今日の主役は宮城県特産の「焼きハゼ」。
地元のお雑煮には欠かせません。
上品で深みのある極上のだしがとれるんです!伝統の焼きハゼ作りその舞台は宮城県石巻。
まるまると程よく脂ののったハゼを使います。
水揚げしてすぐに焼いていきます。
よ〜く見て下さい。
ホントにとれたてなんですこれ。
まだ動いてる。
微妙な焼き具合が味を左右するため一時も火のそばから離れる事ができません。
そして1週間じっくり煙でいぶしてうまみを凝縮!東日本大震災で津波による大きな被害を受けた石巻。
家や道具全てを失いながらも「ふるさとの味を絶やしたくない」と復活させました。
思いを込めて作った焼きハゼそのお味は…。
こういう味です。
(メイナード・プラント)すごくおいしい。
大切に受け継がれてきた焼きハゼの深〜い味わいに迫ります。
澄んだきれいなおだしで。
(2人)おはようございます。
今日の主役は宮城の焼きハゼという事で。
もう年末ですからねもうお雑煮が出てきてました。
うちの食卓は結構ハゼが母ちゃんが好きでよく丸揚げとか天ぷらとかありましたけど焼きハゼでだしをとるというのは知らなかったな。
おはようございます。
MONKEYMAJIKのメイナードです。
仙台放送局高橋篤史です。
私たちのテーマ曲を歌って下さってるMONKEYMAJIKのメイナードさんが今仙台でずっと相変わらず仙台で活動してらっしゃいまして今日は仙台の食材を持ってきて下さった。
これがそうですか。
焼きハゼ。
宮城県の伝統的な雑煮に欠かせない食材なんですよ。
雑煮は宮城の人は焼きハゼのだしで頂くと。
ちょっと香りいいですか?どうぞ。
あ〜。
もうスープ。
え〜いい香り。
全然生臭くないですね。
もう香りだけでいいだしが。
もう分かる分かる。
焼きハゼでだしをとる文化九州や瀬戸内日本海側でもあるんですけども作れる人がだんだん少なくなってきてまして宮城県内でも数軒と。
焼きアゴってトビウオのだしなんかは有名ですけど焼きハゼ非常に貴重なんですね。
今回メイナードさんが訪ねて下さったんですよね。
今回の方は震災を乗り越えて焼きハゼ作りを復活させた人なんですよ。
僕が訪ねてきました。
(高橋)
メイナードさんが向かったのは石巻市長面地区。
震災で津波と地盤沈下の被害を受けた地域です
メイナードさんは震災後石巻でがれきの撤去などのボランティア活動を行ってきました
その後もチャリティーライブを開くなど積極的に被災地の支援に関わっています
僕がここに来るのは初めてだったんですけど被害の大きさを実感しました
ここでハゼの漁から加工まで手がけている人がいます
いらっしゃいました。
どうもこんにちは。
若いね。
70歳でいらして。
夫の正吾さんは水産会社を定年退職してから手伝っています
そう見えないですけどね。
この桟橋流れてきたがれきを使って地元の漁師たちが作ったものです
この2隻が榊さんの船。
一度流された後に見つかったこの船で漁を行っています
漁の始まりは朝5時半。
25キロ離れた仮設住宅から船着き場に向かいます
漁場は目の前に広がる長面浦
昨日網を仕掛けたポイントを目指します
僕も一緒に作業を見せてもらいました
さあ網を引き上げると…!?
おっいたいたいた。
体長15〜20センチのハゼ
秋の彼岸を過ぎた頃から脂がのってきます
長面浦のハゼがおいしい理由。
それは…四方を山に囲まれて栄養分豊富な水が流れ込む汽水域だからです
うわっすごい。
続々と掛かってますハゼ。
エラやヒレに網が引っ掛かるので一匹一匹外さなければいけないんですね
結構大変ですね。
これ簡単に見えますよね。
でも正吾さんには難しいんだそうです
イエイ!
この日にとれたのが200匹。
大漁でした
ハゼは鮮度がいいうちにすぐに加工します。
ここからは作業はノンストップです
串を刺すのは照子さんの担当なんですけどもまっすぐ真ん中に刺すにはコツがあります
音をよく聞いて下さい
(串を刺す音)すごいガリガリいってる。
手際よく刺してますが一つ一つ感触確かめながらやってるんですよね
一方ハゼを焼くのは夫の正吾さんの担当です
うわ〜動いてる。
焼きすぎるとだしをとった時に焦げの風味が出てしまうので。
逆に焼きが足りないと生臭くなってしまうんですね
焼きムラ出ないようにつきっきりで火の調整をします
いやいやいや。
どうもありがとうございます。
40分ほどたつと口元がこんがり茶色になります。
これがひっくり返す目安なんです。
今度は20分ほど腹側を焼いてきれいなオレンジ色に仕上げます
これをわらで結わえるのは照子さんの役目です。
7匹で一つながり。
このあといぶすとハゼが縮むので少しきつめに結わえます。
最後はわらを編んでいきます
すごくきれいな編み目でしょ
手をこすり合わせてるだけのように見えますけれども…スローで見ると親指と手のひら巧みに使ってものすごい速さで編み上げているんですよ
僕も教えてもらったんですよ。
わらがただクルクル回っているだけ
こっち…。
最後はこんなふうになっちゃう
このあとは1週間近くかけてゆっくりと煙でいぶします
ここまで一日に300匹がやっと。
丁寧に丁寧に焼きハゼに仕上げているんです
釣って外すのも技だしわらのこういうのも技だし簡単にやっているように見えてすごいですね。
本当に簡単に見えるんですけど自分でもいろいろやってみたんですけど全然駄目で。
あの火加減だってお父さんとバランスが良かったですね。
奥様との。
あの火焼くのは照子さんは苦手なのね。
2人いいコンビでしょ。
ほんと!本当に船寒くて。
朝早いもんね。
早くて熱いでしょ。
焼いてる時は。
70代ですよ。
お若いけどね頑張ってやってらして。
刺すの大変?無理?全然駄目。
あっちこっちから出て。
そうして仕上がった焼きハゼなんですが改めてご覧頂きたいのは背びれの部分ピンと立ってるでしょ。
これもう新鮮な証拠なんですね。
自らとってすぐに焼くからこその新鮮さなんですね。
これはメイナードさんがやってないな。
うまくいってるもん。
本日の専門家ご紹介いたしましょう。
NPO「スローフード宮城」の会長でいらっしゃいます若生裕俊さんです。
震災後農業漁業の復興の取り組みにもずっと関わっていらっしゃる。
若生さんこの番組3回目ぐらいですか。
よろしくお願いします。
どうぞよろしくお願いします。
このVTRどのようにご覧になりましたか?焼きハゼは地域の食文化を支える大切な食材なんですね。
震災後長面地区では焼きハゼを作れる状況じゃなくなってしまって。
他の地区で石巻や松島で焼きハゼを作っているところあるんですけども長面浦で伝統的に受け継がれてきた煙で1週間いぶすという伝統的な作り方は今回榊さんが復活してくれなければ大きな食文化そのものが消えてしまうところだったと。
同じ名前だけども製法が微妙に違うという事なんですね。
1週間いぶすというその作業が。
そこにまた味の違いも出てくると。
震災の年にNPOが呼びかけて資金を集めて網を買ったり作業小屋を立てたりというのが実現したんですよね。
焼きハゼを絶やす事はできないというのが一番大きかったのでそこだったんですけど同じように漁師である榊さんや他の皆さんが震災前の生活をもう一回取り戻して頂きたいなというそんな思いもあったのでみんなで募金を呼びかけて復活プロジェクトに取り組みました。
船とかも見つかってよかったですよね。
でも逆に言えば船しか榊さん残らなかったという事ですけど再開するのは大変だったんじゃないですか?どんな思いで焼きハゼを作っていらっしゃるのか聞いてきました。
榊さんが以前住んでいた場所に案内してくれました
石ある所。
家があった所は地盤沈下で沼のようになっているんですよね
長面浦と北上川に挟まれていた長面地区。
津波は川を遡り堤防と農地を超えて集落に襲いかかりました
住民およそ500人のうち104人が亡くなりました
震災直後の映像に照子さんの姿がありました。
家も家具も失いもう海での仕事はできないと思っていました
その後照子さんは仮設住宅に移ります。
壁に掛けられた一枚の写真。
照子さんの父乙男さんです。
津波で流されて亡くなりました
乙男さんは焼きハゼ作りの名人として知られていました。
照子さんは子供の頃から父の技を受け継いできました
父から受け継いだ焼きハゼ作り少しずつならばできるかもしれない。
そう考えるようになった照子さんはボランティアと一緒に設備を整え震災の年に700匹を作りました
じっくりとハゼをいぶす事1週間。
完成したものを見せてもらいました
こうなるまでほんとに大変ですね。
この焼きハゼを心待ちにしている人がいます。
被災した店が仮設の店舗を構える復興商店街。
ここで海産物店を営む戸田美紀さんです。
戸田さんは店を丸ごと津波で流され一時は廃業を考えていました。
その思いを変えたのは海産物が一部無傷で見つかった事でした。
どれも自信を持って選んできた品物でした
11月下旬戸田さんの店に榊さん夫婦がやって来ました
こんにちは。
どうもいつも。
どうもどうもお世話さま。
ありがとうございます。
戸田さんにとっては長年扱ってきた特別な品物です
困難を乗り越えてきた2人。
ふるさとの味を届けたいという願いでつながっています
どうもね。
ありがとうございます。
さあ焼きハゼで特別にお雑煮を作って頂きました!
水に2〜3時間つけて少し煮出すだけで十分味が出るそうです
こういう味です。
あまい。
すごくあまいんですよ。
いつも思うんですけどこんなに頑張って…。
僕ね感動しちゃって思わず日本の食文化についてずっと熱く熱く話したんですよ
ずっと早送りになってますからね。
…なければねならないと思うんですよね。
焼きハゼが深い味わいをもたらす「仙台雑煮」。
調味料はしょうゆを少し加えただけなんです
父乙男さんにも一膳供えます。
焼きハゼのだしで作るお雑煮は乙男さんの大好物でした
いただきます。
いただきます。
思いのこもった焼きハゼのお雑煮を頂きました
いろんな思いを乗り越えて奮い立たせてやってらっしゃるんですね。
一番感動したのは震災当時海も見たくないその気持ちから海行かないと落ち着かないという気持ちに戻ったのが本当にすごいなと感動しました。
そこの人間力というかパワーというのがね。
お父さんへの思いもあったんでしょうね。
榊さん震災の年はこれで一つなんですけどこれを50しか作れなかったんですけれども今年はその10倍震災の前と同じ数の500を作ろうと今頑張っているんですよ。
うわ〜すばらしい。
地元の方も自分の地元の事を季節を思い出す時に目とかそういうんじゃなくて鼻とか味とか全部で感じているんですね。
さっきからとってもいい香りがしてるの。
おだしの。
まずはこの思いのこもった焼きハゼのだしだけ味わって下さい。
本当にいい香り。
お〜!これは。
これは本当に香り嗅いで下さいとおっしゃるわけが。
これ塩分入れてないんですか?
(高橋)何も入れてない。
すごいこれは!あのね焼いたいい香ばしい香りとお魚のふくよか〜な味がします。
これねハゼのポテンシャルだけじゃなくていろんな思いが入っているからこの味になってる。
いろんな味がしますね。
焼きハゼだけなのに。
2〜3時間水につけてちょっと煮出しただけなんですよ。
なんて豊かなお味でしょう!若生さんこれは。
このだしを口にするだけで涙がこみ上げてくるっていう。
震災の年も榊さんがこの焼きハゼを復活して頂いてみんなでこの復活した焼きハゼをお披露目する会を催したんですね。
その時に口に入れた瞬間にもう涙が止まらない。
それは震災直後に先ほどVTRで流れたように榊さんはご遺族も…失って家も地域も全て失ってしまってもう海も見たくないというようなそんな状況で全て失った中からいくつもの困難を乗り越えてもう一回復活させた焼きハゼがここにこう持ってるんだって思った瞬間にもうこみ上げてきて涙が止まらない。
やっぱり食の力ってすごいなってすごく思いました。
これが無くなっちゃったかもわからないんですもんね。
いや〜すごい。
ではそのだしで作った仙台風の雑煮を召し上がって頂きます。
このイクラの入った。
1本入ってるね。
もう既にだしでとってるのもあるんですもんね。
まずいただきますか。
何て言うかいろんな思いが心に来ますね。
あ〜いい香り。
このお雑煮食べれるんだったら毎日大みそかでもいいですね。
すごい!いろんな思いで胸がいっぱいになりますけれどこれまたお雑煮にすると最高においしいですね!日本のだし文化ってすごいなと思いました。
さっき早送りになってましたけど。
あんな手間かかって時間も。
でもあっという間でおだし頂く。
なんてぜいたくだなと思いますよね。
もう本当にこのハゼちゃんはご苦労さまでしたで。
縁の下の力持ちというかこれがないと仙台の方たちはお正月来ないのかもしれないですね。
なおかつ頭とかはらわた取らずにそのまま煮出しても臭みとかないんですよね。
榊さんのところがしっかりいぶしているからこそなんです。
これ記憶に残る味ですよ。
体が覚えちゃう。
何かやさしいお味。
ほんとに。
これは皆さんに飲んで頂きたい食べて頂きたい。
これ仙台だけ…地元の人しか食べられないんですか?これは仙台市の文学館という所で季節限定ではあるんですけども…。
仙台でも実はだしをとってお雑煮を作るという家が少なくなったのでそういう人達に知ってもらおうという事で季節限定で文学館で仙台雑煮は食べれるようになっています。
これはお店とかでも出してもらいたいですね。
仙台行ったら牛タンとこのお雑煮セットにしてもらいたい。
焼きハゼ雑煮。
牛タンだけじゃないからね。
是非皆さんに薦めたいな。
この他にも焼きハゼのように少なくはなってきてるんですがご当地の雑煮に欠かせない食材日本全国にあります。
島根県出雲市十六島町です。
11月末になると地元の人たちが海辺にやって来ます
(波しぶきの音)
この過酷な環境で何をとるのかというと…「十六島のり」と呼ばれる岩のり。
地元の雑煮に欠かせない食材なんです
しかし作り手僅か20人ほど。
貴重な食材になっています
とろけるような口溶けと抜群の風味が自慢です
一方こちらは九州・八代海の「ケタ打たせ漁」と呼ばれる伝統漁です。
使うのは「ケタ」という熊手のような道具。
これを海底に沈めて砂をかき起こしとるのは体長20センチほどの「クマエビ」。
鹿児島の昔ながらの雑煮の食材なんです。
クマエビとる船今僅か4隻しかありませんがこのエビ味は抜群だそうです
エビはまずこんがりと焼き上げます。
焼きハゼと同じようにわらで結わえて1週間ほど乾燥させると出来上がりです。
この焼きエビ一晩水に浸すといいだしがとれるんです。
島津藩でも代々食べられてきたという香り高い焼きエビ雑煮です
これもいい香り。
エビだエビだ。
これもうまいな。
おいしいですね。
焼くとかいぶすとかこの一手間でまた味が変わってくるんでしょうね。
(高橋)香りだけでおなかいっぱいですね。
高橋君だけ今ないのね食べるのが。
やっぱりエビのだしがすごく出ててその土地ならではの味なんですよね。
もっとみそとかを入れたりして雑味をあえて出してやるだしが海外なんかは多いけども澄んでるもんね。
しいたけのいい香りもしますけど。
これはすごい。
もう一つのお雑煮はどうでした?高橋君。
十六島のりの方は今目下摘み取り中という事で今日はご用意する事ができなかったんですね。
ものすごいしぶきの中でおかあさん頑張ってたから。
若生さんこういう地元の食材は本当に大切だと思いますけどこれ作り続けるのも大変ですよね。
実際榊さんの場合だとああいう困難な作業をコツコツやる作業というのはなかなか後を継ぐ人いないんですけどもでもこのままだと失われてしまうのでそういうものを継承していけるような機会と場所をみんなで作っていかないといけないかなとは思っています。
作り方を知るだけでも違いますもんね。
今回は私たちも知らなかったようなこの焼きハゼ取材なさって行ってみてどうでしたか?メイナードさん。
僕音楽家15周年迎える事できますが来年で。
でも照子さんの事を考えると50年間なんですよ。
ずっとやり続けている事すばらしいなと思ってずっとこれからも頑張って頂きたいですね。
応援してます。
お父さんの見てた時代も入れたらもっと長い時間ね。
これが残っていくといいですね本当に。
若生さん。
次回の「うまいッ!」もどうぞ皆さんお楽しみに。
第610回のNHK中央放送番組審議会は2014/12/28(日) 06:15〜06:50
NHK総合1・神戸
うまいッ!「復活!伝統の味 焼きハゼ〜宮城・石巻市〜」[字]
宮城県の昔ながらの雑煮のだしに欠かせない「焼きハゼ」。宮城県石巻市で、ハゼ漁から加工まで一貫して手がける生産者を訪ね、長年受け継がれてきた味を生み出す秘密に迫る
詳細情報
番組内容
宮城県の昔ながらの雑煮のだしに欠かせない「焼きハゼ」。ハゼを新鮮なうちに串に刺し、じっくりと焼いてから一週間煙でいぶして作る伝統の食材だ。石巻市でハゼ漁から加工まで一貫して手がける榊さん夫婦に密着、深い味わいを生み出す秘密に迫る。榊さんたちは東日本大震災で自宅や作業場を失い、焼きハゼ作りを教わってきた父を亡くした。もう焼きハゼは無理と思っていたが、周囲の支えもあり復活に至った榊さんの心意気を描く。
出演者
【司会】天野ひろゆき,武内陶子,【出演】スローフードジャパン代表幹事…若生裕俊,【リポーター】メイナード・プラント,高橋篤史
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
バラエティ – 料理バラエティ
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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