去年読んだ書籍の中で最も面白かったのが『リスク・テイカーズ 相場を動かす8人のカリスマ投資家』。バフェットからカール・ローブ、レイ・ダリオといったキラ星の如きカリスマ投資家たちを描いたものなのだが、それぞれの生い立ちから現在の投資スタイルに至る内容を概観できる一冊。
で、もちろん投資の勉強にもなる内容なのだが、カリスマたちのライフスタイルについて触れられている部分がちょいちょいあり、箸休め的にとても楽しめた。というか、いかんせんカリスマたちのスケールが、己の投資と桁が違いすぎて、呆然としてしまうことの方が多いので、実生活はどんなもんなんやろという、出歯亀的な好奇心の方が満たされる。ということで、抜粋。
もちろんこういったセレブの私生活に興味津々的パパラッチ的な読み方は本書の主題ではないし、それらは置いておくとしてもとても楽しめる本なので、おすすめ。
- 作者: 川上穣
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/10/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ダニエル・ローブ
米国を代表するアクティビスト(物言う株主)。1995年にサード・ポイントを創業。こわもてで知られ、2012年には投資先のヤフーの CEO 更迭を主導した。アベノミクスによる日本の変化を期待し、ソニーやソフトバンク、IHI にも投資している。運用資産は約140億ドルに達する。
健康オタク
身長は170センチほどだろうか。背筋がすっと伸び、体型はスリムの一言に尽きる。日ごろからヨガをこなし、トライアスロンの常連というのもうなずける。健康志向を映すように、手首には活動量を計測できるはやりのリストバンドがはめられている。(28・29ページ)
Jawbone の UP かなんかを装着している模様。
ヨガと瞑想をたしなむ
「ヨガと瞑想は、脳と身体にいい影響を与える。思考が鮮明になり、記憶力もよくなる。バランス感覚が高まり、より客観的に自分を見られるようになる。いずれも投資家として成功するには大切な要素だ。」(33ページ)
後述するレイ・ダリオに感化されて瞑想を始めたという話もあるので、TM瞑想を実践している可能性が高い。
クッソ豪華な私生活
ニューヨーク中心部のマンハッタンの高級エリア、アッパーウエスト地区に8つのベッドルームがある巨大なペントハウスを構える。近郊の高級リゾート地、イースト・ハンプトンには著名建築家ラファエル・ヴィニオリがデザインした豪邸を保有する。さらに12年にはシティグループの元CEO、サンディ・ワイルから5200万ドルで巨大ヨットを購入したとも伝わった。(48ページ)
約52億円のヨットって、なんじゃそりゃ。
デイビッド・テッパー
米投資銀行ゴールドマン・サックスで低格付け社債(ジャンク・ボンド)のトレーダーとしてならし、93年にアパルーサ・マネジメントを設立。会社が倒産したり、経営が悪化したりした企業の株式や社債を買い集める手法をとる。年率3割の投資収益を上げ、13年のヘッジファンド報酬ランキングでトップ。運用資産は200億ドル程度。
もさいおっさん
ある日本のファンド関係者がテッパーと面会した際に、本人は Tシャツ、Gパン、スニーカーといういでたちだった。お世辞にもスリムとはいえず、ベルトさえしていない。
「みるからに、もっさいおっさんだった」(66ページ)
デイビッド・アインホーン
有力ヘッジファンド、グリーンライト・キャピタル創業者。2008年9月に破綻したリーマン・ブラザーズの経営不振を見抜いた。空売りの旗手。買いも手掛け、アップル株を長期保有している。96年のファンド設立以来の運用利回りは年率約20%。14年にはりそなホールディングスへの投資を明らかにするなど日本市場への関心も高めている。
つましい生活
日本人の駐在員が多く住んでいることでも知られるニューヨーク郊外のウエストチェスター郡に居住し、毎朝電車でマンハッタンのオフィスに通う。仕事はなるべく早く終わらせ、夕食はできるだけ家族ととる。2人の娘と1人の息子との時間を大切にする家庭人は、子供と同じ夜9時には就寝し、午前3時頃起きて自宅で仕事を始める日々を送っている。
モルモン教みたい。家族を大切にして早寝早起きでクソほど稼いでんだから、理想的な旦那ですわ。
プロ顔負けのポーカープレイヤー
12年は世界最高峰の大会であるワールドシリーズ・ポーカーで自己最高の3位に入った。(101ページ)
ビル・アックマン
ハーバード大学を卒表し、20代の若さでパーシング・スクエア・キャピタルを立ち上げた。経営改革を要求する「物言う株主」。日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に投資した際は CEO 交代で圧力をかけた。敵対的な姿勢も辞さず、投資先企業の経営者と衝突することも多い。
生粋のニューヨーカー
アックマンは長身で端正な顔立ちをしている。いつもクールで、表情を崩すことはほどんどない。生粋のニューヨーカーらしく早口だが、その語り口はきわめて論理的だ。頭脳明晰で、他人につけいる隙を与えない。(120ページ)
ジム・チェイノス
1985年に空売り専門のキニコス・アソシエイツをニューヨークで創業。運用資産は約60億ドルと、空売りファンドとしては世界最大級。2001年に経営破綻した米エネルギー大手エンロンの不正会計を見抜いたことで知られる。金融犯罪や投機事件の歴史に精通し、母校であるイエール大学の教鞭も執る。
体を鍛えている
ジムで鍛えているというだけ会って、アメフト選手のようにがっしりとしている。(154ページ)
多彩な顔を持つ
空売り投資家にして、現代美術の熱心な収集家でもある。(172ページ)
ここ数年は、学生時代の恩師でもあるイエール大学長の強い勧めもあり、母校で教鞭を執っている。担当する講座は「歴史における金融詐欺」。(172ページ)
講義が終われば、近所のピザ屋へ学生を誘い、ビールを飲みながら談笑する。(174ページ)
気のいいオッチャン的な一面も持ち合わせている。
エンロンの破綻を描いたドキュメンた映画『エンロン』に、インタビューで登場している。落ち着いた口調が印象的だった。映画そのものもよくできているのでおすすめ。iTunes Store でレンタルできる。
レイ・ダリオ
世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者。運用資産は約1500億ドル。米金融危機や欧州の債務問題を予見し、2011年は39億ドルの巨額の報酬を得た。世界の株式・債権・為替などあらゆる資産に投資するグローバル・マクロ戦略を採用する。FRB など世界の中央銀行がもっとも注目する投資家である。
とにかく他の投資家とは毛色が違うとても独特な人物で、ここ数年ずっと気になっている。ていうか、ぶっちゃけ崇拝している。昨年末に記事にした「30分で分る経済の仕組み」の動画を作成したのも、この人。
リンク 運用資産15兆円のカリスマ投資家レイ・ダリオ氏が語る「30分でわかる経済の仕組み」全文文字起こし - この世の果てブログ
自然体
森に囲まれたブリッジウォーター本社にダリオを訪ねると、本人はジーンズにサンダルというラフな格好だった。(183ページ)
家庭人としての一面も
自室の大きな机の背後にはアラスカだろうか、趣味であるという狩猟の旅を切り取った写真が並べられている。子供たちと一緒に収まった写真も飾られ、家族思いの一面も垣間見えた。(183ページ)
まるで哲学者
世間から隔絶されたコネティカットの片田舎のオフィスにこもり、ダリオは忍耐強く思索を重ねる日々を送る。(187ページ)
一点を見つめ、じっと考えこむ姿はまるで『哲学者」のようだ。(187ページ)
TM瞑想(超越瞑想)を40年にわたって実践
「私の人生で成功のもっとも大事な要素は何かと言われたら、それは瞑想のほかにはありません」
冗舌とはおよそいえないタイプだが、ダリオは瞑想について語るときだけはいつも雄弁になる。(213ページ)
毎朝20分間、静かに目を閉じる。
ダリオが瞑想を始めて40年以上の月日が流れたが、今でも毎朝じっとすわる日課を欠かさない。(214ページ)
この TM瞑想、個人的に今一番気になっているもので、近日中に説明会に行ってみようと思っている。理論の極地のようなグローバル・マクロ投資で勝ち続けている人物がその魅力を語るからには、単なるスピリチュアル的なおまじないというわけでもなさそうだし、広告費をもらって宣伝する必要があるような稼ぎでもないし、とにかく気になる。
リンク 超越瞑想 | 簡単, 努力が要らない, 自然, 効果的
カイル・バス
米証券ベア・スターンズや米運用大手レッグ・メイソンなどで経営不振企業に投資するディストレスト戦略に携わる。2005年まつにテキサス州ダラスに本拠を置くヘイマン・キャピタル・マネジメント設立。米住宅バブルの崩壊、欧州債務危機の到来を的中させ、ヘッジファンドで一躍有名になった。
アツいアメリカン・パトリオット
強い愛国心を持ち、米軍への揺ぎない指示を抱く。とりわけ戦地から傷ついて戻ってきた傷痍軍人にはさまざまな支援をしてきた。銃の熱烈なコレクターでもある。(224ページ)
ウォーレン・バフェット
世界的に有名なバリュー投資家。米中西部ネブラスカ州オマハを拠点にし、「オマハの賢人」とも呼ばれる。長期の成長が見込め、企業の本源的な価値に比べて割安になった企業に投資する手法で、一代で世界有数の富豪になった。投資会社バークシャー・ハザウェイの CEお でもある。主な投資先は IBM、アメリカン・エキスプレス、コカ・コーラなど。
チェリーコークを愛飲しているだの、極端な偏食家だのといった、あまりにも有名なエピソードは評伝『スノーボール』などのほうが詳しい。Kindle版がある。
文庫・スノーボール〈上〉ウォーレン・バフェット伝(改訂新版) 文庫・スノーボール ウォーレン・バフェット伝(改訂新版)
- 作者: アリス・シュローダー
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/12/26
- メディア: Kindle版
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つつましい自宅が Google ですぐ見つかる
オマハ市内から車で20分ほど行くと、郊外にバフェットの住む自宅がある。日本から見れば豪邸だが、世界3位の富豪にしてはつつましいともいえるつくりだ。駐車場のあたりにちょっとした監視カメラがあるだけで、その気になれば簡単に敷地内に足を踏み入れることができそうなぐらいだ。(254ページ)
ということで、Google で検索したら本当に簡単にバフェット宅が見つかった。本書中に掲載されていた写真と外観が同じなので間違いないみたい。Google で【buffett home google map】で検索したら一発で出てくる。ビビった。
前述した評伝『スノーボール』の著者であるアリス・シュローダー氏が、畏怖を抱きながらバフェットについて語っている。
ある種の「シグルイ」
「朝目を覚ましてから夜眠りにつくまで、頭の中には『投資』のことしかない人です」
「彼は投資にのめり込むことで多くのものを犠牲にしてきた。これもまた、一面の真実です」(265ページ)
好々爺然とした外見に騙されてはいけない、やはり極端な人なのだ。
とまあ、カリスマ投資家たちのライフスタイルに注目した読み方をしても楽しめるのだが、一つだけ注意が必要なのは、これらカリスマたちのライフスタイルを真似しても、投資成績が上がるわけではないこと。肝に銘じた上で、セレブの私生活を覗き見的な出歯亀的好奇心を満たしましょう。
目次
日本に上陸した大物 ー ダニエル・ローブ
ヘッジファンド報酬ランキングトップ ー デイビッド・テッパー
リーマン危機を見抜いた空売りの旗手 ー デイビッド・アインホーン
物言う株主の代表格 ー ビル・アックマン
中国が標的の空売り王 ー ジム・チェイノス
運用資産15兆円、世界最大級のヘッジファンド ー レイ・ダリオ
日本の「不吉な未来」の予言者 ー カイル・バス
伝説のバリュー投資家、オマハの賢人 ー ウォーレン・バフェット