることが分かってきました。
こうした中学校や地域ぐるみで睡眠への意識を高め不登校をなくそうという取り組みも始まっています。
子どもの睡眠を守るにはどうしたらよいのか。
睡眠障害の実態とその解決策を考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
毎晩、子どもを早く寝かしつけるのが一苦労というご家庭。
あるいは宿題や部活で早く寝たくても寝られない子どもたち。
寝る子は育つと昔からいわれてきたように睡眠はとりわけ、子どもの脳の発達にとって重要です。
国際的な基準によりますと小学生に必要とされる睡眠時間は最低10時間。
中学生、高校生は8時間30分ですが日本では実際の睡眠時間はご覧のように小学校、中学校の子どもたちで1時間以上高校生に至っては2時間近く短くなっています。
たかが1、2時間と思われるかもしれませんが睡眠不足で心身に変調を来たし学校にも通えなくなる子どもたちが少なくありません。
不登校の小中学生は全国に12万人。
去年発表された文部科学省の実態調査では不登校になった最初のきっかけを調べています。
ご覧のように3人に1人が睡眠など生活のリズムの乱れを挙げています。
朝起きることができないことが不登校のきっかけにもなっているのですが親たちを戸惑わせるのが勉強や部活、塾など何事にも一生懸命に取り組んでいた児童がある日、突然起きられなくなるという現実です。
子どもたちを突然襲う睡眠障害。
睡眠のリズムの乱れを示す兆候の一つが最も頭がさえているはずの午前中の眠気です。
全国の小中高の学生を対象にした調査では児童・生徒の実に6割が、午前中眠くてしかたがないことがあると答えていまして睡眠の問題で不登校になる生徒が今後、増える危険性があることが分かりました。
睡眠障害は子どもの体に何をもたらすのか。
初めに、睡眠障害に苦しむ子どもの実態からご覧ください。
睡眠障害に苦しむ中学1年生のアイさん。
この日も9時間近く寝ていますが全く起きることができません。
母親が10分置きに起こそうとしますがアイさんは体に力が入らず声を出すことさえできないといいます。
アイさんは幼いころから活発な女の子でした。
小学生のときはバスケットボールチームのキャプテンを務め学校に行くことが何よりの楽しみでした。
ところが半年前めまいや胃の痛みを感じるようになり、ある日突然朝起きられなくなりました。
結局、この日は9時に起き2時間目の途中から登校。
たびたび遅刻するため周囲から冷たい目で見られることもあるといいます。
なぜ、朝起きられないのか。
いくつもの病院を回った末たどりついたのが子どもの睡眠を専門とする病院です。
どうぞ。
こんにちは、お願いします。
この日、診察に当たった医師はアイさんがこれまでどのように睡眠をとってきたのか詳しく聞き取りました。
高学年?
アイさんは小学校高学年のときは夜11時に寝て、朝7時過ぎに起きていました。
中学に入ると塾通いが始まり寝るのは12時に。
一方、起床は部活の朝練のため6時に早まりました。
小学生のころから、慢性的に睡眠が不足がちだったアイさん。
中学に入り、さらに1日2時間睡眠時間を削ってしまったことが起きられなくなった原因だと伝えられました。
本来、夜になると脳の中で、眠りを促すホルモンが分泌して眠くなり朝になると覚醒ホルモンが出て目覚めます。
しかしアイさんの場合睡眠不足がきっかけで分泌されるリズムが乱れ夜眠れなくなり朝起きられなくなっていたのです。
概日リズム睡眠障害と診断されました。
睡眠に悩みを抱えこの病院に駆け込む子どもたちの数は年々増加。
今では、年間延べ3700人に上ります。
その多くは不登校を経験しています。
今回、病院が入院患者100人を対象に睡眠障害になった背景を調べたところ多くが部活動や塾が要因となっていました。
年々部活動や塾が深夜・早朝にまで及び真面目に打ち込む子どもほど睡眠障害に陥る環境が加速していると医師は指摘しています。
この病院では2か月の入院により正しい睡眠リズムを取り戻す治療を行います。
その一つ、朝、強い光を浴びる光治療。
目覚めのホルモンの分泌を促します。
さらに、規則正しい運動や食事で一日の生活リズムを取り戻していきます。
不登校になった仲間どうし語り合うことも大切な治療の一つ。
こうした入院生活により症状が改善し再び学校に通えるようになります。
しかし退院後再び睡眠障害に陥る子どもも少なくありません。
入退院を繰り返してきたタロウさんです。
治療で一時的に症状が改善してもしばらくすると再び朝起きられなくなるといいます。
睡眠障害になったことで自律神経のリズムまで乱れてしまい眠っても、脳や体の疲労が取れなくなっていたのです。
最新の研究では睡眠リズムの乱れが深刻な病気につながる可能性も分かってきました。
この病院で、睡眠障害の子どもの血糖値の変化を調べたところ4人に1人が糖尿病のリスクが高いという結果が出たのです。
今夜は、長い間、睡眠のメカニズムについての研究を行ってこられました、国立精神神経医療研究センターの客員研究員、白川修一郎さんをお迎えしています。
活発だった女の子が中学校に入って、突然、起きたいのに体が動かなくなった、このアイさんのケース、一体、何が起きたんですか?
実はですね、睡眠は脳の疲労の回復の役割を持っています。
この子は、睡眠不足がずっと続いて、睡眠障害になってしまって、脳の一種の過労状態になってしまったんですね。
だから結局、起きたくても起きられない。
一方でまた同時に、やはり睡眠中には、成長ホルモンなどの分泌があります。
その分泌がうまくいっていないと、あと、自律神経の乱れもかなり生じてきています。
だから自律神経失調がたぶん起こっています。
自律神経の失調が起こると血圧がちゃんと睡眠時に下がらないとか、体温がしっかり下がらないとか、そういうことがあって、やっぱり睡眠が長い時間とっても、疲労の回復っていう働きをちゃんとしない。
それからもう一つはですね、とりわけ子どもにとっては、子どもの睡眠というのは、非常に疲労の回復とか、今言った自律系の再調節をする非常に大切なんですね。
大人にとっても睡眠大事ですけれども、発達途上にある子どもたちにとっての睡眠の大事さ、脳がしっかりと発達するうえで、睡眠はどのような役割があるんでしょうか。
睡眠は、実はもともと一番最初に影響しやすいのが前頭葉なんですね。
睡眠不足があると。
前頭葉とは、例えば、ものを判断したり、それから例えば意欲に関係してたり、あるいは記憶に関係していたり、それから記憶を引き出す働きがあったり、そういうものがあります。
それから記憶に関係しては、特に海馬にも、この発達の途上でやはり、この睡眠がいいか悪いか、足りるかどうかで、その海馬の発達にも関係しているという報告もあります。
こういうことがありますので、やはり脳の例えば前頭葉、海馬みたいな記憶に関係しているものに、すごくやはり睡眠は影響します。
今のリポートで、糖尿病を引き起こすと。
糖尿病もありますね。
これは例えばインシュリンに対する抵抗性が上がるという、やはり報告がありますので、糖尿病になるリスクも高くなってきます。
何をもっていい睡眠なのか、子どもにとって。
その量をしっかり確保することなんですか?
実はそれだけではないんですね。
睡眠というのは、量と質と、そして質はどちらかというとリズム、睡眠のリズムにすごく影響されます。
それから量とリズムがあります。
だから逆にいえば、朝登校の時刻から逆算して、その子どもにとって、必要な睡眠時間をまず計算し、そして続きまして、寝る時間って決まりますよね。
寝る時間と起きる時間がある程度、毎日規則正しくちゃんとしていれば、本当は睡眠のリズムは、規則正しいものになります。
そうしますと、睡眠の質もよくなります。
例えば、自分の子どもが睡眠が不足しているかどうかと測る目印っていうのはありますか?
実は子どもっていうのは、夜しっかり寝ていれば、昼間、全く眠くならないですね。
寝ようと思っても、なかなか寝れないです。
それが一つの目安ですよね。
もう一つは、登校日と、それから休日の起床時刻の差が2時間以上あるようだと、やはり登校日、睡眠が不足してますね。
リズムが逆にかなり乱れてきているという一つの証拠です。
だからそのへんは、保護者の方は気をつけると、簡単に分かると思います。
今、受験シーズンですけれども、やっぱり睡眠を削りながら、一生懸命勉強してる方々、多いでしょうね。
そうですね。
実際、睡眠を削ってしまいますと、睡眠自身は知識の固定、学習に密接に関係しています。
そういう意味では、しっかり眠ることが、本当は受験期の知識の引き出しに関わってきますので、そういう意味では、睡眠削ってもっていうのは、ちょっとまたまずい面はあるんですね。
学んだことが、夜、定着するわけですね、寝てる間に?
睡眠はまさにそういう働きを持っています。
睡眠をとってたほうが、成績がいいことは分かってますので、それは大事です。
削るのは問題になります。
さあ、この睡眠障害を防ぎ、そして不登校に陥らないようにするには、どうすればいいのか、いち早く学校、そして地域ぐるみでの取り組みが行われています、その現場を取材しました。
福井県西部の美浜町です。
この地域ではすべての小中学校で睡眠の大切さを教える教育眠育に取り組んでいます。
子どもたちが記入しているのは自分の睡眠表。
夜寝た時間と朝起きた時間を記録し睡眠リズムに乱れがないか確認します。
この取り組みを始めたのは小学校の元校長、前田勉さんです。
前田さんは学校と連携し地域の小中学生1000人分の睡眠表をチェックしています。
睡眠リズムが乱れがちな子どもをいち早く見つけて不登校を未然に防ぐのがねらいです。
子ども一人一人に合わせて睡眠リズムを守るためのアドバイスを書いて渡しています。
前田さんが眠育を始めたきっかけは、自分の教え子たちが中学に進学したあと急に不登校になるケースが相次いだことでした。
不登校に詳しい医師に相談すると睡眠との関係を指摘されました。
実際に調査したところその結果に驚いたといいます。
子どもの睡眠を守るにはどうしたらいいのか。
前田さんが力を入れてきたのが教師や親など、大人への指導です。
子どもが記録した睡眠表で気になる兆候を見つけたときには学校に出向き個別面談を行います。
この日、面談したのは小学4年の子どもを持つ桶野さんです。
前田さんは、桶野さんの子どもが習い事のために夜寝る時間が遅く睡眠が不足していると伝えました。
その上で睡眠リズムが乱れると体にどんな影響を与えるか具体的に伝え理解を求めていきます。
睡眠の大切さを再認識した桶野さん。
寝るまでの過ごし方を見直すことにしました。
桶野さんの長女想乃さんです。
週3回、水泳教室に通っているため帰宅時間は9時過ぎになります。
ただいま!
以前は、水泳のあとに宿題をしていたため、10時過ぎまで起きていた想乃さん。
今は水泳の前に宿題を済ませ帰宅後は翌日の準備だけですぐ寝るようにしました。
桶野さんは声をかけながら娘の想乃さんがリズムをつかめるように促していきます。
今は30分以上早く寝られるようになりました。
子どもの睡眠を守る取り組みは地域にも広がり始めています。
美浜町には、小学生を対象としたスポーツクラブが20以上あります。
親からの要望で教育委員会が動きクラブの終わる時間を早める方針を打ち出したのです。
夜9時まで練習していたこのスポーツクラブも今は8時半に切り上げるようになりました。
おはようございます。
子どもの睡眠を守るために生活環境そのものを変える模索が続いています。
以前は今の自治体ですけど、中学校に上がったあとに8人ぐらい、子どもたちが不登校になっていたそうですけど、この眠育によって、小学校卒業後、不登校になる生徒の数が、5年間でゼロになったという成果が出ているんですよね。
とにかくやっぱり、知識が大切なんですね、これ。
例えば、VTRにもありましたが、親に伝えて納得してもらってますよね。
親はまた子どもと、やっぱり一緒に話しながら、子どもも納得してる。
もう一つ重要なのは、子どものやはり睡眠を可視化してるっていうのが、これ、重要なんですよね。
本当は親も一緒に可視化してほしいんですけど。
やっぱりそれが子どもにうまく親が伝えられやすい状態を作ってくれてるんだと思います。
よかれと思って、塾やクラブ活動が夜にたぶん、行われてますけれども、これ実は弊害だったんですね。
弊害なんですね。
これが、逆に睡眠を削ることによって、むしろ、バーンアウトにつながるようなおそれもありますので、頑張ってる子どもほど、危険なんですね。
だからこれは親もそうですし、学校の施設もそうだったんですけど、例えば塾の先生とか、あるいはクラブ活動の指導者とか、こういう人みんな、社会でやはり睡眠の知識を共有することが大切なんだろうと思うんです。
ここはやっぱりそれを共有しながらやっているのは、非常に感銘を受けますよね。
この眠育の取り組み、どれぐらい広がってますか?
まだ始まったばっかりなんですね。
例えば、富山県なんかは、少し全県的に始めているんですね。
これ、学校の先生を例えば研修するときに睡眠のプログラムを入れるとか、そういうものをいってます。
それから長野なんかでも学校によっては例えば、朝の朝練を例えばある程度、セーブするとか、そういうこともやっています。
場合によっては、休日にちゃんとお休みをとるとかやってます。
国もやはり眠育を始めようとしているんですね。
文部科学省なんかも、早寝早起き朝ごはんとか、あるいは中高生のやっぱり2万人の調査だとか、そういうものをやっていたり、厚生労働省もやっぱり睡眠の健康推進機構を立ち上げて、眠りの日を、睡眠の日と設定したりして、やっぱりやっています。
そういう意味で少しやっと始まったばかりだと思います。
ちょっとこちらのグラフ、ご覧いただきたいんですけれども、先進国の平均睡眠時間、その中で日本は韓国に次いで短いと。
ですから、子どもたちの睡眠障害は、もしかしたら大人の生活のパターン、これに引きずられて起きてるんではないかと思われるんですけど。
実はたぶん、恐らくそうですね。
やっぱり親の背中を見て、子どもは育ちますので、大人の感覚でやはり子どもの睡眠を見ていく可能性が高いんですね。
大人の感覚で?
例えば、私はこんなふうに寝ているから、このくらいで十分だとか、知識がないのにやはりそういうことが起こっています。
大人が作った子どもの睡眠障害である可能性も結構高いんですね。
やっぱり、子どもの睡眠は、大人の睡眠とちょっと別なんだと、子どもっていうのは、睡眠をちゃんととっていないと、本当は将来を担うパワーをちゃんと持てないんだということが、やはり今回の睡眠障害なんかで出てきています。
やはりこの短期社会、大人がまず自分の睡眠を知って、知識をちゃんと持って、そして睡眠をとることが大切です。
2015/01/09(金) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「不登校12万人のかげで〜広がる子どもの睡眠障害〜」[字][再]
不登校の3人に1人が「睡眠など生活リズムの乱れ」が原因だという。脳機能や生体リズムに影響を及ぼす子どもの睡眠障害の実態とともに、改善に向けた先進事例を伝える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】国立精神・神経医療研究センター客員研究員…白川修一郎,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】国立精神・神経医療研究センター客員研究員…白川修一郎,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:12613(0x3145)