起業家論からエンジニア35歳定年説、地方創生まで…村上福之かく語りき【30分対談Liveモイめし】
2015/01/15公開
『ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。今回のゲストは、弊誌連載でもおなじみのクレイジーワークス代表取締役総裁の村上福之氏だ。
独自の起業家論からエンジニア35歳定年説、さらには今最も関心があるという地方創生の構想まで、村上氏が語りつくした。
株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
村上福之氏(@fukuyuki)
パナソニックの組込みエンジニアを経て独立。スマートフォン向け電子書籍や音楽配信事業を行っていたが、まじめに運営する前に売却。『アルファブロガーアワード2010』受賞。手数料が限りなくゼロに近い謎の寄付活動が趣味。PayPalで募金を集め、フィリピンやタイなどの国内外の被災地に数百~1000万円もの寄付をしたことも。2012年、自著『ソーシャルもうええねん』を出版
右も左も「社長」の時代に「総裁」就任
赤松 すっかり定着しましたけど、いつから「総裁」になったんでしたっけ?
村上 2006年くらいですかね。当時は第2次起業ブームというのがあって、右を見ても左を見ても社長しかないっていうカオスな時代で。「社長」ってダサいよなーって思ってたんです。
そんな時代に、起業家交流会に出て名刺を交換する中で、一番熱いなと思ったのが、タリーズコーヒーの松田公太さん。あの人の名刺、「代表取締役バリスタ」って書いてあったんですよ(※編集部注:松田氏の代表就任当時)。
「代表取締役の後の役職は何でもいいんですか?」って聞いたら、「いいんだよ」って言われて。何にしようかと思った時にテレビを見たら日銀総裁がしゃべっていたから、かっこよくない?ってことで「総裁」にしたんですね。
赤松 ああ、日銀総裁から取ったんですね。
村上 「代表取締役デバッガー」でも「秘書」でも良かったんです。「総裁」の後、一時期「代表取締役ニート」とかやってたんですけど、総務省の定義だとニートって34歳以下なんですよ。で、34歳超えちゃったんで、また「総裁」に戻しました。
Webエンジニア人生の始まりはオーストラリア
赤松 総裁はもともと組込み系のエンジニアをやっていたそうですが、いつからWebのエンジニアに?
村上 最初に始めたのはオーストラリアへ行った時ですね。
赤松 確か、永住権を持っているんですよね?
村上 持ってます。もともと永住権のためにWebエンジニアになっちゃったんですよ。オーストラリアで永住権を取るための定義に「半年以上無職じゃダメ」っていうのがあって、何でもいいから仕事を探そうと思って。
当時ケアンズにいたんですけど、組込みエンジニアの求人を探しても、当たり前ですけどないですよね、そんなの。だってオーストラリアはそもそも家電メーカーのない国ですから。「カメラのエンコーダーとか作らせたら神ですよ」とか言っても通じない。
仕方ないから、その時通っていた語学学校でWebのエンジニアやらせてくださいって言ったんです。社内のデータベースから何から、何でもできますって言って、その足で本屋へ行って「How to install Apache」みたいな本を買いました。何も分からないところから。それがWebエンジニア人生の始まりです。
赤松 そもそもなんでオーストラリアへ行ったんでしたっけ?
村上 嫁と離婚しまして、すごく人生に疲れていたんですよね。それで「世界に飛び出したい!エンジニアといえばアメリカだ!アメリカへ行こう!」と。
でも天王寺の留学センターでおばちゃんに話したら、「あなたはアメリカじゃダメ。オーストラリアに行きなさい」って言われて勝手にオーストラリア行きのプランを組まれたんです。後で聞いたら、オーストラリア留学の方がおばちゃんに入る利益が高かったからのようで……。
赤松 おばちゃんの利益のためにオーストラリアを選択することになったんですね。で、永住権を取ろう、と?
村上 暇だったからです。僕、一応真面目にエンジニア人生送ってたんで、遊び下手なんです。観光地巡りとか全然楽しくなくて。コードを書いていて感動することはあっても、エアーズロックを見ても感動しない。
で、何かないかと思った時に、バックパッカーに「オーストラリアにいて何が一番すごい?」って聞いたら、永住権と言われて。移民局や裁判所へ行って片言の英語で申請したら証明書が必要と言うんで、パナソニック時代の部長さんにレファレンスを書いてもらいました。「SDカードのDSPとかドライバ全部書いたすごい奴」って書いてもらえて、そうしたらすんなりもらえました。やっぱり手に職を持つのは大事ですよ(笑)。
エンジニアは嘘をつくのが嫌い?
赤松 手に職、ね。で、今はニートでしたっけ?(笑)
村上 ほぼニートですね。スマホのバブルが弾けたあたりでなんか飽きちゃったので。
赤松 でも、あのころはいろいろと作ってましたよね?『ameroad』でしたっけ?
村上 『ameroad』は当時話題になっていた『Gumroad』をもとにしたネタなんですけど、その前に電子書籍や音楽配信のサービスをやってまして。でもあまり運用できていなかったんで売ってしまったんですよ。スマホの音楽配信はもうダメだろうと思ったので。
赤松 今持ってればねえ、電子書籍。
村上 いや、難しいんじゃないですかね。電子書籍はコンテンツを集めるのが大変なんで。NTTさんがやっている『コミックi』という配信サービスの裏方を3、4年やってたんで分かるんですけど、難儀なんです。今は儲からない。
赤松 でも、事業を売るのは大変じゃないですか?
村上 大変ですね。契約書で揉めたりとか。相手の会社がコンプラしっかりしてると、資産価値やらなんやら言われるんですよね。もともと課金してないしユーザーをそれほど集めていたわけでもないから、「資産価値なんてねーよ」って言いたくなるんですけど。
赤松 それを言ったら売れないでしょう(笑)。
村上 ないことをあるように書くのが嫌いなんで。嘘つくの嫌いなんで、いろいろ大変なんですよ。エンジニアは嘘つくの嫌いな人が多い……いや、そんなことないか。ベンチャーも嘘つく人多いですもんね。
赤松 ベンチャーのあれは嘘じゃなく、夢なんで(笑)。
村上 あぁ、確かに(笑)。夢をVCに売るのが経営者ですもんね?
赤松 そういえば、総裁も一昨年くらいに上場することを目標に置いている年がありましたよね? あれはどうなったんですか?
村上 あまりにも暇なんで上場とか面白いよなーとか思ったんですけど、なんでやる気なくなっちゃったんだっけなあ。最近は僕の人生どうなるんだろうっていつも考えてますよ。
「社会と文化に貢献しない起業家はよくない」
「社会や文化に貢献しない商売人には価値がない」と持論を語る村上氏(左)
赤松 でも、震災などがあるたびにサイトを作って募金活動をしたりしてるじゃないですか。すごい影響力ですよね、あれだけ集まるのは。
村上 何であんなに集まるんでしょうね。普通に人さまの年収くらい集まったりしますからね。でも、困っている人が本当にいるんで、家がなくなって避難している人とか見ると、何かしないといかんよなって思いますよね。僕の実家はバブルの時に家を建ててローンがカオスになっちゃったんで、家はすごく苦労して手に入れるものというイメージがあるんです。だから、災害とかで家を飛ばされている人を見ると、「これはシャレにならないよなー、何かできないかなー」って。
あと、自分のおじさんに言われたことが刷り込まれていて。「商売人は商売をしているだけではダメ。文化と社会に貢献せずに、金を儲けるだけの奴はクズだ」と。おじさんは何億円かを集めては、地元の寺を直したりしていました。
ほかにも前職でパナソニックにいたことも考え方に影響していると思います。
赤松 パナソニックは実際に人間の生活を変えてきましたもんね。
村上 実際、外資系証券会社で死ぬほど儲けた人とツイキャスを作った赤松さんを比べたら、社会を変えているのは赤松さんだと思うんですよ。ニコニコにしたって、ネット文化を変えたじゃないですか。社会と文化に影響を与えて、いい方向に変えている会社の方がリスペクトされるし、歴史に足跡を残しますよ。
地方創生のロールモデルを作らないと日本はヤバい
赤松 そういう意味では、総裁は社会貢献で次にどのようなことを考えているんですか?
村上 実は地方創生の事業をこっそりやろうとしていて、もうちょっとしたら動くところまで来ています。地方をどうにかしないと、日本はヤバいと思うんです。
赤松 何がダメですか?
村上 東京にいると分からないですけど、日本という国はとにかく東京だけが盛り上がっていて、後は砂漠のようになってしまう気がします。ドバイみたいですよね。
東京のお金で無理くり生きているのでは、いつか破綻しますよ。自治体の3割は消えていくと言われていますよね?それは日本だけじゃなく世界的にも同じことが言えると思います。今から地方創生のロールモデルを作らないとヤバいと痛烈に思っているんです。
赤松 それは人口の問題?
村上 格差の問題ですね。IT化が進むと情報は平べったくなりますが、格差は余計に広がるんですよ。って真面目な話をしちゃったから、(ツイキャス生放送の)視聴者が減っちゃった(笑。人間は基本的にはバカなことが好きですからね。それがインターネットのあるべき姿ですもんね。
赤松 自由な空間であるというのは大事ですよね。その分、ツイキャスも運営側としては中の秩序を保つのが難しいんですけど。
村上 どこまで運営側が介入して保つかですよね。
赤松 お互いが不快になってしまっては良くないので、そこだけは。後は自由にやってもらった方がいい。
村上 でも、モイはよくこの人数で『ツイキャス』をやれていますよね?
赤松 なかなか大変ですよ。だからこういう企画を通じてエンジニアを募集しているわけですが。でも、総裁といえば炎上、そしてそのコントロールがうまいですよね?
村上 そんなにコントロールしてるつもりはないんですけどね。人間、思ったこと言っちゃったら基本的に燃えますよ。逆に嘘つく人ほど揉めないですよね。それを人はオトナと呼ぶんですけど。僕はお子さまなので燃えるだけです。
実感を持って信じる「エンジニア35歳定年説」
赤松 でも、それだけの技術力があるんだから、いろいろやってほしいですよ。
村上 技術力があるって言っても、もうエンジニア的には古いんで。例えば「サーバサイドで遅い」となれば、オーバーヘッドになっている部分をCで全部書き直せば?とか平気で言っちゃうんで。若い人にあまりついていけていないなあと痛烈に思いますね。
赤松 そこは気にしなくていいのでは?なんでもかんでもRailsで書かなくても。
村上 僕、真面目に「エンジニア35歳定年説」を信じてる人なんですよ。新しい言語を覚えるのが大変になってきてますね。昔の言語で書くとめちゃくちゃ速いんですけど、Node.jsでとか言われると、あーしんどってなるし。赤松さんは辛くないですか?
赤松 あー私は実は1日の7割くらいはコードを書いているので……。
村上 新しいプログラミング言語も触ります?
赤松 けっこう楽しいですよ。ついつい知っていることで済ませてしまうというのはありますけどね、効率的なので。
村上 デザインパターンが昔のまんまとかいうのはありますねー。そういうの考えると、僕なんか引退してひざにネコ乗っけてポカポカ生きるべきなんだろうなーとか思うんですよね。
赤松 あれ?地方再生するんでしたよね?(笑)
村上 そうです。どっかの家の奥にいて、若い人に「どこどこでヤバい会社があるんですけど」って言われたら「わしが何とかしよう」とか言って電話でひと言言って解決、みたいな仕事がしたい。
インターネットが若者から夢を奪っている?
赤松 まぁ、夢を語ってお金を集めるのが起業家の仕事なんで、それで起業していただいて……。
村上 そう!夢は大事。
赤松 今、若い人に夢がない人が多いですからねえ。
村上 情報がありすぎると、夢がなくなると思うんですよね。例えば、ほとんどの人は結婚に対して夢を持ってると思うんですけど、【夫 スペース】でGoogle検索するとサジェスチョンで「死ね」って出てくるとかだと、夢がなくなるじゃないですか。インターネットが夢を壊しているんですよ(笑)。
赤松 情報の扱い方を学ばないうちに大量の情報に触れてしまうというのは、本当に大きな問題ですね。そういう意味では先ほどおっしゃっていた地方において、その問題はより顕著かもしれません。総裁は地方創生をどのようなやり方で考えているんですか?
村上 地方にエンジニアリングやマーケティングの知識を持っている人をもっと増やさないといけないと思っているんです。現状は東京に知識が集中していて、格差が大きい。
僕自身、今後はお金のためじゃなく、自分が死んだ時に「これやっといて良かった」と思えるようなことをそろそろやりたいですね。
取材・文/鈴木陸夫(編集部)
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