表現の自由を脅かすテロは決して許さない。フランスの風刺週刊紙「シャルリエブド」への襲撃など、同国で起きた連続テロ事件に抗議する行進に仏全土で約370万人が参加し、テロに屈しない決意と連帯を示した。
卑劣なテロによって記者や漫画家、警察官、襲撃犯が押し入った商店で人質になったユダヤ人ら、17人が犠牲になった。一連の事件には国境を越えて広がるイスラム過激派の関与が指摘されている。テロを防ぎ、過激派を押さえ込むために、国際社会は連携を深めなければならない。
新聞社を襲った兄弟は中東のイエメンを拠点とする国際テロ組織の下で、銃や爆弾の扱いについて訓練を受けたという。襲撃の際はロケットランチャーや手りゅう弾を含む大量の武器を持っていた。協力者の女は今も逃走中だ。
事件の背景はわからないことが多い。まずは全容の解明を急いでほしい。欧州に広がるテロのネットワークを徹底的にあぶり出さねばならない。
イスラム過激派はここ数年、中東に広がった民主化要求運動、いわゆる「アラブの春」後の混乱に乗じて活動を活発化させている。過激思想に共鳴する勢力はアフリカに広がり、ナイジェリアでは過激派「ボコ・ハラム」が少女の体に爆弾を巻き付けて自爆させるなど手口も凄惨さを増している。
過激派の動きを一国で封じることはできない。欧米主要国はフランスでの連続テロを受けて開いた閣僚級会合で、国境管理やインターネット上の情報収集の強化を確認した。要注意人物の動きをつかみ、資金や武器の流れを断つ連携が重要だ。日本もこの輪に積極的に加わる必要がある。
懸念されるのは、今回の連続テロにより、欧州各国でイスラム教徒への反感や移民排斥の動きが強まることだ。フランスでは反移民を掲げる極右政党「国民戦線」が勢力を伸ばし、ドイツでも反イスラムを訴えるグループがデモを繰り返している。
テロ行為は大多数のイスラム教徒自身が批判する。パリの行進には、イスラム教やユダヤ教の宗教指導者も参加を呼びかけた。行進の先頭に立った40カ国以上の首脳の中には対立するアラブやイスラエルの指導者の姿もあった。
テロを許さない決意と同時に、多様な文化や宗教の共存への意思も示したといえるだろう。