90年以上、
長年、人口の流出に悩んできた過疎の町。
今、子どもの数が増え続けています。
なんと、町の保育園では。
逆境を乗り越えようとする取り組みが地方で始まっているのです。
(鐘の音)
(拍手)2015年、動き始めた日本経済。
円安株高で、大手企業を中心に業績が回復する一方GDPのおよそ7割を占める地方の経済にはその恩恵が行き渡っていません。
こうした中、新しい発想で地域を変革しようという動きが各地で起きています。
気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだ!
地方で始まった挑戦を2日にわたってお伝えする「クローズアップ現代」。
今夜は人口減少に歯止めをかけ町ににぎわいを取り戻す戦略に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
ローカル経済、地域経済はGDPのおよそ7割近くを占めていますけれどもそれをどう、よみがえらせるのか。
地方が抱える深刻な課題が人口減少です。
人口が減少し、地域の経済の規模が縮小することによって生活に必要なサービスが低下したり働く場が失われたりすることでさらに人口が減少する悪循環に陥ることが懸念されています。
地方の活性化、これまでも多くの政権が取り組んできた課題ですけれども現政権もこの難しい課題に地方創生をキーワードに挑もうとしています。
ことし最初の「クローズアップ現代」は2日間のシリーズで地方の活性化に向けて何を大切にしながら取り組んでいくべきかを先進的な自治体、そして地方の元気な中小企業の姿を通して考えてまいります。
1回目のきょうは人口の増加に成功した地域の取り組みです。
人口の減少によって30年後消滅する可能性のある自治体が少なくありません。
そうした中で25歳から34歳の若い社会人の移住者が増えた都と県が13あります。
大都市を抱える首都圏そして愛知県のほかに岩手県や島根県でも人口の流入が流出を上回っています。
子育てする世代が住んでみたいと思える地域にどのように作り上げたのか。
それぞれの事情に合った創意工夫が地域に求められている中でこれからご覧いただきます島根県松江市から船で3時間ほど行った所にあります小さな町では挑戦的な取り組みを行ったところ移住者が増えるという結果が出ました。
島根県松江市の沖合60キロにある島。
隠岐諸島の海士町です。
人口2300の過疎の町に今移住する人が増えています。
保育園には入園を希望する人が殺到。
定員を上回ることもありました。
移住者のための住宅の建設ラッシュも起きています。
町は100棟を超す町営住宅を新たに用意しましたがそれでも追いつきません。
この10年で移住してきた人は437人。
減り続けてきた町の人口はおととし、増加に転じました。
一体なぜ多くの人がやって来るのか。
そこには、町が全国に先駆けて整備してきた手厚い支援制度がありました。
漁師になるのが夢で2年前、千葉県から移住してきた高野誠也さん、32歳です。
岩ガキの養殖を始めた高野さんに町は、自立するまでの3年間月15万円の生活費を支給しています。
さらに町は移住者が事業を拡大できるよう独自の貸し出し制度も設けています。
その仕組みです。
町は、移住者の事業を応援したいという人を全国から募ります。
資金は1口50万円。
利息はお金の代わりに島の特産物で支払います。
資金は7年後移住者が一括返済することになっていますが返済できない場合は町が代わりに立て替え保証します。
こうした取り組みで島に人を呼び込もうとしてきた町長の山内道雄さんです。
必要な財源を生み出すためにみずからの給与を50%カット。
ほかの職員も給与のカットに同意し年間2億円を確保しました。
その結果、全国で最も給与が低くなった役場の職員。
それでも町が生き残るためには人を呼び込むための投資が欠かせないと考えたのです。
町の支援を受け事業を始めた移住者たち。
農業、水産業、ITなどの分野で14の会社が立ち上がりました。
その一つ、岩ガキなどの海産物はアメリカやドバイに販路を拡大。
売り上げは2億円を超えています。
移住者に投資する戦略によって地域経済がよみがえろうとしているのです。
町では、将来にわたって産業を育てていくために若い人材の育成にも力を入れています。
教育関連の会社を辞め島にやって来た豊田庄吾さん、41歳。
町から委託され学習塾を運営しています。
豊田さんが教えるのは高校生。
受験勉強だけでなく将来どんな仕事に就きたいか掘り下げて考える授業を行っています。
この島の産業がどんな人たちによって支えられているか現場を訪ねて調べることもあります。
こうした体験を通して地域の役に立つ仕事に就きたいと考える生徒が次々と現れています。
気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだ!
人への投資が未来を切り開く。
町の挑戦に大きな注目が集まっています。
今夜のゲストは、日本総合研究所の藻谷浩介さんです。
日本全国をほぼすべての自治体を訪ねて、そして地域活性化に向けてのアドバイスや指導を行ってらっしゃるんですけども、過疎化に苦しんでた海士町が、今では待機児童が保育所に出るほど、今、子どもたちが増えているっていうのは、この現実をどうご覧になられましたか?
20年以上、ものすごい努力をしてきた所なんですが、ついに人口が増えるところまで来たかと思うと、これ、感無量です。
引っ越して入ってくる人のほうが、出て行く人より多くなったというのは、十何年前から達成してたときのほうが多いんですが、亡くなるお年寄りより生まれる子どものほうが多い。
この日本のたぶん、全市町村でも10本の指に入る、交通不便な、気候もあまりよくない、絶対的条件不利地域で、これだけの達成ができたと。
ほとんど日本中のすべての市町村に希望を与える事例だと思います。
実際にデータでこちらご覧いただきたいんですけれども、0歳から39歳の人口が、右肩上がり。
何がこれ、鍵になったんですかね?
これですね、実は東京都でも減ってるんですよ、0歳から39歳は。
ですから、日本全体が子どもが減っていって、どこが消滅可能性自治体というんじゃなく、日本全体が消滅に向かってゆっくり進んでいる中で、この海士町のような市町村が出てくるということは、日本の希望ですね。
これは全国から移住者を非常に積極的に受け入れてきた。
その中で、なかなか大変な所ですから、たくさんの人が来ては、数か月、数年いて、よそへ出ていく人も多いんですが、特に子育てを熱心にやりたい若いご夫婦の方が多く残られてるんですね。
それだけ子育て環境、あるいは住環境などがいいんですか?何が魅力になっているんですか?
私が子どもを思い切りペーパーテストの点をよくしてっていうような人にとっては向いてないかもしれませんが、実際には自然の中で、いろんな人たちと一緒に、地域の人たちと一緒に子育てをすると。
で、たまたま勉強ができたらば、あそこの島では一生懸命今、守ってね、…が高くなってる、どうぜん高校は、いわゆる有名高校にもたくさん進学するし、出てそのまま働く人もいる。
いろんな人が一つの、一緒にお互いのよさを認め合いながら、勉強できる環境です。
このような例、なかなかないですよね。
これがやっぱり気に入って、移り住むという人も増えてますね。
それは移住する人々の考え方も変わってきたということですか?
これはね、特に震災以降ですかね、全国の方はたぶん感じていると、地方の方が、感じてる方、多いと思うんですが、若い人の考え方、20代、30代前半から下ですかね、特に20代の方の考え方が大きく変わってるんですね。
つまり、それまでだと都会に出てなんぼ、中心に集まるという意識がどうしても強かったんですが、むしろ都会育ちの人が、地方に住みたい、もっとゆとりを持って、食費も安い、家賃も安い、そして、ゆっくり家族と時間を過ごせる田舎で、手に職をつけて暮らしたいなという人が、都会のむしろ、学歴の高めの人に増えてきているんですよ。
その流れをですね、海士町は長年の努力の末に、今、ぐっとつかんだところだと思います。
しかも、入ってきて、全くやったことがない漁業に従事するときに、3年間、15万円ずつ生活費を出していると。
あれをお聞きになって、お金をそんなに使っていいのかとお感じになった方もいるかと思いますが、3年間で1人当たり540万。
いわゆる例えば、生活保護なんかに比べてぐっと安いですし、これ、職業訓練への投資ですね。
都会で、あるいはあそこにいらっしゃってる方、東京の3次産業、サービス業、出版業など、いろんなことをやってる人が多いんですが、ただパソコン使えるような人が、一から農業、漁業を教えてもらえる。
一人立ちできるようになると、パソコンを使える漁師さんになるわけですよね。
と、いろんな展開が出てくる。
これはあくまでも企業が新人に教育投資をするのと同じでして、福祉でのばらまきではないですし、逆に使い捨てで、来れるやつだけ来いというやつでもなく、ちゃんと中で人材育成をして、一定年数だけは支援しますと、そのあと頑張ってくださいと。
よく出来た企業の教育システムと似てますよね。
しかし、あまり小さな所に行くと、閉鎖性があるんではないかとか、いろいろ何かこう、自分が慣れないんではないかというような心配もありますよね。
まさにそのとおりですね。
従来ですと地方、いろいろと人間関係も閉じてますし、それから特に女性にとって、男女差別が残っているとか、そういうイメージがありますよね。
ですが、海士町なんかもそうですが、今のやはり、頑張っている一部の地方過疎地は、もうそういうことを言っていると、自分の地域はなくなってしまう、消滅してしまうよということに気がついています。
海士町も二十何年前から気が付いて、そうしないために、本腰を入れて、腰を据えて若い人を受け入れる。
もちろん地元になじんだ人間だけが、最終的には残る。
出はいり自由なんです。
来て、しばらく住んで、嫌になったら出ていっていい、東京と同じです。
ただ、地元に本当になじんだ人が残って、地域住民になっていくわけですから、当然、今までのような顔見知りだけで固めていく社会ではなくて、新しい考えを受け入れる、女性も自由に、楽しく羽ばたけるという社会づくりを一緒になってやっていく、そういうことができる、いわば、田舎2.0みたいな、そういうことになっている所が海士町、代表ですけれども、全国に何十個も出始めているんですね。
さあ、続いてご覧いただくのは、岩手県の人口3万人の取り組みです。
人口流出に悩んでいたこの町では、民間と、そして行政が連携しながら、にぎわいのある、そして身の丈に合った持続可能な施設を作りました。
岩手県紫波町。
人口3万の農業の町です。
町は3年前地域を活性化する切り札としてある施設を作りました。
氷点下が続く寒い冬でも…中に入れば、この熱気。
年間延べ80万人が訪れます。
いらっしゃいませ。
地元の野菜が安く手に入る産直市場。
その隣には図書館。
子育てママを支える託児所。
さらに学習塾や格安の音楽スタジオ。
さまざまな公共施設と民間のテナントが同居。
地域住民が集う場所になっています。
これは施設が出来る前の写真です。
町の中心部にもかかわらず空洞化が進み人口流出が続いていました。
17年前町は地域活性化のために施設の建設を計画。
ところが、実現には143億円かかり国の補助金を利用しても到底足りませんでした。
どうすれば施設を造ることができるのか。
町が声をかけたのは地元にUターンしてきた岡崎正信さん、42歳。
旧建設省で全国各地の町づくりに取り組んできた経験があります。
当時岡崎さんは主要都市の駅前開発などを担当。
しかし、そのほとんどが失敗に終わりました。
国の補助金を頼りに地域の実情に合わない大規模な開発をしたためでした。
今回、岡崎さんは行政任せにしないため民間の町づくり会社を設立。
建設にかかる費用を補助金に頼らず銀行などの融資で賄うことにしました。
銀行から厳しいチェックを受けることで徹底したコスト削減を図ろうとしたのです。
その結果、建物は当初計画していた3階建てから2階建てに縮小。
むだな装飾をやめ天井はむき出しのままにしました。
こうした努力の積み重ねで建設費を当初の3分の1以下45億円に抑えることができました。
さらに、施設が出来たあとの維持管理にも独自の仕組みを取り入れました。
年間1500万円に上るテナントからの税収などを公共施設の維持管理費に充てるというものです。
テナントが安定した売り上げを確保できるようある工夫もしました。
産直市場に商品を出荷している農家に、施設の運営費を出資してもらったのです。
農家みずからが施設の運営に関わることでやる気を引き出すねらいです。
厳しいコスト管理の一方で攻めの経営も行っています。
去年、7億円かけて作った日本初のバレーボール専用体育館。
こだわったのは床。
国際大会で使われている最高級の床材です。
バレーボールが盛んな紫波町の住民だけでなく全国各地のバレーチームを呼び込む戦略です。
いらっしゃいませ。
ようこそ。
体育館の隣には合宿に来た選手が泊まれるホテルも併設。
さらなる売り上げの向上につながっています。
民間の経営手法を取り入れにぎわいを取り戻した紫波町。
この場所を核にした地域再生の挑戦が続いています。
地方活性化に向けて、公共事業を行ったり、第三セクターで事業を行ったり、いろんな試みをしては、なかなかうまくいかない例が多かったんですが、この取り組みはどうご覧になりますか?
まさに公共施設の作り方2.0、新しい取り組みですよね。
今までですと、三セクであってもいろんな民活っていうのもありましたが、どうしても作るところまでしか考えていない。
この取り組みは最初っから作ることではなく、どう使うか、その前にそもそも何が本当に必要なのかということを、掘り下げて考えた事例ですね。
結局、この人口3万人ぐらいの地方都市の郊外の町です。
田舎のよさと都会のよさがあるようだけど、下手をすると田舎の悪さと都会の悪さを両方持っていて、過疎地は離島よりもむしろ特徴が出しにくい。
こういう所で、自分の町ならではのにぎわった空間、地域に暮らしている女性や子どもたちが楽しめる場所を作ろうという意識のもとに、民間の柔軟な考え方、運用を導入して、税金のむだづかいではなくて、採算が取れた運営のできるにぎわい空間を作った。
それをやった中心人物が、40代の若者だったと。
これは全国の同じことをしている人たちが、学べることが非常に多い事例です。
出来るまで、住民の人たちを入れて40回ほどのワークショップを繰り返し繰り返し行ったという意味で、かなり利用者目線を意識した施設だというふうに聞いてます。
ワークショップも、それから、結論ありきのワークショップというのもあるんでしょうが、真面目に、何十回も練りながら、中身を改善して、本当に使われる施設を作りましょうという努力をする例が増えている。
むしろこういうのってね、小さい、お互いが顔見知りの地方の町のほうが多くて、東京のように大きくなればなるほど、ワークショップも形式だけのようになっている気がする。
むしろ地方の顔の見える、若い人が活躍、やりようによっては活躍できる環境を生かした例ですよね。
こういう人材っていうのは、多くいますか?
彼なんかはまさに地元の建設業の跡取りなんだけれども、東京に出て就職をしたあとに地元に戻り、かつ東京に出て勉強を大学院でやりながら、ネットワークを作ってった人なんですね。
僕も昔から実は知っているんですが、つまり、いろんなところに知り合いが多い。
それをまた裏で支援している東京の専門家集団みたいな人たちもいるんですね。
若い人ほど、やはり柔軟に仲間を増やして、知恵を勉強している人が、全国に増えている。
しかも今、そういう人が地方に戻りつつあります。
皆さんの地域にもきっといらっしゃいます。
これからその地方活性化に向けた、処方せんをそれぞれ描かないといけないわけですから、そうした人材を生かすということも大切でしょうが、一方で、本当に消滅するのではないかといわれている地域で、どうやって移住者を増やせますか?
それはね、移住者を増やすことに、本当に腹を据えて、取りかかれるかどうかが試されてるんですね。
例えば人材不足だから人来てくださいって言ってる企業だからといって、雇えるとはかぎりませんね。
心、腹の中で若い人を使い捨てようと思ってる企業には、やっぱり若い人は来ません。
同じように、本当にこの地域は若い人を使い捨てるんじゃなくて、志のある人と一緒に住んで未来を作っていこうと、そういう手を差し伸べてる地域である、本気度が試されています。
2015/01/05(月) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「地方から日本を変える(1)まちを潤す“にぎわい革命”」[字]
日本経済が抱えた課題“地方再生”をどうするのか、解決のヒントを探るシリーズ。1回目は人口が増えたり、集客力が増えたりしてにぎわいを取り戻した現場から考える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本総合研究所主席研究員…藻谷浩介,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本総合研究所主席研究員…藻谷浩介,【キャスター】国谷裕子
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ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
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