クロスロード<氷の彫刻家 小阪芳史> 2014.12.27


ポーランド西部に位置する古都ポズナン。
ルネサンス様式を残すこの街で毎年世界的な競技会が開かれます。
揃いの防寒具を身にまとった世界各国の強豪たち。
その中に日本人がいます。
大きなカバンから取り出したのは…。
ノミや見慣れない工具。
そして姿を現す巨大な氷の塊。
そこにチェーンソーがうなりを上げます。
氷からアートを削り出す氷の彫刻の国際大会。
時に妖艶で時に荘厳。
しかしやがては消えていく美しくもはかないこの芸術に情熱を注ぐ男がいます。
氷彫刻の日本の第一人者。
その作品は世界で高く評価されています。
ってみんなに言われましたけど。
今回小阪さんが挑むのはギリシャ神話に登場するケンタウロス。
躍動感と繊細さを削り出す極限の難題。
硬く冷たい氷と向き合い世界の頂点を目指す険しい道のり。
刻一刻ととける氷。
迫るタイムリミットとの闘い。
より緻密にそしてより高く。
よいしょっ!氷の彫刻家限界への挑戦を追いました。
日本を代表する一流ホテルの一つそこで催される晴れの席に花を添えるのが氷の彫刻。
燃え上がる愛をあえて冷たい氷で表現する粋な演出。
透き通る氷はクリスタルガラスのような気高い輝きを放ちます。
その氷の彫刻は意外な場所で作られています。
ホテルの地下3階。
薄暗く人も車もめったに来ない駐車場の片隅に明かりのともる場所があります。
ここがこのホテルでただ一人の氷彫刻担当者小阪さんの事務所。
しかし彼がここで過ごすのはわずかな時間だけ。
上着を羽織り向かうのは隣の部屋。
更に防寒具をまといステンレスの分厚い扉の奥へ。
この冷凍室が小阪さんの仕事場。
15畳ほどのスペースはまさに氷の世界。
彫刻の材料となる氷は高さ1m重さ135キロ。
これを電動チェーンソーやノミなどで削り作品に仕上げていくのです。
マイナス7℃の密室に一日中響くのは氷を削る音だけ。
氷の彫刻を担当している小阪さんは年間およそ50もの作品を制作。
驚くのはその発想。
10月芝増上寺で開催されたイベント。
港区内の5つのホテルの氷彫刻担当者が自慢の腕を披露します。
使用できるのは高さ1mの氷ひとつだけ。
制作時間は1時間です。
この日の気温は22℃。
氷がとけるスピードとの勝負。
テーマは自由。
それぞれに思い描いたものを削りだしていきます。
この羽がここで。
これがここ。
空をテーマにツバメが飛ぶ姿を刻もうという小阪さん。
材料の氷から鳥が飛び立つデザイン。
どうやって作るのでしょう。
まず型紙を氷にあてアイスピックで下書き。
それを角ノミで削っていきます。
この下書きを両面に施しました。
続いて手にしたのはチェーンソー。
なんと氷を2枚に切断して使うのです。
もとの氷の大きさを超える造形を生み出すための大胆な発想。
しかし2枚に割れば氷は薄くなりその分もろくなってしまいます。
あっという間に削りだした2羽のツバメ。
細かい羽の部分は電動ドリルで巧みに細工。
ノミで尾の部分を削っていたそのとき…。
高い気温半分の厚さ。
それはまさにギリギリの作業。
ちょっとノミを入れると…。
ああダメだ。
折れるな。
挑戦するからこそのリスク。
しかし小阪さんはひるむことなく上へ上へと氷を積み上げていきます。
完成した5つの作品。
なかでもひと際高いのが小阪さんのもの。
氷のアートと呼ぶにふさわしい繊細さ。
そしてツバメたちが今にも空へ羽ばたくような躍動感。
それが小阪作品の真骨頂なのです。
どれがいい?
(スタッフ)技術的にはどういったところがすごいですか?普通は。
普通は。
小阪さんが目指すのは誰もが尻込みする極限への挑戦です。
この日は3週間後に披露宴を催す新郎新婦との打ち合わせ。
これはウェルカムボードで今まで飾ったものなんですけどもこれは会場の入り口に飾ったもので。
いいですとか…大丈夫ですか?東京タワーの氷彫刻を依頼されました。
早速事務所に戻って情報収集。
さまざまなアングルの写真から東京タワーのイメージを固めます。
3時間の披露宴の最中に崩れることは許されません。
限界ギリギリの高さを決めいよいよ作業開始。
より高くより繊細に。
それが小阪さんの身上。
しかし安全性や依頼者の期待に応えるという競技大会とは違った難しさがそこにはあります。
今回は東京タワーの質感を氷に刻み込んでいきます。
披露宴当日。
開演30分前に東京タワーを会場に運び込みました。
細く高い先端部分は現場で取りつけます。
最後の最後まで入念にチェック。
高さ1m20cm。
新郎新婦が招待客を迎える東京タワーが完成。
照明の光を浴びて2人の思い出のようにキラキラと輝きます。
そこへ…。
おめでとうございます。
すごい。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
すごい嬉しいです。
職業人としての充実感をかみしめるひととき。
招待客にも大好評でした。
和歌山県新宮市で3人兄弟の末っ子として生まれた小阪さん。
中学時代は剣道に熱中。
全国大会にも出場しました。
高校卒業後料理人を志し外資系のホテルに入社。
しかしいつしか修業に打ち込めなくなったのです。
将来に悩んでいたとき心を奪われたのが宴席を彩る氷の彫刻。
氷彫刻に取り組み始めた小阪さん。
しかし当時はあくまで料理人の仕事のひとつ。
そんなときプリンスホテルから氷彫刻専門で来ないかと声をかけられたのです。
その後めきめきと腕をあげ国内外の大会で入賞。
若手ナンバー1といわれるまでになりました。
休日。
小阪さんの姿は茅ヶ崎の畑にありました。
すごいねしばらく来てないけど。
今いちばんの趣味は近くの畑を借りての農作業。
休日はもちろん出勤前にも立ち寄って野菜の成長を見るのが楽しみ。
氷の男がとけて癒やされる時間です。
神奈川県の西の端に位置する山北町。
この日小阪さんはここで開かれたある競技会に出場していました。
チェーンソーをメーンに使用する木の彫刻ウッドカービング。
氷の彫刻でチェーンソーを繊細に使いこなす技術の向上にと1年半前から取り組んでいるのです。
すでに何度も入賞。
材料の違いをものともしない小阪さんの技術。
年の瀬イベントも多く仕事に追われる小阪さん。
そんななか国際大会への出場が迫っていました。
一昨年2位昨年3位と惜しくも優勝を逃しているポーランドの大会。
今一歩及ばなかった理由は?作品としての。
大会まで1週間。
小阪さんは銀座に足を運びました。
ありがとうございます。
乾杯。
この日は氷彫刻仲間との壮行会。
大会でペアを組む長峯さんに作品のテーマを伝えます。
小阪さんの極限への挑戦がいよいよ始まります。
12月ポーランド。
氷彫刻の国際大会が開かれるポズナンにやってきた小阪さん。
大会前夜最後の確認。
いつ描いたんですか?躍動感に溢れなおかつ繊細な小阪さんらしいデザイン。
細かいパーツが多い作品は気温が上がるとより難易度が増します。
特に弓矢の部分は極限への挑戦です。
今年は11か国12チームが出場して世界一を競います。
チームごとに割り当てられたステージが戦場。
およそ1トンの巨大な氷を9時間かけて削ります。
気温4℃と暖かく悪条件のなか競技スタート。
まずは小阪さんの真骨頂高さを出すため氷を積み上げます。
今回挑むギリシア神話のケンタウロスは半分が人で半分が馬。
先に中心となる馬の胴体部分を作っていきます。
やがてその姿が浮かび上がってきました。
続いて人の胴体部分。
ここまでは順調。
ライバルたちが高さのない作品を作る一方小阪さんたちは人と馬とを合わせる作業。
この時点で高さ2m以上。
さあいよいよ今回の最難関弓矢の部分に取りかかります。
無情の雨で氷がとけ始めました。
最も細く繊細な弓矢の部分。
果たしてそれが作れるのか?苦渋の決断。
小阪さん突然自分の手を見て何かを作り始めました。
突然自分の手を見て何かを作り始めました。
それは人差し指。
弓矢の代わりに天を突き上げるポーズにしたのです。
ライトアップされ9時間におよぶ競技もあと1時間。
残すは躍動感をかもし出す馬の左後ろ脚のみ。
小阪さんラストスパートで細い脚を削りだしていきます。
あぁ!なんと右後ろ脚が折れてしまったのです。
模様にしちゃいますか。
模様にしちゃいましょう。
思わぬロスで残り時間10分。
小阪さん最後の脚を削り続けます。
常にいっそうの高みを目指す極限への挑戦。
ギブアップするわけにはいかないのです。
最後の脚を押し込んだところで…。
いやぁ…。
幕を閉じた9時間におよぶ苦闘。
その結果は…。
9時間の死闘を終えた氷の彫刻国際大会。
ひときわ高く躍動感に溢れ繊細さもあわせ持つ小阪さんの作品。
今回は残念ながら入賞は逃しましたが『ケンタウロス』の天を突き上げる指は極限に挑む彼の生き方そのもの。
まあ今後自分自身ももっともっと技術を上げて成長していきたいし後輩にもその技術を伝えていきたいと思ってます。
氷の世界で熱い情熱を燃やす小阪芳史さんを応援します。
2014/12/27(土) 23:28〜23:58
テレビ大阪1
クロスロード<氷の彫刻家 小阪芳史>[字]

氷の彫刻家、小阪芳史が登場。国内はもとより世界に飛んで氷と格闘し続ける小阪の軌跡と、世界への挑戦を追った。

詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
小阪芳史はグランドプリンスホテル高輪で働く会社員。このホテルで行われる宴会やイベントで供される氷彫刻をたった1人で担当している。氷の彫刻に魅了された小阪は、めきめきと頭角を現し、国内大会でも入賞を重ね、ついには、世界に挑戦していく氷の彫刻家となった。番組では、国内はもとより世界に飛んで氷と格闘し続ける小阪の軌跡と、世界への挑戦を追った。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
音楽
【エンディングテーマ】
「クローゼット」
Superfly(ワーナーミュージック・ジャパン)
ホームページ

http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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