(風の音)朝日に照らし出された雪景色。
水も空気も凍り命を拒むかのようです。
しかし今この瞬間生き物たちはどこかで身を寄せ合い過酷な冬を耐え忍んでいます。
「さわやか自然百景」新春特集。
四季折々の日本の自然を見つめます。
山笑う春。
生き物たちが目覚めます。
万緑の夏。
命が躍動します。
水辺では出会いを求めて生き物たちが集います。
紅葉彩る秋。
一年で最も華やかな季節です。
恵みに命が支えられます。
命巡る四季。
その移ろいを私たちはずっと見つめてきました。
毎年繰り返される風景がなぜ日本人の心に響くのか。
自然と深く関わる人々と四季を旅しひもときます。
冬を巡るのは世界の山に挑み続けるクライマー。
身近な自然と触れ合う事で命の喜びを実感しています。
緑があっていいですね。
春は蒔絵の人間国宝。
伝統の技を通して目覚めの時の美しさを表現しています。
夏は南の海に魅せられた水中写真家。
長年潜り続けて海ならではの命のつながりを感じています。
秋は30年以上植物の葉っぱを描いてきた画家。
一枚の葉を通して繰り返す命の尊さを心に刻んでいます。
この葉っぱだって…それぞれの季節を旅しながら心揺さぶられる日本の自然に出会います。
やわらかな日ざしを受ける桜。
ほほ笑むように咲くかれんな花々。
春らんまんです。
眠りから覚めた生き物たちが一斉に力を解き放つ春。
日本が世界に誇るあの山の命の目覚めを見つめます。
標高3,776m。
日本最高峰富士山。
その裾野に広がる青木ヶ原樹海です。
春この森で生き物たちが次々に目覚めます。
(鳥の鳴き声)まだ木の葉が芽吹く前。
春の光を追いかけるように咲く…他の花より先に目覚め花粉を運んでくれる虫を呼び寄せます。
(鳥のさえずり)森に響き渡る美しいさえずり。
声の主はミソサザイのオス。
(さえずり)暖かくなった森を飛び回ります。
やって来たのはゴツゴツとした岩の隙間。
盛んに苔をついばんでいます。
岩の下の洞窟に出入りしています。
ミソサザイがいない間に穴の中をのぞいてみると…。
岩の壁に小さな丸い塊があります。
これはミソサザイの巣。
苔を巣作りに使う鳥にとって樹海はうってつけの住みかです。
樹海の地面は溶岩から出来ています。
本来保水力がない岩の上では木々は成長できません。
まず溶岩を覆うのが苔です。
少ない水分でも芽生える苔が雨を蓄え木々の成長を促しています。
そして今の苔むす豊かな森が生み出されたのです。
暖かい森に目覚めを喜ぶ歌声がこだまします。
(さえずり)雪解けの山麓を彩る桜。
日本人が愛してやまない春の風景です。
その景色が描かれた飾箱。
施されているのは蒔絵です。
金粉などで漆器に模様をつける伝統の技。
この作品は花見を楽しむ人々をスズメになぞらえたものです。
こちらも桜を題材にした作品。
老木の重厚な幹は大小の金粉で。
花は淡い白金であしらいました。
心洗われるようなうららかなひととき。
作ったのは一人の蒔絵師です。
蒔絵の人間国宝です。
桜をはじめ春の花々の声に耳を澄ませこれらの作品を作りました。
春っていうのは冬の時期すごく長い寒さといいますかね厳しい冬を本当に小さい芽で過ごして。
それがだんだん暖かくなるに従って日々膨らんできて。
その咲く寸前の膨らみの緊張感っていうのかなそこがまず私が好きなところで。
それが一気に我慢して我慢して我慢してフッと咲いたっていうその咲いた瞬間っていうのがすごく私は好きですね。
我慢からフッと解放されたようなところっていうのかな。
たまったエネルギーっていうのかな。
春がやって来るっていうね。
そういうものを植物から感じさせてもらってますね。
長年自然と深く関わり続けてきた室瀬さん。
蒔絵に欠かせない漆も筆先で描く度に新たな発想をくれるといいます。
こちらに室瀬さんならではの感性が光る作品があります。
本来の上品なツヤを生かして塗り重ねられた漆。
そこに大きさの違う金粉を重ねて立体感を持たせました。
金粉がかたどっているのは鳥の羽根。
これは親鳥がヒナを抱く様子を表しているのです。
蒔絵はその工程の全てに自然が深く関わっています。
金粉を蒔く時に使う「粉筒」という道具。
意外なものから出来ています。
これはじつは鳥の軸ですね。
羽根の根元を使った羽軸を道具に使ってます。
羽根の中に潜ってる場所ですね。
ここから先の方に毛がついてると。
かたくて薄くて強い。
まあ自然の樹脂ですね。
これを使わせてもらってます。
つい工芸って…「技術」っていう世界が前に出ていく要素が強いんですけど私はどちらかっていうと技術も大事ですけど…蒔絵と合わせて施されているのが螺鈿。
素材に貝を使った細工です。
これはその中でもちょっと特殊な夜光貝という貝ですね。
この夜光貝。
内側を削ると鈍く光る層が出てきます。
これを螺鈿に使います。
私はこの光のフワ−ッとした色調の変化が好きで夜光貝っていうのを使ってますね。
この青白く光る部分が貝。
麦畑を渡るそよ風を細く切った貝で印象づけました。
桜がまとうおぼろげな雰囲気。
この作品では夜光貝を細かく砕いたかけらで春の空気まで醸し出しています。
しなやかな感性で表現を続ける室瀬さんが格別の思いを寄せるものがあります。
富士山です。
これも蒔絵。
もともと室瀬さんの父親が制作していたものです。
下絵だけ描いて亡くなった父。
それを引き継いで作りました。
山頂を朝日が照らす瞬間です。
湧き上がるエネルギーがやっぱり朝日っていうのは一番…。
まあ身も心もすがすがしくなるし。
やはり一番体のエネルギーが山を通して得られる時間帯というふうに感じますよね。
あがっていくエネルギーというのかな。
それはものすごく私たちの体も心も前に向かせるという気がしますね。
室瀬さんはその後も度々富士の蒔絵に挑戦しています。
しかしなかなか思うように表現ができないといいます。
多くの芸術家が挑んできた富士山。
昔から日本人が数限りない思いをはせてきた山です。
その存在の大きさをどう表現すべきか室瀬さんは悩み続けているのです。
自分の父親はどういう思いでこの山に取り組んだのかどういう表現をしようとしたのかという事を想像しながら。
その感覚に自分が沿わないと表現できないんで。
そういう意味では自分を超えた力の表現っていう事が一番大事なのかなっていう。
そういう意味では自分の作品をただただ作るというよりもかなり心の勉強になりますね。
いつか満足のいく富士の蒔絵を作るため室瀬さんは挑戦を続けます。
日本人の心のふるさと富士山。
人々の思いを集めてひときわ大きな存在感を放ち続けます。
春の終わりを告げる青葉。
夏がやって来ました。
木の葉が受け止める雨。
水は至る所を潤します。
夏の水辺で命をつなぐ営みを見つめます。
紀伊半島熊野地方。
日本有数の降水量を誇ります。
その南の端に流れる古座川です。
全長およそ56キロ。
ここに初夏を象徴する魚が訪れます。
アユです。
滝を登り上流へと向かいます。
河口で生まれたアユ。
食べ物を求めて遡上してきました。
つついているのは藻です。
澄み切った流れでは川底まで日の光が届き藻がよく育ちます。
繁殖はまだ少し先の事。
それまで力を蓄えます。
既に繁殖の時期を迎えた魚もいます。
全長7センチほど。
今はメスを招くために巣作りの最中。
そこへやって来たのは…。
こちらも繁殖期を迎えています。
巣穴を探していたヌマチチブ。
なんとヨシノボリの巣を横取りです。
体の小さなヨシノボリではとてもかないません。
おや?ヌマチチブがもがいています。
巣穴にするには少し狭かったようです。
ヨシノボリも一安心。
するとおなかの青い魚が現れました。
おなかの青は産卵の準備ができたしるし。
オスはメスを何度も追いかけアピールを繰り返します。
オスが巣の方に近づいていきます。
どうやらメスも気に入ってくれたようです。
オスに導かれメスが巣穴に入っていきます。
やがてメスだけが出てきました。
巣穴の天井に卵が見えます。
卵の数はおよそ2,000個。
ふ化するまでの数日間オスが卵を大切に守ります。
小さな命でにぎわう清流です。
早くも新たな命を育んでいる水辺もあります。
日本最大の面積を誇る北海道釧路湿原です。
そこを蛇行しながら幾筋も川が流れます。
豊富な湧き水は長い間湿原の植物を育んできました。
更に水は目をみはるような光景をもたらします。
霧です。
夏二日に1回は発生する霧。
日光を遮り湿原を涼しく保ちます。
(鳥の鳴き声)この水辺が育む鳥がいます。
国の特別天然記念物の…草陰にヒナが見えます。
背丈は1mほど。
湿原の植物に上手に隠れています。
親鳥はヒナと一緒に歩き小魚などを与えます。
ヒナも親鳥にぴったりとついていきます。
しばらくすると…。
羽ばたくしぐさを見せました。
親鳥も手本を見せます。
食べ物豊富で隠れがにもなる湿原。
タンチョウが安心して子育てできる場所です。
瀬戸内海に面する広島県竹原市。
夏の盛りここで熾烈な恋のバトルが始まります。
市内を流れる川の河口。
その先の山と海の間に小さな陸地が見えます。
面積22ヘクタールほど。
「ハチの干潟」と呼ばれています。
夏の大潮の頃干満の差は3m以上。
潮が引くと生き物たちが動きだします。
穴から出てきたのは…4センチほどもあるハサミが特徴です。
こちらの穴からはメスが出てきました。
懸命にハサミを振るオス。
メスにアピールしているのです。
メスを巡ってオス同士の争いも始まりました。
肝心のメスは気にも留めていません。
それでもオスは諦めません。
ようやくアピール成功。
メスを巣穴へと誘います。
恋の駆け引きは夏じゅう続きます。
満月の夜。
この時を待っていた生き物がいます。
ふだんは森に住んでいますが夏の大潮の夜海へやって来ます。
よく見るとおなかに何か抱えています。
なぎさまで来ました。
すると…。
体を震わせ始めました。
この時期メスはおなかに抱えた子供を海に放つのです。
干潟で小さな生き物たちが精いっぱい命をつないでいます。
南の海でも新たな命が育まれます。
沖縄本島から西へおよそ40キロ。
慶良間諸島です。
去年国立公園に指定されました。
「ケラマブルー」とも呼ばれる透き通った海。
およそ250種のサンゴの周りに2,000種を超える生き物が住んでいます。
そして夏の夜。
サンゴの産卵です。
多様なサンゴの海ならではの幻想的な光景です。
サンゴの海が育む生き物たち。
その姿を50年以上にわたって捉え続けてきた人がいます。
大方さんは慶良間諸島の一つ座間味島に長年通い続けてきました。
日本の海の中でも慶良間諸島には大方さんにとって特別な魅力があるといいます。
「沖縄全体を集約したような海」と言われてるんですね。
島がたくさん集まってるじゃないですか。
ですから海の中の…海の中にはどんな世界が広がっているのでしょう?ここは水深10mほどの場所。
サンゴの大群落です。
サンゴの周りは色とりどりの魚でにぎわっています。
大方さんがおもむろにカメラを向けたのは…。
イソギンチャクの隙間に隠れる魚。
カクレクマノミです。
クマノミは大方さんが追い続けてきた生き物の一つ。
日本にいる6種類全てがこの海で見られるといいます。
水深15mほどの岩礁地帯にやって来ました。
こちらにいたのはハナビラクマノミ。
エラの脇と頭から背中にかけてある白い筋が特徴です。
この海に来ると大方さんは必ず関わり合う生き物たちの姿を目にするといいます。
海底の穴に何かいます。
すると同じ穴からエビが出てきました。
じつはここは巣穴。
2匹は同じ穴に住んでいるのです。
ハゼは見張り番。
危険を感じると尾びれでエビに知らせます。
エビの方は巣穴を掃除してハゼに隠れがを提供しています。
この関係こそ大方さんが海に魅了される理由の一つ。
陸の動物ではなかなか見れないようなね。
違った種の生き物が助け合って生きているとかね。
やっぱり海の中って違う種類の魚がごっちゃにいるじゃないですか。
だからいろんな事があるんですけどその中でお互いに助け合ったりとかしてる姿っていうのは陸上の動物ではなかなか見れないですよね。
そういうとこが海の魚の魅力かもしれないですね。
この海にはもう一つとっておきの魅力があります。
波打ち際のサンゴのかけら。
長い歳月のうちに波で砕かれ真っ白な砂になります。
この美しい景色はサンゴがつくり出したものなのです。
サンゴは環境の影響を非常に受けやすい生き物でもあります。
こちらは台風の荒波で折れてしまったサンゴです。
16年ほど前には海水温の上昇でサンゴが白化して壊滅状態になった事もあります。
しかし長年慶良間諸島の海を見てきた大方さんには気付いた事があります。
崩れたサンゴの上にあるものを見つけました。
サンゴの赤ちゃんです。
もともと慶良間諸島というのはサンゴの生育に適した場所だったんでサンゴ礁が発達したんですよね。
だから白化で死んでも成長が早いのでまたよみがえるんですね。
例えば台風みたいな自然現象で壊れたサンゴっていうのはすぐよみがえるんですね。
サンゴの赤ちゃんはすくすくと成長しているようです。
立派に育ったサンゴは海の生き物たちのよりどころになっていきます。
この日大方さんは思いがけない出来事に遭遇しました。
クマノミのペアです。
その傍らに赤いものが見えます。
産卵しています。
卵の大きさは2ミリ前後。
1時間ほどかけておよそ1,000個の卵を産みます。
「生き物が命をつなぐ姿には何度でも感動する」と大方さんは言います。
今回の撮影で大方さんが一番楽しみにしていた事があります。
ある生き物との6年ぶりの再会です。
向かうのは前に出会ったのと同じ砂地。
果たして会えるのでしょうか?いました。
大方さんの目の前。
白黒模様が目立つ魚。
大方さんが本格的に水中写真を始めた頃からずっと見てきたクマノミ。
めったに出会う事のできない種類だといいます。
全長2センチほどの子供も元気に泳いでいました。
大方さんにとって至福のひとときです。
大方さんの気持ちに応えるようにクマノミも近づいてきます。
魚たちが落ち着いたらカメラを構えます。
これが大方さんの流儀。
無事に再会を果たした喜びに思わず頬が緩みます。
今回もトウアカクマノミを見に行きましたけどあれも随分昔から長く撮影してたクマノミでして。
で今回久しぶりに会ってあまだ生きてるなと思って安心しました。
この海がつなぐ命の連鎖。
大方さんは生き物たちとの対話を続けます。
こんなおっきな人間がね近くで見てて最初やっぱ警戒してるけども…サンゴがつくり出す海の中の楽園。
生き物たちは互いに助け合いながら命をつないでいます。
山肌が紅葉に染まります。
秋の到来です。
あふれ出すさまざまな実り。
秋の恵みを受ける生き物たちの姿を見つめます。
秋の初めここを訪れる恵みがあります。
波間をちらつく影。
サケやマスが遡上してきたのです。
そこに現れた黒い体…。
素早い動きで泳ぐ魚を捕らえました。
秋産卵のために川を上ってきた魚は栄養たっぷりです。
魚は次から次へとやって来ます。
ヒグマたちは海からの恵みを思う存分享受します。
秋田県と山形県の県境にそびえる鳥海山。
山麓の森に恵みがはじけます。
森に生えるのはブナやミズナラなどの広葉樹。
樹齢300年のブナの巨木も美しく色づきました。
その枝先にはたくさんの実がなっています。
小鳥がやって来ました。
ブナの実を器用に割って脂肪分豊富な中身を味わいます。
恵みがもたらされるのは木の上だけではありません。
ブナの木の根元から顔を出したのはアカネズミ。
地面が雪で覆われる前に急いで頬張ります。
秋は足早に進みます。
ゴジュウカラが落ち葉の下からブナの実を見つけました。
ブナの実を蓄える事もあるゴジュウカラ。
冬を控えたこの時期貴重な食べ物です。
こちらには…食べているのは甘い…じつはヤドリギはあえて鳥に実を食べさせています。
鳥に種を運ばせて森じゅうに新たな芽を出すのです。
実りが減る時期をねらったヤドリギの戦略です。
競うように恵みを受ける生き物たち。
ブナの森が支えています。
秋の終わり。
最後の輝きを放つ生き物がいます。
福井県を流れる九頭竜川。
ここで春から秋を過ごしてきた魚がいます。
間もなく産卵の時期。
海に近い河口で産卵するアユ。
群れを作り川を下り始めます。
アユの体が真っ黒に変わっています。
これはオスの婚姻色。
産卵が始まりました。
体が白っぽいのがメス。
石の間に体を突っ込みます。
オスたちがそこへ群がります。
(鳥の鳴き声)上空ではアユを狙ってトビが群れています。
(トビの鳴き声)更に水中でも産卵の気配に気付いてやって来る生き物がいます。
ウグイなどの群れです。
流されてくるアユの卵を狙っているのです。
満身創痍のアユ。
最後の力を振り絞ります。
産卵が終わるとアユはその一生を閉じます。
冬間近。
命をつなぐアユのひたむきな姿がありました。
(鳥の鳴き声)榛名山を望む群馬県渋川市です。
11月上旬。
1人の女性が山を訪れました。
画家の群馬直美さんです。
(鳥の鳴き声)木々は葉を落とし始めています。
あっちょっとピーク過ぎちゃったんですけどでもじつにきれいですね。
ほんときれい。
美しいです。
紅葉のピークを過ぎてから来たのには訳があります。
群馬さんが描くのはこの錦に染まる森の風景…ではありません。
なんと足元に落ちている葉っぱなのです。
30年以上主に葉っぱを描いてきた群馬さん。
まるで本物の葉っぱが並んでいるようですがこれは精密に描かれた絵なのです。
群馬さんの作品の特徴は葉っぱのありさまを忠実に再現する事。
描かれた白っぽい線は中を虫がグルグルと通った跡です。
葉っぱを食べながら進んだ虫が外に出ていった形跡まで克明に描かれています。
秋の森には落ち葉がいっぱい。
色とりどりの葉の中から今回の絵の題材を探します。
落ち葉がたくさん落ちていてその下には何があるのかなと思って。
こうかき分けてみたらもう枯れ葉の先輩たち落ち葉の先輩たちがたくさん下にいて。
しっとりとして黒々としていて。
その黒々した様子がとってもきれいだったので思わず拾っちゃいました。
器用にこの枝に刺さってるじゃないですか。
このモミジのちっちゃい葉っぱが。
これもほんとに芸術ですよね。
秋の葉っぱはやっぱりバトンタッチして…次の世代に「さあ次あなたたちの番ですよ」という冬芽たちになんか祝福をおくりながら土にかえって栄養分になって木のために吸収されてまたここまできっと届いてるんですよね。
その循環っていうのがすばらしいですね。
すてきです。
群馬さんを魅了するのは…題材が決まったようです。
でも選んだ葉っぱは虫食いだらけ。
この…形?両手あげてバンザイしてる感じ。
で虫食い穴。
とっても表情豊かなのでその部分が心ひかれます。
でも虫食いの葉っぱってこの虫食い穴とか描き込むとすごく表情が豊かになってくるんですよ。
描かれた葉っぱ自体がすごく生き生きとしてくる。
いわば傷あとなんですけどもその傷あとっていうのがやっぱ生きてきた証し…命のかがやきそのものだと思います。
なぜか葉っぱの大きさを測り始めました。
(シャッター音)今度は写真です。
(シャッター音)スケッチはしないです。
スケッチをしている間にどんどん色合い変わっていってしまうので。
この葉っぱの命の輝きこの一瞬ってこれしかないのでその部分を私はとどめたいですね。
群馬さんのアトリエです。
細かい部分を丹念に描くために葉っぱ1枚に対しておよそ20枚もの写真を撮ります。
こちらが森で拾った葉っぱ。
見つけた時とは確かに全く違っています。
この番号はこの葉っぱのギザギザの番号なんですね。
どの部分を描いてるか分からなくなっちゃうので。
描きながら見て正確に描けると。
忠実に描くための工夫はたくさんあります。
壁に並んだ顔料。
絵の具のもとです。
微妙な色合いを自分でつくり出して「テンペラ」という画法で描きます。
一つの色を作るにしても水で溶いただけではまだ絵の具は出来ません。
これは…顔料をキャンバスに定着させるのに使います。
これも1色ずつ作らなければなりません。
まず太い筆で全体に色をつけます。
このようにたたくように1色目を置いていきます。
その上から細い筆で線を描き込みます。
微妙に色を変えて何度も塗り重ねます。
大変だなとか思うけど別に自分で選んだ道なので…。
でもこういうふうにしないと全然実物とは程遠い感じに私としては思えてくるので。
やっぱこの地道な作業が重要ですよね。
更に群馬さんが編み出したテクニックがあります。
表面がキラキラと光り立体的に見えます。
その秘密がこれ。
顔料の粒が光に反射するのを利用して立体感を生み出すのです。
そうして描かれた絵は本物のようにみずみずしくなりました。
さて群馬さんの今回の作品。
どんな仕上がりになっているでしょうか?この中に完成品があるというのですが…。
こちらです。
葉のギザギザも虫食い穴も本物そっくり。
微妙な色合いとパールホワイトが見事に溶け合い立体的になりました。
その一枚の葉っぱそのもの…出会った葉っぱそのまんまありのまんまに描いたものっていうのが私にとってはですけれども元気をこうもらえるものですね。
だから…ありのままの美しさ。
時間をかけて葉っぱと向き合う事で群馬さんはありのままの命の美しさを見つけます。
秋森を彩る紅葉は精いっぱいに生きてきた木々が放つ命のきらめきです。
自然は劇的に変化します。
山を閉ざす容赦ない雪や風。
最も過酷な季節がやって来ます。
ここに冬山の厳しさと常に向き合ってきた人たちが暮らしています。
アルパインクライマーの山野井泰史さんと妻妙子さんです。
2人はヒマラヤなど世界中の雪山や氷の壁に挑み続けてきました。
酸素ボンベに頼らず数多くの登頂記録を打ち立てた世界有数のクライマーです。
高き峰々の厳しさを知る2人。
この日トレーニングを兼ねて自宅近くの山を訪れました。
今はまだこうなんか山自体落ち着いてるというか…。
優しさがあるなって感じしますね。
泰史さんが足を止めました。
(泰史)絶対あの岩の下はいるけどね。
絶対いると思う。
比較的大きいのがいるよな!いた。
(妙子)あっいたいたいた。
(泰史)小さいな。
川の中にヤマメを見つけたようです。
(妙子)横に黒い筋が見えるでしょ。
(泰史)うん。
(妙子)上に行った。
生き物たちとの出会いを楽しみながら2人は山道を進みます。
(川の流れる音)突如巨大な岩の壁が立ちはだかりました。
幅70m高さは80mにもなります。
ここが今日のトレーニングの舞台。
泰史さんが学生時代から通っていた場所です。
こうした身近な岩山で鍛錬を積み世界への挑戦が始まったのです。
のほほんとして登れるようなものではないっていうのは若い時から知ってますね。
緊張と冷静をうまい事かみ合わせて登んないと安全には下りてこれないのを若い時から知ってます。
登り始めました。
しっかりと素手で岩をつかみ登っていきます。
どんなに慣れ親しんだ岩場でも毎回楽しさを発見するという2人。
こうして素手で登るからこそ気付く事もあります。
気温がこう低くなると岩をタッチした感じが気持ちよくなってくるね。
岩を触った感じが今時分の方がなんかああ気持ちいいな岩触ってるなって感じがして。
細かいとこに指立てた瞬間に何か…。
クライマー魂が燃えるプラスホッとします。
たちまち地上からおよそ70mの地点まで来ました。
眼下に広がるのはこの場所でしか見られない絶景です。
緑があっていいですね。
なんか動物の気配があるからいいよね。
ヒマラヤとかアンデスとかああいう所ってやっぱり雪と氷と岩しかないから。
動物いないしなんかホッとしないっていうか。
トレーニング中でも面白いものを見つけて夢中になれるのは日本の山ならではだといいます。
以前あれ見たね。
コウモリ。
すごくこう…岩の隙間にコウモリ入ってたよ。
よくいるよコウモリは。
2人ともあっという間に頂上です。
(取材者)お疲れさまでした。
いいね。
楽しいねほんとに。
(取材者)楽しいですか?ほんとに楽しい。
山野井さんたちは日本の山のどこに魅力を感じるのでしょうか?自然の中で一所懸命遊べてる感じがすごくいいですねえ。
あとやっぱり動物に会えるのが一番私は好きかな。
やっぱり日本の山はいろんな種類があるっていうか豊かですよね。
例えば冬の利尻なんか山頂に立ったら吹雪だけども視界が一瞬開けると向こうに黒い海が広がってるんだよ。
そういう場所ってなかなかないんじゃないかなと思うしいろんな登山が日本はできるなって。
富士山の風なんていったら最高だよねあれね。
ほんとにこう30キロ40キロ担いでても体が浮き上がるぐらいの風が吹くわけでしょ。
まあほんとに日本の山ってホッとしますねやっぱり。
なんか登ってるとね。
「生きてるなあ」って思うからホッとするんじゃないですか。
たとえ厳しい季節でも命の息遣いが聞こえる日本の自然。
奥多摩の山々も間もなく雪景色に変わります。
雪が山を覆っていきます。
その中にも生き物たちの懸命な姿があります。
厳しい季節を生き抜くたくましい命の営みを見つめます。
北海道の真ん中大雪山系です。
南北およそ50キロにわたって脈々と山が連なります。
その北部。
山の中腹には針葉樹林帯が広がっています。
すくむように立つ…その枝先にエゾリスがいます。
冬眠しないエゾリス。
食べ物を探しに出てきたようです。
(激しい風の音)エゾリスを襲うすさまじい風。
それでもお構いなしに食べ続けます。
全身をびっしりと覆う冬毛と秋に蓄えた脂肪のおかげで寒さをしのぐ事ができるのです。
こちらはオホーツク海沿岸。
厳冬期。
気温は優に氷点下10℃を下回ります。
僅かに残った水辺。
鳥たちが羽を休めにやって来ます。
ロシアなどから冬越しのためにやって来ました。
オスはその名のとおり真っ白な頬をしています。
突然首をのけぞらせました。
今度は前に突き出します。
これはオスの求愛のしぐさ。
そばにいるメスにアピールしているのです。
厳しい寒さの中カモたちの恋は既に始まっています。
水辺から程近い原野。
獣の足跡が点々と続いています。
歩いていたのはキタキツネ。
こちらには2匹います。
追いかけじゃれ合うキツネたち。
間もなく恋の季節を迎えます。
雪解けの頃また新たな命が加わります。
日本の四季。
生き物たちは季節ごとに命のドラマを繰り広げていました。
移ろう四季を通して日本人が育んできたのは命を慈しむ心です。
四季が上手に分かれてるためにすごく…巡る季節は新たな命を予感させてくれます。
お目当てのハタいなかったですね。
(取材者)いなかったんですね。
うん。
でも…これからも生き物たちの営みは続いていきます。
その命の一つ一つが私たちに語りかけてくれます。
(群馬)自然はやっぱり純粋なものですかね。
純粋な輝き。
ありのままの自分になる事を許してくれる。
まあ肩から力を抜いてありのままでいいじゃないかって葉っぱからいつも言われてます。
そうした対話から私たちは自然の優しさと厳しさを知っていくのです。
(泰史)よく「山は危険だ」って言うけど山はそれこそそのままの姿であって…。
雪崩を起こす落石も多分サイクルの一つなわけでしょ。
岩が崩れたり雪が崩れたり。
だから僕らがその辺はちゃんと認識して…四季折々移りゆく日本の自然。
その中でひたむきに命をつなぐ生き物たち。
私たち日本人にとって自然を感じる事こそ生きている証しなのかもしれません。
また一年季節が巡っていきます。
2015/01/04(日) 07:20〜08:50
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景 新春特集「四季 日本の自然を感じる旅」[字]
深い雪に覆われた高峰、光降り注ぐ広葉樹の森、色鮮やかなサンゴ礁が広がる海…。寒冷地から亜熱帯まで、多様な日本の自然の中、日本人ならではの自然感を改めて体感する。
詳細情報
番組内容
「さわやか自然百景」では、全国各地の美しい風景とそこに暮らす生きものたちの姿を伝えてきた。深い雪に覆われた高峰、光降り注ぐ広葉樹の森、魚たちが遡上(そじょう)していく川、色鮮やかなサンゴ礁が広がる海…。寒冷地から亜熱帯まで、多様な自然が見られる日本列島。そこには自然と密接なつながりを持って生きる命がある。今回、「自然と深く関わりながら生きる人々」が日本人ならではの自然感を改めて体感する旅をする。
出演者
【出演】室瀬和美,大方洋二,群馬直美,山野井泰史,山野井妙子,【語り】中村慶子,秋鹿真人
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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