クローズアップ現代「地方から日本を変える(2)宝を生み出す“つながり力”」 2015.01.07


新春の初売りでにぎわうショッピングモール。
飛ぶように売れていたのは新潟の中小企業が手がける高級アウトドア用品。

今、新たな人と人のつながりが、地方発のビジネスを大きく変えようとしています。
消費の低迷が続き、中小企業の苦境が続く中、独自の工夫でヒット商品を生み出す元気な中小企業があります。
都会からUターンしたアウトドアメーカー経営者。
地場産業の力を結集した製品が売れています。

全国の伝統工芸品を作る中小企業が手をつなぎ製品を販売するセレクトショップ。
仕掛けたのは老舗商店の若社長です。
各地の伝統工芸メーカーの再生を支援しながら、新たなビジネスを生み出しています。

日本再生の鍵を握る地方の可能性を2夜連続で探るシリーズ。
今夜は、つながりを力に成長する中小企業に成功のヒントを探ります。

こんばんはクローズアップ現代です。
株価の上昇や円安は、大企業の収益を後押ししていますけれども地域経済を支えている中小企業には行き渡っていません。
地方の経済、ただでさえ人口減少で縮小傾向にありますけれども地域経済を支える中小企業の苦境が続けばさらなる人口減少につながるのではないかと懸念されています。
どうすれば地方の中小企業の成長を促すことができるのか。
地方から日本を変えるシリーズ2回目のきょうは地方で元気のある中小企業の姿を通して、逆境に立ち向かうヒントを探ってまいります。
国が中小企業を対象に行っている調査では、ご覧のようにこの10年景況がよいと答えた企業の数は悪いと答えた企業の数を一度も上回っていません。
中小企業が厳しい経営環境に置かれていることをうかがわせています。
日本各地には地場産業や伝統工芸の産地があります。
それらの強みを引き出し成長させることができれば地元経済の底上げを図ることができます。
これからご覧いただきますものづくりを行っている企業はいずれも地方の中小企業とのつながりが強みを生み出したケースです。
地場産業の技術やそして足元にある伝統や歴史を掘り起こしつなぎ合わせたことで付加価値の高い競争力のある商品が生まれ成長に結び付いています。
地元の雇用だけではなく地元でビジネスをすることの誇りを生み出していますつながりを重視したビジネス。
そのビジネスの実態からご覧いただきましょう。

新潟県中部人口10万人の三条市です。
古くから金属加工が盛んで近年は外国製品とのしれつな価格競争にさらされています。
この町で5年で売り上げを倍増させた注目のアウトドアメーカーがあります。
金物問屋として創業して57年。
社員160人。
地域を代表する企業の一つに成長しました。
およそ7割の社員は県外から入社を希望して集まった人たちです。

このメーカーの社長山井太さんです。
躍進の秘密は、高度な技術で加工した付加価値の高い製品にあります。

加工の難しいチタンを使って二重構造に仕上げたボトル。

高密度の生地を使うことで耐水性を高めた高級テント。
去年の売り上げは前年から20%伸びて過去最高の54億円を記録。
韓国やアメリカなど海外にも進出しています。
大学卒業後、東京の商社で働いていた山井さんは26歳のときにUターンして実家の商店に入りました。
目にしたのは地元の金属加工メーカーが安い外国製品との価格競争に巻き込まれ苦境にあえぐ姿でした。

思いついたのは自分が好きだったアウトドア関連の製品。
年間数十日、キャンプに出かけていた山井さん。
当時のテントは、雨漏りするなど多くの不満がありました。
地元の金属加工の技術を生かして高級テントを作って売り出したところ従来品の10倍もの値段にもかかわらず、大ヒット。
これが高級ブランドの出発点となりました。
山井さんは次々と地元企業に声をかけ、技術力を売りにした製品の開発に乗り出します。
金属をたたいて強くする鍛造技術を使った驚異的な強度を誇る金具です。
従来品の3倍の値段にもかかわらず、性能の高さが受けて30万本のヒット商品になりました。
山井さんの仕掛けた高付加価値戦略の成功に地元企業の意識も変わり始めます。
長年、自動車部品を手がけてきたこの工場は新たな設備投資を行い山井さんたちと共同で新たな開発に取り組むようになりました。
その成果がこのダッチオーブンという鉄製の調理器具。
厚さを半分近くまで薄くし30%の軽量化を実現する画期的な技術をものにしました。

値段の張るこだわりの商品を消費者に届けるために販売は直営店を主体に行っています。

このテーブルが、結構オリジナルのものでして。

社員が商品の機能やブランドの哲学を徹底的に説明します。

地場産業とのつながりを武器に、世界を目指す山井さん。
高付加価値のブランドが地方の新たな可能性を開こうとしています。

一方、全国各地の小さな企業が手を組むことで新たなビジネスにつなげようという挑戦も始まっています。
東京駅の目の前の商業ビル。
ここに、各地の伝統工芸品が集まったセレクトショップがオープンしました。
豊かな生活スタイルを提案していこうという仲間が集まって新潟の包丁、兵庫のかばんなど現代風にアレンジされた工芸品の数々を並べています。

セレクトショップを経営するのは、奈良で300年続く老舗商店の社長、中川淳さん、40歳です。
もともとは奈良さらしと呼ばれる伝統的な麻織物を扱う商店でした。
13年前Uターンした中川さんは赤字が続いていた自社ブランドを立て直すことに成功。
全国展開を始めました。

おはようございます。

この評判を聞きつけた各地の中小企業から再建を手伝ってほしいと依頼されるようになりました。
中川さんが最初に再建を手伝ったのは、苦境に陥っていた長崎県の焼き物を扱う企業でした。

中川さんはまず、すべての商品について詳細なデータの分析を行い売れ行きのよくない商品を徹底的に洗い出すよう求めました。
商品の数を絞ったうえで新たな自社ブランドの開発に乗り出します。
ブランドの立ち上げを任されたのは、息子の匡平さん。

2人は自分たちの強みと弱みはなんなのか、徹底的に議論することから始めました。
浮かび上がったのは地元の隠れた歴史。
江戸時代から大衆食器を作り続けてきた長い伝統があったのです。

中川さんは、自分自身の試行錯誤の経験を踏まえて匡平さんに何をやりたいのか繰り返し尋ねました。

どうすれば売れるのかばかりを考えていた匡平さんは、発想を変えます。
自分が欲しいものを突き詰めた結果、古いアメリカの食堂で使われていたような武骨で角張ったデザインにたどりつきます。
こうして、ハサミという歴史ある産地をブランド名に掲げたアメリカンテイストの日用食器が誕生しました。
中川さんの店で販売したところユニークなデザインとブランドのコンセプトが大きな反響を呼びました。

ほう、すごい、すごい。

社員僅か6名の小さな会社では、匡平さんの打ち出した新たな方向性を浸透させるのに時間はかかりませんでした。
中川さんの支援を受けてから5年。
会社の売り上げは3倍に増えました。

中川さんの助けを借りて下請けからの脱却を目指す企業もあります。
この繊維メーカーでは大手アウトドアブランドから注文を受け、ウエアに使われる生地を製造しています。
しかし、リーマンショック以降注文は激減。
経営は苦しくなっていました。

この会社では極めて軽く薄い生地を作る技術を持っていました。
中川さんはこの生地で商品を作り注目を集めることができれば生地そのものを世界的なブランドにできると考えました。
こうして開発されたのが軽くて丈夫なトラベルグッズ。
中川さんは、この商品を自社の店舗や取り引きのある小売り業者につないで販売を支援していく予定です。
こんにちは。

厳しい経営が続く地方の中小企業をよみがえらせてきた中川さん。
中小企業どうしがノウハウを共有しお互いの強みを出し合うことができれば地方の企業にも十分チャンスはあると確信しています。

今夜のゲストは、数々の企業の再生に取り組んでこられました、冨山和彦さんです。
日本の伝統工芸の産地や地場産業の持っているポテンシャルが、本当に高いということを、改めて気付かされますね。
そうですね、本当、こういう実は、潜在能力の高い中小企業って、地域にいっぱいあるんですよ。
残念ながら、生かされていないケースが多くて、ですから、これ、中小企業って、実は日本の企業のたぶん99%、中小企業なんですよね。
8割の人がここで働いているんです。
実はそこに、実は宝の山がいっぱいあって、もし、ここのこういった企業が生産性を高めて、価値どんどんつけていって、賃金も上がってくると、これはものすごく成長始動ありますよね。
ですよね。
特に地方の中小企業の割合99%っていわれてるんですけど、だけど皆さん、苦境に直面していて、なかなか、その脱皮できない、弱さってどこにあるというふうに見ていらっしゃいますか?
これ結局、実はすごいいい技術であるとか、すごいいいノウハウであるとか、あるいは観光地だったらすごくいい資源を持っているんだけれども、結局、その価値に自分自身が気付いていなかったりとか、あるいは、ビジネスの一番基本になるところのじゃあ、どこがもうかってて、どこがもうかってないのか、あるいは、どこがお客さんが評価してくれてて、高いものを払ってくれるのかっていうのが、ちゃんと把握できてなかったりするんです。
ですから、実はそういった経営のベースの弱さっていうのがすごくあって。
ああいうふうにデータをきっちり分析してないっていうことですか?
ほとんどやってないです。
ですから、実は自分自身が何者かっていうところがよそから見ると、すごい宝の山を持っていたりするんですよ。
例えていうならば、100メートルを、それこそトヨタとか、一流企業は10秒で走っているわけですよ、もうすでに。
だけど、こういう地方の、本当は12、3秒で走れるんだけれども、そういった、実は今、現状30秒ぐらいで、歩くのに近いスピードでやっている会社が少なくないんです。
だから、これをどうやって、それを15秒、12秒で走れるようにできるかってすごく課題で、ところが残念ながら、こういう昔からの会社が多いので、従来からの延長線上で取り引き先もそうですし、あるいは仕事のやり方、ビジネスモデルのやり方、かつまた閉じてるんですよね。
わりと皆さん、日本的というか、わりとこう、閉鎖的で内向き志向で、その延長線上でやっているので、従来のモデルがだんだんだんだん衰退していっちゃうとすると、それと一緒に衰退していっちゃう。
これがもったいないですね。
今の企業にありましたように、一人の核となるようなビジネスを持った人が、いろんな地元の企業と連携しながら、面的に活性化させることが可能だと、先ほどの三条市のケースでもそうですけれども、そうすると本当に、付加価値の高いものが生まれて、メイド・イン・ジャパンに、また光が当たるような感じになりますね?
だって、メイド・イン・ジャパンに対する評価って、日本人が思っている以上に高いんです。
世界でも。
かつてメイド・イン・ジャパンが一番評価されるのは、ニッチだと。
きらっと光る、狭い世界だけど、これはすごいというやつがむしろ評価、高いんですね。
だから、そういったものっていうのは、本来、中小企業のほうが有利なわけです。
ニッチっていうのは市場がちっちゃいので、大企業はあんまり関心を示さないんですよ。
かつ、今、出てましたように、中小企業なんか動きが速いですから、そうすると、そこに優秀な人材が、特に経営人材が入ってきてくれれば、これ、がらっと世界変えられますよね。
中川さんも戦いやすいって今、言ってましたね。
私もいっぱい、そういった会社と関わっていますし、私ども自身も東北地方でバス会社なんかを経営してますけれども、これはもう、圧倒的に動き速いです。
中小企業のほうが。
そして、もし連携しながら、また元気を取り戻した企業が、下請けではなくて、本当にまた、その自立した自分のブランドとして、商品を立ち上げることができたら、これまた付加価値がついて、恐らく働いている方々の。
賃金も上がってきますよね。
また消費に回るっていわゆる好循環が生まれるはずなんですね。
問題は従来の延長線上でやってますとね、ブランディングであるとか、商品開発であるとか、世界中で物を売る技術って持っていないわけです。
それが結局、優秀な人材が入ってきて、それを補っていかないと、それは実現しない。
それは一番チャレンジというか、挑戦しないといけないところでしょうね。
そうすると、鍵というのは、人ということことですか?
特にこういうリーダー、そういうネットワークの中心にくるようなリーダー人材がもっともっと地方に、例えば恐らく大都会っていうのは、ちょっと人材が偏在しちゃってて、逆に多すぎるんですよね。
だから、もっともっと優秀な人材が、地方のこういった中小企業、中堅企業に飛び込んでいくことによって、もっともっと彼らも、あるいは彼女たちも活躍できるし、そういった事例は私自身もいっぱい知ってるし、われわれ自身もバス会社で、地方のバス会社の再生を、それで、そういうものでやってますから、もっともっとそういう人が地方に飛び込んでいって、逆に地方の側も、それをどんどん受け入れて、よくいわれますよね、地方を元気にするのはよそ者、若者ということばがありますけれども、そういった人材と、もっとネットワーク、交流を作ることによって、まだまだ、地方経済いけるし、なんと言ったって、これ、8割の人がこういう中小企業、地方経済圏で働いているわけですから、ここに日本の経済成長を知るうえで、いっぱいあるんですよ。
でも、ブランディング一つとっても、非常にこう高度などうやってメイド・イン・ジャパンのブランドを価値のあるものにするかということで、非常にスキルのいるものではないかと思うんですけれども、例えば、卸には卸さないっていう選択をされてましたよね。
だから値段をちゃんと維持しようと思うと、卸に売っちゃったあとに、卸のどこに、いくらで売るかというのがコントロールできなくなるので、そういったことを直接、ダイレクトにエンドユーザーと結び付けるような、これ、経営能力が必要です。
わりと、こういうのを持ってる人っていうのは、都会にいるんですよね。
いますか?
都会のそれこそ一流メーカーとかで働いていたりするわけですけれども、むしろそういった会社って、人員減らしてますでしょう?そういう大都会で人材が死蔵されちゃう、デッドストックになっちゃうんです。
そこでこうくすぶっている人であれば、どんどんどんどん若い人が、むしろ若いうちから地方に行く、あるいは、これから社会人になる人たちが、できるだけ優秀な人はまた地方でこういった会社で働いてもらう、そういった流れを作っていくことが、すごく大事だと思います。
そうすると、中小企業をよみがえらせる、中小企業が成長できる施策というのが、今、問われてるわけですけれども、その人に焦点を当てた施策が必要だということですか?
あんまり、ものにお金を使わないで、お金を使うんだったら、人に、あるいはそういった人材の流れを起こしていく、あるいは若い人がまた地域に学び、地域で仕事をしていく。
そういった流れを作っていくことによって、当然、こうやって事業が生まれる、イノベーションが生まれる、付加価値が生まれる、そういった好循環を作れるんで、まさに人に投資をすべきでしょうね。
そしてその地方に行きたい、若者たちも増えてきたということを、きのうもお伝えしたんですけれども、やはりその地方に行って、自分を試したいっていう、挑みたいという人々が増えているという実感ありますか?
ありますよ。
われわれのやっているバス会社の場合も、そうですけど、みんな、地方のバス会社に行きたがる人、いっぱいいるので。
われわれのグループの中にも。
要は若者にとってみれば、今、そんなに都会と地方って情報格差とか、着てるものとか、差ないんですよ。
むしろ生活圏で考えると、それこそ子どもを育てるような環境でいえば、圧倒的に地方のほうが少ない賃金でも豊かな生活ができますから。
むしろ若い人のほうが発想、変わってるんじゃないでしょうか。
そうやって次々と、地方にある中小企業が本当に元気になって、そして新しい付加価値のあるものを出していくっていう、好循環が生まれるようになればいいですね。
そうですね、ぜひとも、これ、こういう番組も大事なんですけれども、そういう情報をみんなに知らしめて、そういうチャンスがいっぱいあるってことを、みんな分かってくれればかなり人の流れは、これから変わってくるんじゃないでしょうか。
そうしたら本当に地方はよくなっていきます。
2015/01/07(水) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「地方から日本を変える(2)宝を生み出す“つながり力”」[字][再]

どうすれば地方経済は再生できるのか、そのヒントを探るシリーズ。2回目は中小企業が地場産業の技術を再発見し、ネットワークをつなげて新たな価値を生み出す現場から。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】経営共創基盤CEO…冨山和彦,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】経営共創基盤CEO…冨山和彦,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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