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<予算案>財政規律に緩み 財政健全化に課題残る

毎日新聞 1月14日(水)21時44分配信

 政府が14日決定した2015年度予算案は歳出膨張に歯止めがかからず、20年度に財政赤字を解消する目標の達成は一段と厳しくなった。大企業の収益改善による税収増という追い風を受け、新規国債の発行額こそ減らしたものの、抜本的な歳出改革には至らなかった。【小倉祥徳】

【ひと目で分かる】2015年度予算案の特徴

 「15年度の財政健全化目標は守れた」。財務省幹部は胸をなで下ろした。政府は新たな借金をしないで政策に充てる経費をどれだけ賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字を10年度比で半分にする目標を掲げている。15年10月の消費再増税が先送りされる一方、医療費の効率化など歳出の抜本改革は手つかず。歳出が2年連続で過去最大を更新すれば、目標達成は揺らぎかねなかった。

 懸念を払拭(ふっしょく)したのが、税収の回復だった。円安の恩恵を受けた大企業の業績が回復する中、14年度補正予算案で景気を下支えすることで、法人税収は8年ぶりの高水準を見込む。税収全体ではリーマン・ショックがあった08年を超え、当初予算ベースでは新規国債発行額は6年ぶりに40兆円を下回った。

 しかし、20年度にPBを黒字化する目標の達成は依然として厳しい。政府は、達成に向けた具体的な計画を夏までにまとめるが、昨年7月の内閣府試算では、消費税率を10%に引き上げても、20年度の目標達成には約11兆円不足する。

 麻生太郎財務相は14日の記者会見で「社会保障は給付と負担の改革を行わなければならない。税制体系全般にわたる構造改革を検討する必要がある」と述べ、歳出改革と同時に、増税を含む中長期的な税制改正の方向性を夏までに出すことに意欲を見せた。経済官庁幹部は「高齢者の窓口負担引き上げなども避けられない」と話す。

 ただ、歳出改革の壁は高い。厚生労働省は、75歳以上の保険料を軽減する後期高齢者医療制度の特例措置を16年度に廃止することを検討したが、16年夏の参院選への影響を懸念し、17年度に先送りされた。当初予算案では整備新幹線の開業前倒しが盛り込まれるなど、今春の統一地方選を控え、政府・与党からの歳出圧力が一層強まっている。自民党幹部は昨年末「アベノミクス投資プラン」として、今後5年で50兆〜70兆円程度の公共投資計画の策定を提言。「公共事業の大幅拡大に向けた動きは簡単には収まらない」(政府関係者)と警戒する声が漏れる。

最終更新:1月14日(水)23時58分

毎日新聞

 

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