(テーマ音楽)
(電子レンジ)チン!今日はこうして1人ごはん。
「冷凍庫のチンして食べてね」妻は女子会に出かけました。
人気のイタリアンでランチだそうですよ。
私のランチは夕べの残り。
いやいや白いごはんがあれば十分です。
ああ立派なごちそうです。
いただきま〜す。
草刈さんそのまま食べちゃうんですか?奥さんがせっかくごはん茶碗を用意してくれたのに。
だって洗い物が増えるじゃないですか。
それに何もお茶碗にこだわることないですよ。
草刈さん何気なく使っているごはん茶碗にも鑑賞のツボがあるんですよ。
ごはん茶碗を中心にふだん使いの器を集めた展示会。
大きさ形図柄。
さまざまな個性を持つ茶碗が並んでいます。
クラフトバイヤーの日野明子さんはこれまでいろんな産地を訪ね魅力的なごはん茶碗を探し歩いてきました。
大きさも形もかなりバラエティーに富んでいて一見これでごはんを食べるのかという不思議な形もありますがだからこそ選びがいがあると思いますので…ごはん茶碗をより楽しく使ってもらいたい。
日野さんは料理家のたなかれいこさんの協力で茶碗といろんなごはんの相性のいい取り合わせを試してみました。
色も形も異なるごはん茶碗。
さてどんなごはんがぴったり来るでしょうか。
まず白い素地に青いライン。
簡素なデザインの茶碗。
そこにたなかさんが合わせるのは大根の葉を混ぜたごはん。
ほらやっぱりおいしそうにぴったり合いますわ。
なんかお茶碗がまた生き生きしてきませんか。
自画自賛?染め付けの青と大根の葉の鮮やかな緑が互いをみずみずしく引き立てます。
薄褐色に茶色のラインの茶碗にはサツマイモの入った玄米ごはんで秋のぬくもりを感じさせます。
土の風合いを生かした野趣あふれる茶碗には黒米を合わせました。
かっこいいですよね。
このコントラストが。
両方生きてますよね。
自分で言うのもなんですけど。
黒米がかむと更にパンチがあるのでインパクトの連続だなと思います。
お茶碗から受けた印象とその組み合わせ。
また楽しみが倍増するっていうんでしょうか。
アイデアひとつで食事時を華やかに彩ってくれるごはん茶碗。
日本の食卓の目立たない主人公です。
毎日使うごはん茶碗だからこそこだわりたい。
そう考えた人がいます。
作家の…大のごはん好きだったといいます。
愛用した茶碗が3つ残っています。
素朴で温かみのある色と柄を好みました。
ドラマに小説に…。
忙しい日々を送る向田にとってごはん茶碗には特別な意味合いがあったといいます。
せっかく食べる主食だから自分の好きな器でっていうような事を…お茶碗欲しいなって言って見てて「あれが一番気に入った」って。
もう一回見てきてなかなかいい茶碗だったんですよシンプルで。
「買えばいいじゃないの」って言ったら「あれを使うにはまだ私にはね…」もう一段階仕事してからあれよりいいものを買うみたいな言い方でしたね。
その時に何でもいいから買うってことしないんだって思いました。
日本人なら誰もが使うごはん茶碗。
そこには身近な器ならではの美が隠されています。
今日は暮らしの中で磨かれてきたごはん茶碗の美に迫ります。
まずは図柄に注目します。
ごはん茶碗を長年にわたり集めてきた大口佐恵さんのコレクション。
大口さんはごはん茶碗の魅力は豊富な図柄にあるといいます。
好きなのは伊万里焼。
ひとつひとつが凝った絵や文様で飾られています。
やっぱり図柄が全部入ってるということですね。
桜を見まして形とその桜が大変すてきなので集めてみようかしらって主人と話しましてね。
一番は柄に合わせて使ってるかしら。
お年を召した方をお呼びするときにはやっぱり鶴亀が入っているのを選んで。
やっぱり元気で長生きしていただきたいので。
こちらは平和な世に現れるという鳳凰の絵。
ごはん茶碗には縁起のいい図柄吉祥文様が多いのです。
この茶碗に散りばめられているのは…。
長寿を象徴する松の葉と「寿」という文字を崩した柄です。
そしてポピュラーな蛸唐草。
つるがどこまでも生い茂っていく様を表したもの。
繁栄を象徴しています。
ごはん茶碗の柄には毎日使う器だからこそ幸福への願いが込められたのです。
今日一つ目のツボは…焼き物の産地…伝統的な吉祥文様が現代的な色やデザインで描き続けられています。
かわいらしい…瓢箪は江戸時代以来の吉祥文様。
さてどんな願いが込められているのでしょう。
茶碗に描かれた瓢箪は全部で6つ。
六瓢と無病をかけて無病息災を願った図柄なんです。
この窯の吉祥文様の茶碗。
あえて小さいものも作ります。
窯元の小泉蔵珍さんに寄せられたある声から生まれました。
私が展覧会やっとる時にあるおじいちゃんが来まして小さいごはん茶碗はないかって探してるんですよね。
どうしてですかと聞きましたらお医者さんに止められてると。
ごはんの量を。
そして…自分の好きなものでごはんを食べたい。
これは当然ですよね。
人間の願いとか思いとかいろいろありますね。
その中で毎日使うお茶碗の文様もこだわるわけですよ。
古くからの吉祥柄に大胆なアレンジを施すこともあります。
縁起のいい鯛。
それをあふれんばかりに描きました。
お茶碗の形と相まって勢いよく飛び跳ねるかのように見えます。
ユーモラスな姿が食卓を明るくしてくれそうですね。
新しい吉祥文様も考え出されています。
子ども用の茶碗。
かわいらしい筆遣いで描かれたのは気球と風船です。
広い大空へ上へ上へと昇っていく姿に健やかに育ってほしいという願いが込められています。
昔から今へ少しずつ姿を変えながら茶碗を彩ってきた吉祥文様。
おいしく食べて日々を健やかに生きていきたいという願いが込められてきたのです。
私のお茶碗の柄は網目なんですけど連続する模様って限りなく続くから縁起がいいらしいんですよね。
そう言われてみると毎日食べるごはんをよそうにはぴったりの柄ですね。
ごはん茶碗侮ることなかれ。
ジャーン!確かにお茶碗によそうだけでおいしそうに見えますね。
残りごはんも炊きたてみたいで。
それにこの手で持った感触。
使い慣れてるせいかお茶碗の形が手にしっくりきますね。
しっくり手になじむ形もごはん茶碗ならではの美なんです。
モダンな食器が好きな吉川智恵美さん岳史さんご夫妻。
毎日の食事に欠かせないお気に入りのごはん茶碗があります。
1993年にグッドデザイン賞を受賞した平たい形の茶碗です。
その独特の曲線にほれ込んで以来割れるたびに同じ物を買い求めてきました。
形とデザインがあまりにもかわいくて大好きになりました。
湯気が上がってきやすいのか甘いにおいが前よりしてるというイメージがあります。
ごはん茶碗の何気ない形にはごはんをおいしく食べるための工夫が凝らされてきました。
江戸時代から現代まで日本中の人々に向けて数えきれないほどのごはん茶碗が作られてきました。
古くからのろくろの技を受け継ぐ村島昭文さん。
かつてこの町の食器メーカーに勤めていた時は宮内庁に納めるごはん茶碗も作っていた名人です。
特に…テーブルの上お膳の上に置いてただみんなで食べるくらいのは扱わんから。
そう気を遣わんでもいいんですけどやっぱり口に当てるとか握るとか…持ちやすさと口当たりを追求しごはん茶碗独特の美しいカーブが生み出されてきました。
二つ目のツボは…絶妙な使い心地はどのように生み出されるのでしょうか。
最初のポイント土を器の形にしていく時ヘラと指先で挟むように進めます。
これは丈夫な器にするための作業。
土の粒子が圧縮され薄くても割れにくい器に仕上がるのです。
続いてのポイント。
カーブを整える押しべらです。
使い心地を考え抜いたいくつかの曲線パターンがあります。
これを使うことで器は洗練された曲線に仕上がります。
何世代にもわたる試行錯誤の末たどり着いた曲線です。
そして最後にできる限り薄くすることで軽く口への当たりもよくなります。
お茶をちょっと入れてお茶漬けみたいにしてさらさらっと口の中に注ぐ時に唇の当たりそういう柔らかさが違うというようなことはお客さんも言われますけどね。
江戸時代中期武士や商人の間にごはん茶碗が広まり始めた頃の形。
蓋そして上に行くほど直線に近くなるカーブ。
何かと似ていませんか?木のお椀です。
焼き物が普及するずっと以前から使われていた木のお椀を真似て作られたのです。
日本人の食文化の変遷を研究する民俗学者の神崎宣武さんです。
丸い形を半分に切ったものそれは手に収まりやすい訳です。
それから日本の食生活の作法というのは今はテーブルで食べておりますがかつては膳です。
そうすると床の上から口まで70〜80センチ運ぶわけですよ。
これを何往復もするわけですから…それからもちろんすっぽ抜けたら悪いわけだから…ごはんの調理の仕方も茶碗の形に深い関係がありました。
明治時代に白い米のごはんが都市部から普及し始めるまでは稗粟などの雑穀中心。
しかもおかゆや雑炊などにするのが主流でした。
粘りけのある白いごはんが主流になると茶碗の形も変わります。
ごはんはお箸でつまみ口まで運んで食べるようになります。
日本人の暮らしの歴史が秘められたごはん茶碗のカーブ。
江戸時代中頃のごはん茶碗。
どっしりとした安定感を感じさせる曲線です。
江戸後期から明治に流行した形。
縁が外側に反り軽やかな印象を与えます。
料亭などで盛んに使われました。
口が大きく開いた形から朝顔形とも呼ばれる茶碗。
明治に登場。
今の茶碗の原型となります。
かれんな花のような姿が食卓を華やかにしてくれました。
そしてさらに口が開いた現代の茶碗。
見込みの図柄を楽しみながら食事ができるデザインです。
何気ない曲線に使い心地を追い求めた日本人の知恵が宿っています。
うん。
やっぱりごはんが一番。
おいしかったぁ。
あれ?草刈さん?どうしたんですか?見えてくるんです。
茶碗の中で白く輝く銀シャリが。
その上には真っ赤な明太子。
いや褐色の納豆か。
違う。
つやつやと光る生卵だ。
やっぱり炊きたてが食べたいじゃないですか。
ねぇ。
はあこうしてお米をといでると幸せだなぁ。
よし。
好きなお茶碗と出会うとごはんはいっそう楽しくおいしくなりますよ。
東京にある食器専門店。
お客さんの関心が最も高いのがごはん茶碗だといいます。
より取り見取りの茶碗からどれを選ぶか。
店主の松井信義さんはこんなアドバイスをしてくれました。
買う使うというより長くつきあうということです。
毎日使うごはん茶碗。
気の合う茶碗と巡り合うと友達や夫婦のように長いつきあいを楽しむことができるんですよ。
今日最後のツボ。
幕末の志士坂本龍馬にも愛用の茶碗がありました。
妻おりょうと暮らしていた頃使っていたものとされています。
描かれているのは自分の名前にある龍の姿。
長崎で海外の輸出用に焼かれた物をふだん使いにしていました。
いずれは世界を股にかけ活躍したい。
そんな夢をこの茶碗に託していたのかもしれません。
焼き継ぎをした跡は長く愛用したことを物語ります。
大正・昭和に活躍した…多くの人に美しい暮らしを楽しんでほしい。
富本は芸術作品を発表する一方質の高い日常の器を作り続けました。
富本が自分や家族のために作ったごはん茶碗が残されています。
どっしり重く安定感のある形。
自分の名前と野の草花が太く力強い筆遣いで描かれています。
こちらは長男のためのごはん茶碗。
これは「壮吉用」と書いてあります。
壮吉というのは先生のご長男で壮吉さんが生まれてちょうど1年わずか。
特徴はこの高台の大きさですね。
お子さんが持たれたときに非常に安心感があると。
みんなに持たせてあげたいですね。
独特の重量感が。
お子さんに対してはちょっと重いかなと思うくらいですけどこの方が安定感がありますね。
なんとも言えない温かさと。
幼い息子がごはんをひっくり返さないよう考えられた形。
染め付けで記された名前と相まって温かみのある風情を醸し出しています。
昔も今もごはん茶碗は家族の食卓でかけがえのないもの。
…食べたことないでしょ?あるよちょっとだけ。
大治さん一家。
小学1年の相思君にはお気に入りの茶碗があります。
2年ほど前買ってもらいましたが今年の初め割ってしまいました。
それを継いで使っています。
(父)彼がこれを割った時に同じ作家さんでほぼ同じ形のものを買って与えても彼はその時にこれは僕のじゃないって言って。
ほとんど形は一緒なんですけど例えば重さや口の薄さとかで彼も多分分かったと思うんです。
割ったその日の夜にお父さんごめんなさいと言いに来たのでそれもかわいそうで直したいなという気持ちになりましたね。
相思君は直してもらう職人に宛てた手紙に割れる前のお茶碗の絵を描きました。
やがて大治家の食卓にちょっと姿を変えて相思君の茶碗が戻ってきました。
彼はこれを見て「人の形に見えてかわいい」って言ったりついだ時にお茶碗の風景が全然違うので「すごくきれいだな」って。
前のお茶碗より倍以上良くなったかなと。
このお茶碗が自分たちに近づいてくれたような感覚です。
直して使ったことでさらに愛着が深まりました。
お母さんの茶碗。
お父さんの茶碗。
そしてぼくの茶碗。
大切なマイ茶碗があるからこそごはんの時間はいっそう温かく満ち足りたものになるのです。
ああいい匂いだ。
早く炊けないかなぁ。
ごはんにぴったりのおかずにマイ茶碗。
準備万端と言いたいところだけど…。
何か足りないな。
・あなた〜!ただいま〜!ああ妻が帰ってきました。
女子会楽しんだかな。
そうか。
いつも食卓にあるはずの妻の茶碗がなかったんですよね。
1人で食べるより2人で食べた方がおいしいもの。
おかえり!おいしいごはんが炊けてるよ〜。
よかったら一緒に食べない?
(テーマ音楽)2015/01/03(土) 04:00〜04:30
NHK総合1・神戸
美の壺「ごはん茶碗(わん)」[字][再]
身近なテーマを3つのツボで指南する美術番組。今回は「ごはん茶碗(わん)」。美しいカーブ、縁起の良い図柄、あの坂本龍馬や富本憲吉のマイ茶碗も紹介!案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
日本人なら誰もが使う「ごはん茶碗(わん)」。食卓で何気なく目にするお茶碗の姿形には、毎日使っても飽きがこない魅力が隠されている。持ちやすさと食べやすさを追求して生まれた美しいカーブ、日々の食事に幸福を願った縁起のよい図柄。ふだん使いならではの美は、米で命をつないできた日本人の暮らしの中で磨かれてきた。あの坂本龍馬が使っていた「マイ茶碗」も登場。見て触って食べて楽しい、ごはん茶碗の鑑賞法を紹介。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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