北斗七星,こぐま座と訪問者 

 この季節,午後8時頃,空を見上げると北斗七星が天頂近くまで昇りつめ,ひしゃくのますがこぐま座をすくいとろうとしているように見える。上の写真は,昨年の春話題になった百武彗星の最接近の日に撮影したものである。彗星の尾は,この写真では入り切らないほど長大で神々しくさえ思えた。実際の星空を眺めて,その大きさを実感していただければ幸いである。
 実は,写真を撮り終え,帰ろうとしたとたん悲劇が起こった。車のバッテリーがあがってしまったのである。望遠鏡のガイド用に,使い切ってしまったのだ。他の車が通りそうな道路まで5kmほど歩かなければならない。朝になったら助けを呼ぼうとあきらめて,ふて寝をすることにした。3月とはいえ,山の気温は低く,零度以下であったろう。暖をとることもできず,「彗星の撮影後凍死!」の新聞記事が頭をかすめた。そして, 1時間が経過した頃,,ふと,あるアイデアがひらめいた。 (来週に続く)

写真データ 
 1996.3.26  AM1:20〜1:25 35mm F2.0(2.8に絞る))フジカラーASA800ネガフィルム
 撮影地 福島県吾妻小富士付近

 
春の星めぐりのページへ 夏の星めぐりのページへ
  トップページに戻る    つづきのページへ

こぐま座と北極星

 北斗七星を含む「おおぐま座」と,北極星を含む「こぐま座」は,春から夏にかけて北の空に見られる星座です。

 ギリシア神話によれば,この熊は,大神ゼウスに見そめられたニンフ(妖精)カリストと,その子アルカスの姿とされています。
 ゼウスの妻ヘラのうらみをかって大熊にかえられた母カリストを,それと気づかずに槍(弓)でしとめようとしたアルカスをあわれんだゼウスが,息子も小熊の姿にかえ,天にあげて星座にしたのだといわれています。 

 北極星は,こぐま座のしっぽの先にあたる場所で輝く,淡い黄色みを帯びた2等星です。地球の自転軸の付近に位置しているため,ほとんど位置をかえることなく,北を指し示す星として有名です。西洋では極の星という意味の「ポラリス」「ポーラスター」,中国では,「北辰(ほくしん・・辰は星の意味)」「天皇大帝」,日本でも「子(ね・・・北の意味)の星」「北の一つ星」などと呼ばれていました。
 
こぐま座の星の呼び名
 また,中国では,こぐま座付近の星の列を紫微垣(しびえん)と呼び,天帝の住居ととらえていました。
 ところが,その中でもっとも重要であるはずの「帝星」と呼ばれていたのは,現在の北極星ではなく,β星のほうでした。この星に付けられている「コカブ」というのは,「北の星」という意味です。
 これは,天の北極が約2万6000年の周期で移動していくためで,今から2000〜4000年前は,こぐま座のβ星のほうが天の北極に近かったのです。

 実際の北極星は,距離約430光年にある星で,距離のわりに明るく見えることから,太陽と比べても大型の恒星であることがわかります。中口径以上の望遠鏡でみると,9等の伴星がすぐそばに寄り添っているのを見ることができます。