2015/01/16(金)更新
12月25日に公開した洋楽編に続き、今回は邦楽編。どことも違うアルバム20ベストアルバムをメジャーなものから同人系まで金田さんにセレクトしていただきました!
2014年はいつにも増して音楽の歌詞というかメッセージに耳を奪われることがほぼなくなった年だった、と言うと大げさだけど、なによりまず聴いていて体が動くか動かないかがアルバムを買う基準になった年だった。まるで学校みたいに雰囲気になってきた日本のロックフェスよりも、ひたすら快楽に忠実なダンスフェスに心を奪われたからというのもあるかもしれない。ちなみに順位はいたってシンプルに、iPodの再生回数を足して多かった順に並べてみた。
「トリックスター」
AAAのメンバーにして、SKY-HI a.k.a.日高光啓による初のソロアルバム。アルバムタイトルの名に恥じない多彩なトラックを軽々と乗りこなすスキルは若手ラッパーとしても屈指の実力を誇り、玄人筋からの評価が高いのも頷ける。SeriousとPopのバランス感覚に富んだリリックのバランスも素晴らしい。音楽シーンでも稀に見る彼の活動スタンスは、今の時代にこそ求められていると思う。
「Make you mine」
「日本の○○」という言葉は、大体の場合において褒めているようで全然褒めていない訳だけど、w-inds.のこのアルバムに関してはそのレアな例外。少なくともアジア圏でここまでジャスティン・ティンバーレイクに近づくことの出来た作品は無いのではないだろうかと思う。日本語の特性も上手く消化されていることにも舌を巻く。長いキャリアで磨き上げられたスキルに培われたライブも絶品。1位のSKY-HIのアルバムと共にいわゆる「音楽好き」にもっと聴かれるべき作品。
「桃太郎」
2014年インディーシーンの台風の目は間違いなくこのユニット。陽気なビョークとも言うべきフロントマン(水曜日のカンパネラ流に言うと主演女優)のコムアイの圧倒的な個性と、故Nujabesのレーベルhydeoutからのリリースでも知られるケンモチヒデフミの楽曲がまず語られる所でもあり実際の所魅力でもあるのだが、デビューして2年足らずで大量のPVを制作、投下するなどソーシャル時代にマッチした施策を次々と打ち出す水カン(と略される)の頭脳、Dir.Fの感性にも注目。
「planet to planet spot」
00年代以降の移り変わりの激しい日本の電子音楽家の中で、他に真似のできないポジションで独自の地位を築くDE DE MOUSEの最新作。音源データではなくhtmlデータを入れることで「少しづつ曲が増え、1年で完成するアルバム」という、USBアルバムというフォーマットを巧みに利用した、フィジカルとネットの間を突いたアイデアがナイス。アイデアだけでなく、坂本龍一の「音楽図鑑」の現代版とも言うべき内容も当然素晴らしい。
「gauche experience」
上述のDE DE MOUSEもリスペクトする、だがしかし、あまりにもマイペースで寡作なミュージシャン(もっとリリースして欲しい!)の待望過ぎるEP。誰にも真似の出来ない清浄な空気感とメロウネスは、日本における「ピュアテクノ」の正解とはこういう音ではないかと強く信じるに値する。
「スキルアップ」
ゆらゆら帝国が「空洞です」以降に鳴らされるロックってこんな感じではないだろうか。恐ろしくタイトでソリッドかつミニマルな演奏も実はかなりとてつもないのだけど、一聴すると「1+1=2」みたいな歌詞なのになぜか奥深さを感じさせるヴォーカル吉田の感性が何しろ凄まじい。彼の感性は音楽界の外にも評価されつつある(テレビ東京のバラエティー番組「共感百景 ~痛いほど気持ちがわかる あるある~」にて「最優秀共感詩」を受賞)。「ありがとうございます!」というシャウトで異常な盛り上がりを見せるライブも素敵。
「オドループ」
「ダンスロック」という、おそらく日本独特のジャンルは、あまりも「言葉」を重視しすぎたロックに身体性を取り戻す為の、無意識な揺り戻しなのではないか。実際色々騒いでいるのはほぼ音楽好きの中年だけで、若いバンドファンには圧倒的な支持を得ている訳で。それらのバンドの中でもよく聴いたのがこのフレデリック。歌詞も含めた楽曲全ての要素が徹頭徹尾「ノリやすさ(踊りやすさ)」に奉仕しているのが素晴らしい。(無論良い意味で)他愛のない歌詞ばかりだった50年代のロックンロールを聴いているような良い気分。余談だがリンク先のPVを見るとほぼ全ての人が気になるだろう女性二人の名前は「うちだゆうほ」と「アリスムカイデ」というモデルさん。
柄が大きい。このスケール感は最近の日本のロックに少ないように思える、でもこういうのが待たれていた。残念ながら未見だが、サマソニを完全にロックしたという話も納得。佇まいは完全にバンドのそれだから。1曲目の「リリック」の歌詞は、自分のようなすれっからしの音楽ファンでもグッと来た。シンプルで言っては何だけどありきたりな言葉だけで編まれた歌詞。でも深く入って来る。これは長瀬智也というヴォーカリストの力以外の何者でもないと思う。ベスト盤だけど、熱心なファン以外の人にとっては、彼らの本質を知るには最高の作品。音楽が、ロックが好きであればあるほどこのアルバムの魅力が分かるかと。「鉄腕ダッシュ」のファンにも是非聴いてもらいたい。
ヒップホップというジャンルでしか持ち得ないヤバさと面白さを、これほどまでに体現できてるという点においては、少なくとも日本では彼らがトップクラスだと思う。素敵にイカれてイカしたリリックを支える(時に食う)、世界に類を見ない天才エンジニア、イリシット・ツボイの魔術的なエンジニアリングも冴え渡りすぎ。本当に本当に残念。R.I.P.
「S.T.A.P」
音楽の側から語られる事は極めて少ないのがとても残念だけど、音ゲーと言われるゲームジャンルが、日本の、特に電子音楽&ダンス音楽を支えて来た側面は確実にある。実際海外のクリエイターにも注目されている。その中でも特に好きなクリエイター3人組によるダンスアルバム。ちなみにこの手のCDは普通の店舗ではなくM3という同人音楽の大規模なイベントで入手可能。M3は、音楽好きなら絶対一度行くべき。元気と勇気をもらえるはず。
11.E-girls『COLORFUL POP』
12.U-zhaan『TABLA ROCK MOUNTAIN』
13.柴山一幸『君とオンガク』
14.味噌汁's『ME SO SHE LOOSE』
15.V.A『舞妓はレディ・サウンドトラック』
16.東京スカパラダイスオーケストラ『SKA ME FOREVER』
17.古川麦『FAR/CLOSE』
18.ROTH BART BARON『The Ice Age~ロットバルトバロンの氷河期~』
19.Negicco「サンシャイン日本海」&「光のシュプール」
20.笠置シズ子『ブギウギ伝説』
11位以降は駆け足で。11、ただただ楽しいリア充ポップダンスアルバム。ちょっと首を傾げてしまうカバーもご愛嬌。この他愛のなさと軽さは全面支持。
12、タブラの音はどうしてこうも心を掴まれるのか。コラボ相手のラインナップもツボ。アジアの混沌的エネルギーがとんでもない方向に迸った限定ジャケは是非一度手に取って見て欲しい。
13、ビートルズ大好き!という気持ちがグイグイ前に出ているのに、しかも44歳の音楽家なのにまったくオッサン臭くないどころかもの凄く若々しいという奇跡。ヴォーカルエモい。
14、RADWIMPSは世代的にピンとこないけど、この別名義は良かった。
15、大好きなサントラ「怪盗ルビィ」に匹敵する多幸感。アイドルラップの佳曲「きついっしょ」も好事家は要チェック。
16、TOKIO「HEART」にも感じた空気感がある。「大人のロックなんて(笑)」って思ってた自分だけど、これが「大人のロック」。
17&18、細野晴臣トロピカル3部作がエレクトロニカ&フォークトロニカ経由で、それぞれ北半球と南半球を回って日本に再度着地したような。
19位の二枚はシングルだけど特例お願いします。これらの曲が入った、間違いなく傑作だろうアルバムも、1月にリリースされるという事で…。様々な紆余曲折を経て、ついに今年見せた快進撃は感動ものだった。
最後20位、まさかこんな凄い音源がまだ眠っていたなんて!完全バージョンが収録された「買物ブギ」にも歓喜!
この記事に登場したアーティストのアルバム一覧
4.DE DE MOUSE
『planet to planet』
・not records online shop
10.GAT
『GAT03』
・DIVERSE DIRECT
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12月に入り海外のメディアが発表した「イヤーズ・ベスト」のランキングを見るたび、若干の「?」も感じましたので、「ならば!」と思い沢田太陽さんに洋楽マイベスト20アルバムを依頼!DrillSpin的にはこれで納得です。
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