・「Tosaygoodbyeistodiealittle」・「Justlikethebeginningofdyingforamoment」・「Solong,amigo」
(ドアボーイ)旦那探偵なんですって?うちの歌姫今度はどこにしけ込んでやがったんです?
(磐二)あれは?ああ酔っ払いですよ。
あのまま寝ちまったんで放ってあるんです。
連れの女がまだ店にいるからどうせそれが連れて帰るでしょうよ。
見かけませんでした?女優の原田志津香ですよ。
あのアバズレ女優。
あいつはそれの3人目の旦那でさ。
(志津香)傘!
(風間)はっ!何してるのよ!?出てってよ!
(志津香)風間帰るわよ!
(風間)はっ!
(志津香)ほら手切れ金よ!早く出して!
(風間)はい!早く出してよ!
(せきこみ)お待たせしました!飲むか?コーヒー。
(保)頂きます。
あの…大変失礼しました。
え?どうやら僕はあなたに随分ご迷惑をおかけしたようだ。
これ。
手切れ金だとさ。
失礼ですがあなたは伝道師か何かで?は?フッ…それとも仮出所中?何の事だよ?素性も知れない酔っ払いなんて拾わないでこの財布だけをここに連れ帰る事だってできたはずでしょう?なのになぜそうしなかったんです?さあな。
何だそれ?コーヒー代ですよ。
要るか。
おかしな人だな。
何の得もないのに酔っ払いを拾ってきてタダでコーヒーを飲ませるなんて。
雨の中にそのまま寝かせておけば今夜この世のクズが1人減ったんだ。
むしろその方がずっとこの世のためだったのに…。
お気付きですか?あなたって人はね本当全くどうかしてますよ!しつこいな!何をそんなにひがんでるのか知らんが自分の見てる世界が全てだと思うな!別に何の得もなくてもクズを拾ってきてコーヒーを飲ませたいと思う人間だっているんだよ。
(泣き声)ほう〜原田志津香また離婚だってよ。
えっまた?「お騒がせ女優3度目の破局」。
あら〜忙しいな。
おい1部くれ。
(ノック)失礼。
お忙しいところ。
いやその傘をお返ししに来たんです。
それから実は仕事が決まりまして一応あなたにご報告をと思いまして。
いい店ですね。
でもいい店ならお前も山ほど知ってるだろう。
ええ知ってますよ。
この1杯が10倍はするような店で浴びるほど飲んできました。
しかも女の金で。
10倍うまいのか?味は変わりませんよ。
ただより頭が腐る。
だから僕もこんなふうになっちまった。
だけど…。
だけどそんな生活とはおさらばしました。
もう僕はただのケチな勤め人ですからね。
あんなお酒は一生飲む事ないでしょう。
まあめでたい話じゃないか。
全くです。
見ていて下さい。
そのうち僕もあなたのような人間になりますから。
あなたのような…。
ハハッ…まあいいや。
すいません。
同じもの下さい。
(マスター)ギムレットですか?はい。
ここからは夕日が見えるんですね。
増沢磐二…さん?そうですが。
ふ〜ん。
失礼致します。
失礼ですがどちら様ですか?ああ。
原田志津香です。
ああ…。
よかったら掛けて下さい。
失礼致します。
コーヒー入れますね。
城崎保。
知ってるわよね?城崎?原田保。
私の夫だった男よ。
ああ。
会いたいの。
居場所を教えて。
いやあいにく知らないんですよ。
うそついたって無駄よ。
ここに出入りしてる事ぐらい分かってるんだから。
いや時々来ますけどねそういう細かい身の上話をした事がないんで。
大体その城崎っていう旧姓も今知ったぐらいですから。
私たちローズで出会ったのよ。
ローズ?キャバレーのローズよ。
私もね最初はプロデューサーに連れられていったんだけどその店の支配人って男がすぐにテーブルに挨拶に来てそれが彼だったの。
一目見て絶対に私のものにするのって思ったわ。
王子様みたいにエレガントでハンサムなんだもの。
不思議よね。
だって彼育ちは全然よくないんだもの。
みなしごだったんですって。
確か台湾かどこかで両親が早くに死んじゃって子どもの頃から働いてたって言ってたわ。
ふ〜ん。
知らなかったの?そういう話をした事がないんでね。
男ってつまらない話ばっかりするわよね。
(記者)政界進出のうわさは本当ですか?すいません同じもの下さい。
何があった?クビになりました。
何で?僕の辛抱が足りなかったんでしょうね。
まあ要するに人間ってのは常に見下す相手が必要な訳ですよ。
分かってますよそんな事。
だけどね…!だけど…工場のクズどもにクズ扱いされるの真っ平なんです。
真っ平ごめんなんですよ!そんな事か。
今すぐ工場に戻って謝ってこい。
お前なんか雇ってもらえるだけでもありがたいと思えよ。
どういう意味です?そのままの意味だよ。
俺みたいな男は…。
クズ扱いされても当然だっていうんですか?ああそうだよ。
いいか。
そんな事にも耐えられなかったらなこの先どこに行ったってお前の行き場なんてないんだ。
(テーブルをたたく音)
(ドアが閉まる音)
(ノック)はい。
おお…。
夜分遅くに失礼探偵さん。
頼みがある。
僕をあなたの車で…。
横浜港まで送ってほしい。
入れ。
こ…断る訳にいきませんよ。
いいから…いいから入れ。
コーヒーは?は?コーヒーだよ。
原田家の敷地には母屋とは別に客人用の離れがあります。
志津香が離れを使う時は使用人は決して近寄らない事になっている。
だからきっと使用人たちがあれを見つけるのは明日の昼以降になる。
その…そのあれというのはつまり…。
で横浜港には何があるんだ?知り合いが台湾への船を用意してくれています。
分かった。
行くぞ。
あ聞かないんですか?僕が何をしたのかを。
それを聞いちまう訳にはいかないんだよ。
何してる?早く行けよ。
あなたのような人間になりたかった。
なりたかったんだ。
何の見返りも求めずただ自分が正しいと思う方を選ぶ事のできる人間に。
僕は今からゆっくり歩いていきます。
もし台湾なんかに逃げず警察に行くべきだと思うならどうか僕を呼び止めて下さい。
あなたに呼ばれたら僕は必ずあなたのもとに戻ってきます。
(車のドアが閉まる音)
(エンジン音)
(走り去る音)
(岸田)原田家の離れに明かりがともり浮気相手のものと思われる車が22時ごろまで止まっていたのは使用人たちが確認している。
まあとにかく女は毎晩のように男を連れ込んでいたらしいからな。
ヒモ同然とはいえ仮にも亭主だ。
我慢の限界ってもんもあったろうよ。
衝動的にお楽しみの最中に踏み込んだ。
大きな花瓶で志津香の顔をまず1撃2撃。
そしてめった打ち。
で男は?ああ?浮気相手の男ですよ。
それについては今捜査中だ。
そっちが殺してる可能性だってあるでしょう。
(机をたたく音)
(権田)殺したのは保なんだよ。
殺したから逃げたんだよ。
お前は殺人犯の逃亡幇助従犯って罪に問われる訳だ。
泣けてくるねえ。
ああ?バカが必死になって利口ぶってる顔が泣けてくるっつってんだよ。
(殴る音)
(遠藤)増沢磐二君かね?はい。
あ〜あ〜こりゃまた随分こっぴどくやられたようだな。
弁護士の遠藤だ。
君の弁護を引き受けるよう指示されてきた。
一体誰に?それは明かせない。
依頼者の希望でね。
さて君は…。
遠藤さんせっかくですけどねお断りしますよ。
えっ何だって?原田保は女を殺していない。
それにあいつが犯してもいない罪を私が承知していたという訳にはいかないんです。
いいね?慎重に答えてくれたまえよ。
君が原田保を無罪だと思うその根拠は何だい?手口が残虐すぎる。
あいつはそんな事できる男ではない。
とんだ愚か者だな君は。
百も承知ですよ。
しかしいいか。
覚えておいてくれたまえよ。
君が今その厚意を蹴り払った相手は…。
まあいい。
(足音)おい出ろ。
おい。
釈放だ。
終わったんだよ。
原田志津香殺害事件は終結した。
原田保が昨日台湾のホテルで全てを告白する手紙を書き残し拳銃で自殺した。
以上だ。
帰ってよし。
(岸田)おい。
これ以上余計な事すんじゃねえぞ。
(森田)増沢磐二さんですね?「東亜タイムス」の森田といいます。
よかったら車でお送りします。
いやねおかしいと思いませんか?増沢さん。
あなたが釈放されるというのに新聞各社は一社たりともここへ来ていない。
今朝各紙が原田保の自殺を報じました。
しかしそれに充てられたスペースはたったこんなもんです。
見事に各紙ともまるで示し合わせたように。
ピタリと蓋がされたんですこの事件には。
それほどの力を持つ何者かによってね。
殺された女の父親か?そうです原田平蔵の事です。
確か新聞社と出版社持ってたよな。
去年なんとテレビ局までぶっ立てちまいました。
次の衆院選に出馬するのをご存じですか?原田平蔵が?ええ。
あるいはですよそれほど原田平蔵が今スキャンダルを潰したがっているとすれば原田保の自殺ってのも怪しくなってきませんか?増沢さん。
釈放祝にちょいと寄り道していきますか?
(司会)皆様原田平蔵が参りました。
盛大な拍手でお迎え下さい。
(拍手)
(平蔵)皆さんようこそいらっしゃいました。
原田平蔵であります。
(拍手)まず今日この場にこのような格好で参りました事をおわびします。
ご存じの方もあるかもしれない。
身内に不幸がありました。
フフフ…。
か〜っ役者だねえ。
(平蔵)だが皆さん今私はどんなにつらい事があっても休む訳にはいかんのです。
なぜなら私の背中にはほかでもない皆さんのこの国の将来未来が懸かっておるのです!
(拍手)
(譲治)いいぞたぬきおやじ!これから国を動かそうって人だ。
そうでなくっちゃいけねえや。
いや頼もしい!原田先生あんたは既に大した政治家だ!
(手をたたく音)ありがとう。
いや〜うれしい。
私って人間はね常に正直でありたいと思っている。
だから私の心には今のあなたの言葉が胸に響く!ありがとう!いやありがとう!
(拍手)いや〜ありがとう!皆さんありがとう!ありがとう!
(拍手)
(保)「台湾の鹿港という街の小さなホテルでこの手紙を書いています。
僕を追ってきた男たちが既にドアの向こうにたどりついているらしい。
どうやら僕にはもうあまり時間がないようだ。
あなたに多大な迷惑をかけた事をひと言おわびしたかった」。
「僕の事はどうか忘れて下さい。
ただその前にヴィクターズでギムレットを1杯注文してもらえないだろうか。
さようなら。
保」。
・はい増沢磐二事務所。
(羽丘)増沢磐二さんでしょうか?ああ。
どうも羽丘です。
遅くなってすみません。
えらく道が混んでましてね。
上井戸譲治という作家をご存じでしょうか?まあ名前は。
実はその上井戸がここしばらくちょっとまずい状態になっておりましてね。
いわゆる酒浸りというやつです。
当然執筆も滞ってます。
がしかしそれ以上に心配なのは彼の夫人の事なんです。
夫人?暴力です。
酔った上井戸の暴力がそれはひどいらしいんです。
医者へ連れていくべきでしょう。
探偵じゃなくて。
いやしかしそこをあえてあなたにお願いしたいというのが夫人のたっての希望なんです。
どういう事です?一つには夫人が言われるには上井戸は医者の手に負えるような男ではないと。
もう一つは例のあなたの事件…ありましたね。
実は昔志津香さんの映画に上井戸が脚本を書いた事がありましてね。
以来原田家とは少々おつきあいもあるんです。
お気を悪くされるかもしれませんが例のあなたの原田保に対する義理立て。
夫人はそれを聞いてあなたなら信頼できると踏んだんでしょう。
(ノック)はいどうぞ。
(亜以子)愚かな女とお思いの事でしょう。
ただ私にはどうしても主人を見捨てる事はできないのです。
主人の字です。
実は主人は金曜から家に戻っておりません。
恐らくこのZという医者の所です。
主人はこの医者からお酒ではなく…その…。
麻薬ですか?このZというのはイニシャルですか?そうかもしれません。
え?あなたはこの医者の事ご存じないんですか?ええ何も。
私には何も分かりませんの。
ただ一度だけ妙な若者が明け方に主人を送ってきました。
回想
(六郎)バキュ〜ン!バキュ〜ン!あばよ。
助けてほしいとは申しません。
ただ連れ戻して頂きたいのです。
愚問かもしれませんがね連れ戻したらまたあなたが危険な目にさらされるんでは?もちろん覚悟の上です。
ただそれはあなた様にご心配頂く事ではございません。
すいません。
ちょっとすいません。
ここ財前病院でいいんですよね?
(六郎)病院ならやってないよ。
君はそこで何をやってんだ?見てのとおり門番さ。
ならず者を見つけたらバキュ〜ン。
俺がやっつけるんだ。
回想バキュ〜ン。
あばよ。
すごいじゃありませんか。
・しかし本当にそこに入院施設があるかどうかはまだ。
いいえきっと財前先生の所ですわ。
私が見た若い男もその男に違いありません。
あなた財前をご存じなんですか?え?手を上げろ!バキュ〜ン!
(財前)六郎もう遅いから家に入りなさい。
特に今回は君は初日からほらこの量だったからね。
追加が必要なんだよ。
追加金ってやつがさ。
うるさい!金金言うな!だが上井戸君。
我々は男としてねいや人間として言いたくなくとも言わなきゃならないって時があるじゃないか。
君に追加金を払ってほしい。
10万円。
いやまず5万でも…。
ぐわ〜!敵だ敵だ!うわ〜!敵だ〜敵だ〜!六郎!撃つな撃つなよ!
(六郎)待て〜!待つんだ〜!
(財前)六郎返せ!返せ六郎!絶対撃つなよ!よしいい子だ。
手を上げな。
(銃声)こんばんは。
何だ?迎えに来ましたよ。
(譲治)悪くない。
悪くないね君。
名前を聞いておこうじゃないか。
増沢です。
増沢。
下の名前は?磐二。
ちょっと待て。
君ひょっとして志津香の事件で捕まった男か?ええ。
よくご記憶で。
原田志津香とは親しかったようですね。
まさか。
冗談言うな。
それは失礼。
ところであなたの奥さん。
何だ?あの財前病院に行かれた事があるんですか?ああ?あるよ。
何度か俺を迎えに来たからな。
着きましたよ。
着いたか。
あなた。
先生を寝室へ連れてってさしあげて。
はい。
いらんもう!ありがとうございました。
本当に何とお礼を申し上げたらよろしいかしら。
つかぬ事をお伺いしますけどねあなた初めからご主人の居場所ご存じだったのでは?何の事ですか?いやそんな気がしたんでね。
失礼。
待って下さい!もう少しだけここにいて下さいませんか?主人の状態が落ち着くまで。
どうか…。
怖いのです。
いけませんそんな事なさっては。
あなたはそんな方ではないはずです。
買いかぶりすぎですよ。
私はこういう男です。
(ドアが開く音)
(マスター)いらっしゃいませ。
(世志乃)ねえ誰があなたをそんなに傷つけたの?疑り深い目をして。
私は正直に名乗ってあげる。
あなたがこれ以上悩まなくて済むように。
高村世志乃よ。
旧姓は原田。
女優をやっていた妹がこの前死んだわ。
自分の旦那に殺されてね。
キャ〜!
(正岡)どけ。
しみったれた事務所やなあ。
稼ぎ月なんぼや?まあよくて月2万ですが。
ほう〜。
月2万やったらろくに飯も食われへんやろ。
豆でも恵んだら。
われわしの事知っとんかい?まあ余興はその辺にして。
ああ?その話というのは何なんですか?何が嫌いかてわしは人にどたま下げるんが死ぬほど嫌いでな。
およそ人の恩たらいうもんを買うた事がない。
ところがけったくそ悪い事にたった一人一生返されへん借りを作ってもうた男がおる。
(銃声)
(保)わあ〜!保〜!
(爆発音)
(正岡)シマ張るようになって2年ほどした頃か。
ほんまかボケ!どけおら〜!
(正岡)くそったれ。
一生懸けてあん時の借り返したら。
ええか貧乏人。
金輪際この件に首突っ込むなよ。
これ以上下手な事してみい。
われもここ自分で撃つはめになんで。
「独立第361国境守備隊」?戦中原田保はそこにいたらしい。
ほう。
あいつの言う事が本当なら旧姓の城崎保で記録が残ってるはずだ。
当たってみましょう。
・はい増沢磐二事務所。
もしもし?・
(譲治)俺だ上井戸だ。
まずい事になってしまった。
え?来てくれ今すぐ。
分かりましたすぐ行きます。
あ〜!何を燃やしてるんです?ああ…花を。
ご主人は?さあ。
私にはもう何も…。
奥さん!何があったんですか?主人は…。
そこに…。
ちょっとすいません。
ああ上井戸さんちょっと。
うっ…。
あっ大丈夫ですか?
(章介)先生何があったんです!?分からんよ。
先生先生!おいちょっと揺するな。
すいません。
先生…。
う…。
部屋か…。
おお来てくれたのか。
何があったんです?俺は…どうなってた?屋上の階段下で倒れてたんですよ。
それで頭から血が出てるからお宅の坊主が今医者を呼びに行ってますよ。
亜以子は?亜以子は?いやいやいや無事ですから。
恐らく部屋で休んでますよ。
そうか…。
増沢君頼みがあるんだ。
書斎のゴミ箱に書き損じた原稿を捨てた。
それを取ってきてくれないか。
書き損じ?ちょっと妙なものを書いちまってな。
それを亜以子に読ませたくない。
・
(銃声)あ〜!あ〜!キャッ…。
ち…違うんだ増沢君。
彼女が…。
亜以子が俺を殺そうとしたんだ。
(泣き声)坊主。
奥さん連れていけ。
はい。
奥様…奥様…。
(泣き声)起きろ。
あ〜何するんだ?けが人だぞ。
いいですか医者にかかって下さい。
あなた病気です。
専門的な事は知りませんがねあなた確実に病気だ。
明日にでも病院に行って本気で治療に臨まない限り何百年たったって状況改善しませんよ。
そんな不毛な時間につきあうなんざいくら金を積まれたってごめんだ!そんなにしゃべるんだ…。
知らなかった。
あ〜。
ところであれは見つかったかい?燃やしてくれ。
ここに書かれている「私の代わりに死んだ男」というのは誰なんです?誰でもない。
文学上のレトリックだよ。
あなた死んだ原田志津香と関係があったそうですね。
それか?それが君がここにいる理由か?何を言ってるんです?あなたに呼ばれたから私はここにいるんですよ。
もういい。
もういいよ。
今日はこのまま寝かせてくれ。
頼むよ。
坊主。
(ノック)奥さん。
(ノック)奥さん大丈夫ですか?信じてたわ。
あなたは必ず帰ってきてくれるって。
(ドアをたたく音)いや〜そりゃ力道山は見えないよ。
だってテレビ20メートルほど先にこれっくらいしかねえんだから。
こいつがいつも温めてっからさ早く売らないとヒヨコになっちゃう。
あそこに確かに力道山が映ってたんだと思ったらよ〜。
原田先生はすげえな。
坊主お前も拝んどけ。
原田平蔵先生が街頭テレビをお始めになったんだ。
俺は何があっても次の選挙は原田先生に入れるぜ。
あなたにお会いしたがってる人がいるの。
誰だか分かる?ひょっとしてあなたの父上ですか?私に断る権利は?あるわ。
今日のところはだけど。
明日になったらまた別の人間が迎えに来るって訳ですか。
・・「火をはく山のウワオワオワオ生れだ」・「月の赤い夜にジャングルでジャングルで」・「骨のとけるような恋をした」・「ワァーアーワァーアーアア」お前が増沢磐二か?・「ジャングルのゴムの木に」・「ひょうの毛皮をおいてきた」・「ワァーワァー」何で呼ばれたかは説明するまでもなかろうな。
まあ見当はついています。
言ってみろ。
その前に失礼ですがこの音消して頂けませんか。
・「ボンバボンバボンバボンバボンバボンバ」あなた私が原田保の無実を信じてる事がお目障りなようですが。
娘を殺したのは原田保なんだよ。
なぜそう断言するんです?あいつが自分でわしにそう言ったからだよ。
電話をかけてきたのさあの夜。
電話口でさめざめ泣きやがった。
「浮気現場に出くわし衝動的に志津香を殴り殺してしまった」。
そう言った。
もちろん「すぐに警察に自首しろ」とわしは言った。
にもかかわらずあいつはお前の所へ行き台湾へ逃げた。
逃げる事にもおじけづくと自分のこめかみにピストルをぶっ放して死んだ。
それだけだ。
お前が何故あの男の無実をやるのか知らんが残念ながらそれ以上にマシな真実などありはせんのだ。
あなたに一つお聞きしたいと思っていた事があります。
何だ?なるほど原田保は犯人であるかもしれない。
材料はそろっています。
ただ完璧ではない。
どこか奇妙ですよね?それはあなたも感じてるはずです。
それにもかかわらずあなたは事件の真相を追求する事もなく全てを闇に葬り去ろうとしてる。
それは一体何のためです?お前は新聞を読まんのか?読みますよ。
ならば見当がつくだろう。
(ため息)衆院選に出馬されるそうで。
分かっていて何を聞く?そして巨額の賄賂をもってマスコミの口を封じられた訳ですか。
お前のような小者ほどみみっちい正義を振りかざしたがる。
しかしわしらともなればそんな事は一向に恥とはせんのだ。
なぜだか分かるか?分かりませんが知りたくもありませんね。
己の使命があるからだ。
歴史に名を残す人間というのは目的の前にいちいち手段を悩まん。
(平蔵)つべこべ言わずに見ろ。
(平蔵)戦争で負けてこの国にはどでかい穴が開いた。
その穴をこれからこのテレビジョンが埋める。
かつて我々が信じるべきとされていたもの。
仁義礼節忠誠。
そういう何もかんもがあの戦争で全て灰になった。
大衆どもにはそれが不安でたまらんらしい。
一種の癖だ。
みんな血眼になって次にすがるべきものを探してる。
だがわしに言わせれば癖そのものを直せばいいのだ。
詮ない事に思い煩うのをやめただただテレビジョンを見る。
プロレスに興奮し音楽と共に踊り落語に笑えばいい。
頭を空っぽにするのだ。
ただ空っぽに。
そこにテレビジョンという風が流れていく。
悩みを忘れ笑いと興奮に満たされ…。
いやいやいやいや!正気ですか?何だと?この国の頭を空っぽにして回る?正気でそれが自分の使命だと?悪いか?ゴミが詰まるよりゃ空っぽの方がずっとマシなんだよ。
冗談じゃない。
飢えた子どもに酒を与えるようなもんですよ。
なるほど苦痛は紛れるかもしれない。
頭という頭がすぐに空っぽになるんですからね。
ただそれは人間にとってこの国にとって最も大事なものを奪い潰して回るという事…。
うるせえよ!そら!そのお前の頭こそゴミためだってんだよ!ご立派なご高説で腹が膨れんのか?お前のような男こそ100人いたってガキ一人食わせられねえんだよ。
能なしのくそったれは今すぐこの国から追放してやろうか。
ああ?バカ野郎!
(ドアが開く音)何だお前。
うちへ帰ったんじゃなかったのか?
(いびき)おい。
実はねやっと原田保の謎が解けたんですよ。
見せろ。
先にコーヒーを。
いいからいいから。
ここです。
ん?松井誠一って…。
原田保は城崎保じゃなく本当は松井誠一だったらしいですよ。
どういう事だよ?ああそりゃ松井誠一の事なんじゃないのか?松井誠一?城崎保って名前じゃなかったですか?松井だよ。
そうですか。
多分なにいちゃん引き揚げてきてから新しく戸籍作って名前変えちまったのかもしんねえな。
ほかに何かご存じの事はありませんかね?かみさん?ええ。
出征前に結婚してたらしいんです。
・はい増沢磐二事務所。
・
(譲治)よう俺だ。
(舌打ち)・今夜花火大会があるらしいな。
君も行くのか?・行きませんよ。
なら久しぶりにうちに来ないか。
遠慮しときます。
・なぜ?いや仕事があるんでね。
・大事な仕事か?そうですね。
こっちの方が大事だぞ。
・ほかに頼んで下さいよ。
原田保。
え?原田保の無実を君は信じてるんだったな。
ええ。
・俺もそう思うよ。
どういう事ですか?彼は原田志津香をやってない。
話すよ。
あの事件の事を君に話す。
(ブザー)上井戸さん。
上井戸さん。
上井戸さん入りますよ。
(いびき)上井戸さん。
上井戸さん。
よう名探偵。
何で飲むんだかね…。
ん?何で人を呼びつけておいて酒飲むんですか?フフッ悪い。
でもさ…。
亜以子がさ…。
あいつ「花火行く」って言ってさ。
それで「自分だけ行くのは気が引ける」って言ってさ。
かなわねえや。
結局俺はあいつに…。
でもいい。
それでいい。
(いびき)
(花火の音)回想
(譲治)彼は原田志津香をやってない。
ここに書かれている「私の代わりに死んだ男」っていうのは誰なんです?亜以子が俺を殺そうとしたんだ。
(泣き声)
(譲治)結局俺はあいつに…。
信じてたわ。
(譲治)かなわねえや。
あなたは必ず帰ってきてくれるって。
(ブザー)
(ブザー)増沢さん。
どうも。
ごめんなさい。
私鍵忘れて出かけてしまって。
鍵なら開いてましたよ。
まあ。
主人に締めて下さいと申しましたのに。
増沢さんはどうしてここに?いやご主人に呼ばれまして。
今お二階の方で休まれてます。
随分お酒飲んだようですけど。
まあ。
またお酒を?あなたが勧めたんじゃないんですか?私が?ご主人そうおっしゃってましたけど。
まさか。
そんな事する訳ありません。
酔ってまた適当な事言ってるんですわ。
お酒が入るとあの人はまともではなくなりますから。
ちょっと…。
いや!あなたは…あなたはどうなんです?どうかしてるのはむしろご主人よりもあなたの方なのでは?
(泣き声)私は今夜帰りません。
彼から話を聞くまでは何時になろうがご主人の酔いが覚めるまで私はここにいます。
(ノック)
(ドアが閉まる音)申し訳ない。
気付かず…。
止められなかった。
・いや〜!お疲れさまです。
(岸田)ご苦労さん。
ご苦労さん。
(佐々木)上井戸さんここは我々に任せて下さい。
(泣き声)あの人です。
あの人が主人を殺しました。
(佐々木)岸田さんお疲れさまです。
ああどうだ?かみさんは書斎。
男は居間の方です。
あとこの家の書生ってのが今日は非番で実家に戻っているそうなので迎えに行かせました。
(岸田)何だお前。
どうも。
何でお前ここにいんだよ?そいつは今洗いざらいしゃべったとこですよ。
容疑の男ってのはお前の事か?そうみたいですね。
あとは彼に聞いて下さいよ。
逃げも隠れもしませんよ。
「申し訳なかった」?はい。
あの男が私にそう申しました。
恐ろしい予感がして主人の寝室まで参りましたら…。
(泣き声)
(佐々木)増沢を連行しますか?いやあれは帰せ。
は?やつはやってねえよ。
なぜです?あの男が人ひとり殺したあとにのんきに現場に残ってる訳がねえ。
…で何なんです?ああ?何か話があって来たんでしょう?上井戸譲治の件だよ。
俺は殺しだと踏んでる。
俺はやってませんよ。
そんな事は分かってんだよ。
妻の亜以子の犯行じゃねえかってな。
証拠はそろってねえよ。
ただ取り調べをしていてはっきりと分かったんだがあの女には虚言癖がある。
俺はあんな恐ろしい女見た事ねえよ。
あの女はでたらめにうそをつきながらその自覚がない。
支離滅裂なんだよな。
あの女はお前が上井戸を殺したと言った。
回想あの人が主人を殺しました。
(岸田)恐らくあのうそはお前が…。
回想申し訳ない。
(岸田)…と謝ったのを聞いて思いついた。
あんな余計な事言わなきゃあの自殺工作はそこそこうまくいってたんだ。
(いびき)
(銃声と花火の音)
(岸田)犯行を周到に計画している。
一方で思いつきでうそをつく。
そして自分でそのうそを信じ込んでる。
化け物だよ。
(ブザー)
(岸田)異常すぎる人間ってのは不思議とまともに見える事があるもんだ。
お前ってやつを知ってなきゃあっさり罠にはまるとこだったよ。
まあそこが俺と違ってあなたの優秀な職業人たるゆえんなんでしょうね。
バカにしてんのか?お前。
いや俺はまんまと罠にはまった。
ほう。
そりゃあれだなお前。
お前もまだ若い証拠だなえ?ただはまったからこそ分かった事もある。
上井戸譲治は亜以子に殺される事分かってたんでしょう。
何だと?全て承知した上で亜以子の酒を飲んだ。
あいつはやっぱり心底亜以子にほれていたんでしょうね。
上井戸譲治はなぜ自分が殺されると?
(章介)大丈夫ですよ。
今燃やしてますから。
離婚歴はなしか。
はあ〜チクショー。
ちなみに原田保の戸籍は調べたんですか?調べた。
確かに戦後に新しく作られたものらしい。
当然原田志津香以外との結婚歴はないよ。
本名の松井誠一の戸籍は?それだよ。
どうだったんです?なかった。
なかった?うん。
残ってないって事ですか?まあ役所が言うにはどうとも言えないらしいんだがもともと東京生まれじゃなかったのかもしれんし戦争で燃えちまったのかもしれんとさ。
何だそりゃ?調べようがないじゃありませんか。
そういう事だよ。
はあ〜クッソ〜。
しかしそもそも原田保は何で台湾に逃げたんですかね?台湾語でもしゃべれたんですかね?な…何ですか?回想確か台湾かどこかで両親が早くに死んじゃって…。
もし台湾なんかに逃げず警察に行くべきだと思うなら僕を呼び止めて下さい。
(鳥の鳴き声)・誠一!・誠一!誠一!お待たせしてごめんなさい。
ようこそいらっしゃいました。
(羽丘)いやこちらこそ恐縮です。
ご加減のお悪いところ。
構いませんの。
いつまでもふさぎ込んでいてもしかたありませんわ。
どうぞ。
まあ増沢さんも。
先日は随分とご迷惑をおかけしてしまって本当にごめんなさい。
珍しいお召し物ですね。
これですか?随分古いものなのですけど。
台湾におられた頃のものですか?松井誠一という男をご存じでしょう。
原田保の本名です。
彼とあなたはかつて結婚されていたようですね。
日本統治時代の台湾で。
記録が残っていました。
ええ。
フフフッ嫌ですわそんな昔の話。
そうなんですの。
羽丘さん実は私3歳から台湾で育ちましたの。
父の経営していた会社に誠一…原田保が働いていてお互い若かったものですから…。
それは情熱的な恋を私たち致しましたのよ。
(羽丘)ほうそれは初耳ですな。
ご家族は反対されなかったんですか?もちろんされました。
ですから駆け落ち同然でしたの。
それはそれは貧しい夫婦でした。
だけどね若い娘なんておかしなもので愛する人さえそばにいればそれだけで十分に幸せなんですの。
ですけどやがて戦争が何もかもひっくり返してしまいました。
回想
(誠一)うわ〜!誠一!
(爆発音)そして夫とは…。
それっきり…。
ところが再会されたんでしょう?2年ほど前のパーティーで。
なぜやり直さなかったんです?まさか。
原田志津香様の飼い犬のような男はあれはもう私の愛していたあの人ではありませんでしたから。
でも原田保はあなたの事を愛していた。
私も既に上井戸の妻でしたわ。
関係ありませんよ。
あなたを愛していたからこそ志津香殺しの罪をかぶったんじゃありませんか。
確かに飼い犬と言われれば飼い犬です。
しかしそれはやつなりに必死で手に入れた生活であり生きるための手段だったんです。
原田保はあなたのためにその全てをなげうって罪をかぶって死んだんですよ。
せめてその事をあなたは認めてやるべきだ。
でなければやつはあまりにも浮かばれませんよ。
(ため息)ありがとうございます。
私もやっと…本当の事をお話しする決心がつきました。
志津香様をあやめてしまったのは…。
主人なんです。
お恥ずかしい話ですが主人と志津香様には関係がございました。
あの夜も主人はお酒に酔ってあの方の寝室にいたそうです。
どちらが何をしたのか細かい事は思い出せない。
ただ目を覚ますと…。
ちょっと待って下さい。
あなたその話一体誰から?主人ですわ増沢さん。
原田保は主人の罪をかぶって台湾へ逃げました。
きっとあなたのおっしゃるとおりです。
主人の罪をかぶる事で私の生活を守ろうと…。
そう考えたのでしょう。
(泣き声)作戦の練り直しだな。
(鳥の鳴き声)
(鳥の鳴き声)
私は一体何を無くしたのでしょうか。
時代と月日に押し流されるうちに
・はいもしもし増沢…。
・
(章介)ま…増沢さんですか?今すぐ来て頂けませんか?どうしたよ?あっけないほど洗いざらい自供してある。
原田志津香殺しも上井戸譲治殺しも自分がやった事だと。
「ただ悔いが残るのはあの夜2人をいっぺんに殺してしまえなかった事です」。
お帰りなさいあなた。
お帰りなさい。
よかった。
嫌な夢を見ていたの。
あなたがお帰りにならない夢。
うん。
よかった。
何もかも無くしてしまったかと…。
よかった。
俺がこんなやっかい事に関わり続けた理由はただ一つ。
原田保の無実を証明するためです。
いや分かってますよ。
そちらにも何か計算があって俺にこんなもん見せたんでしょう。
恐らく俺はご希望どおりに動きますよまんまとね。
ふざけんじゃねえぞお前。
そんな事断じて許されねえからないいな。
ちょっと便所行ってくるわ。
(シャッター音)なんてこった…。
大大大スクープだ!なんてこった…。
何だよ?本当に載せていいんですか?だから渡してるんだろ。
あなたにどこからどんな報復があるか知れませんよ。
原田保と同じような目に遭わないとも限らない。
じゃあやめるか?いや〜それは…。
ならやるしかねえだろう。
俺はもう覚悟を決めてんだよ。
今更ですがね何があなたをそこまでさせるんです?原田保ってのはそんなに大したやつだったんですか?そうじゃないんだ。
これが俺の戦い方なんだ。
いいからさっさと決めろよ。
いつにするんだ?12日だ。
12日にしましょう。
原田平蔵が初めて街頭演説する日です。
この日の朝刊にバ〜ンと載せる。
原田志津香事件の真相原田保の無実の死そしてマスコミを買収しこの事件を葬り去ろうとした原田平蔵の黒い権力。
そこまで書くか?会社ごと潰されるぞ。
構いやしませんよ。
俺だってもう覚悟を決めましたよ。
やれるとこまでやってやります。
増沢さん!結局編集長が最後の最後でおじけづきやがって原田のマスコミ買収は書けなかったんですがねでもほら。
まあまともな街頭演説にはなりゃしませんよ。
絶対に。
というかさせません。
一つどうです?え?茶色がゆで卵です。
白いのは?はあ〜。
ハハハハ…。
あれ?行っちまうんですか?お前の執念にはついていけないよ。
いやここまで来たんですから一緒にぶつけてやりましょうよ。
ちょっとは憂さが晴れるってもんです。
俺はいいよ。
増沢さん。
逃げるんですか?敵を倒さずに。
原田を倒したところでまた別の原田が現れるんだよ。
何でか分かるか?人が求めてるからだよ。
結局人間の欲望が原田のような権力者をまた生むんだよ。
だとすれば俺の敵は原田じゃない。
自分自身って事ですか?それがあなたの戦い方ってやつですか?
(クラクション)
(クラクション)
(歓声)何しに来たんだ?おら!うおっ…ぐっ…。
久しぶりやなあヘボ探偵。
(踏む音)今朝の朝刊調べはついとる。
言うたやろ?この事件に首突っ込むないうて。
退屈だなあ。
大体退屈なんだよなお前らヤクザの口上ってのはよ。
うっ…!てめえおら!工夫がねえんだよ工夫が!どいつもこいつもどっかで聞いたような能書き垂れやがって。
ちっとはてめえの頭使えってんだよ。
原田平蔵見習えよ。
あいつのさえきった悪知恵をよ。
そんなこっちゃてめえらのシマだっていつぶんどられるか分からねえぞ!このクソボケ!
(殴る音)ああ…。
原田平蔵?おい!原田平蔵が何じゃい!人の心配する前にな自分の心配せえボケ!
(岸田)お前もな。
正岡虎一傷害の現行犯で逮捕する。
何じゃおら!クソ!よせおら!ご愁傷さん。
いつから張ってたんですか?朝からだよ。
記事が出たからな。
いってえ…。
悪く思うなよ。
そもそもお前が出してきた交換条件だったろ?じゃあな。
う〜チクショー。
・はい増沢磐二事務所。
これ飲んだらとっとと帰れよ。
この間正虎が捕まったろう。
何を隠そう正虎ってのはここんとこずっと原田平蔵の犬だったんだ。
でもってそもそもこの2人の仲を取り持ったのがそう死んだ原田保よ。
お前の大事な。
一時は原田平蔵がらみの開発計画ってえと裏側の仕事は一手に正虎が引き受けてた。
またあいつがよく働くもんだから随分原田に気に入られてやがってよ。
おお近々東京にデカイ高速道路を造るって計画があんだろ。
ところが計画が正式に決まった途端原田に切られやがった。
おかげで警察も晴れて正虎に手出せるようになったって訳さ。
要するにそういうけったくそ悪い世界に俺らは住んでるってこった。
取り調べじゃお前の事さんざん殴って悪かったけどよ一番気の毒なのはお前だったな。
信じてたんだろ?あいつの事をよ。
・はい増沢磐二事務所。
(運転手)私は今からあなたがお会いになる許松勇氏に通訳として雇われてます。
(中国語)
(運転手)ご足労痛み入ります。
(中国語)
(運転手)今日あなたに来て頂いたのは原田保氏から頼まれての事です。
(中国語)
(運転手)実は原田氏は生きています。
(中国語)
(運転手)現在は別の名前を使い原田平蔵氏のご紹介で台湾人実業家の下で働いてます。
事件当日の台湾への逃亡自殺工作などは平蔵氏の計画でした。
全てうまくいきました。
ただあなたには…。
(中国語)
(運転手)大変なご迷惑をおかけしてしまったと彼は強く遺憾に思ってます。
(運転手)どうかお気を悪くなさらずお持ち帰り頂きたい。
これは原田保氏からのせめてものおわびのしるしなのです。
随分羽振りがよさそうだ。
安心しましたよ。
彼はうまく立ち回ってるようですね。
原田保は私が思っていたよりずっと器用な男だったんでしょう。
では私からも。
(ドアが開く音)私にはこれが何かは分かりませんが彼に渡すべきもののような気がして。
では私はこれで。
お待ち下さい。
一つ聞きたいのですが。
なぜ原田保はあの夜横浜港まで送る事を私に頼んだんでしょう?原田平蔵や正虎ではなくなぜよりによって私の所へ来たんでしょう?その答えはあなたがご存じのとおりです。
あなたのような人間になりたいと思っていました。
あの夜が…その最後の分かれ道だった。
あなたに会えば正しい方を選べるのではないかとそう思ったのでしょう。
(エンジン音)
(走り去る音)愚かな男です。
時代が違えば彼とはまたギムレットを一緒に飲めたのかもしれません。
さようなら。
(ドアが開く音)
(ドアが閉まる音)お元気で。
・「Tosaygoodbyeistodiealittle」・「Justlikethebeginningofdyingforamoment」・「Solong,amigo」・「Iwon’tsaygoodbye」・「Here,thereandeverywhere」・「Leaveusalonealittlewhile」
(一同)万歳万歳万歳!原田先生にも万歳!東京オリンピック開催決定万歳!・「bitterandsosweetmemoriesalwayskillthemselves」・「Maybeyoutrysinginganoldstylemelody」・「OrshouldIcry?」・「IneedmylifetobealiveuntilIdie」・「We’llsayatruegoodbyewhenitmeanssomething」・「SoIwon’tsaygoodbyetoyounow」・「Tosaygoodbyeistodiealittle」・「Here,thereandeverywhereLeaveusalonealittlewhile」2015/01/02(金) 23:15〜01:05
NHK総合1・神戸
スペシャルドラマ ロング・グッドバイ リミテッド・エディション[解][字]
5回連続で放送した土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」を大胆に再構成した「特別限定版」。私立探偵増沢磐二(浅野忠信)は、殺人容疑かけられた友の無実を証明できるのか?
詳細情報
番組内容
私立探偵・増沢磐二(浅野忠信)はある雨の日、妻にすてられた原田保(綾野剛)と知り合う。互いの心に友情が芽生えるが、その後、保は妻殺しの容疑をかけられ自殺。増沢磐二は友の無実を信じて真相を究明する…。5回連続で放送した土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」を大胆に再編集、大友良英の劇伴音楽も新曲を追加し、スピーディーかつスリリングに展開するサスペンスドラマとして生まれ変わった「特別限定版」。
出演者
【出演】浅野忠信,綾野剛,小雪,古田新太,冨永愛,遠藤憲一,吉田鋼太郎,柄本明
原作・脚本
【原作】レイモンド・チャンドラー,【脚本】渡辺あや
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
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