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速読・精読・味読の3つを向上させる!『「読む」技術』を読みました。

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)


どんな本?

「読む」という行為がどのようなものか、そして、どのような読み方があるか、速読・精読・味読の3つの視点から書かれています。具体例が豊富なため、読みながら「読み方のレッスン」になる、そんな本です。


また、専門が文章論の大学の先生が書いているだけに、一般性が高く、内容も濃いです。


読み手の個性「読体」

書いたものに現れる個性は「文体」と呼ばれ、よく知られていますが、読むときにも「読体」というそれぞれの人の個性があります。「文体」と違って目に見える形にならないので気づかれにくいのですが、それぞれの人の性格や背景におうじた読みの偏りは確実に存在します。


書くことに対して「文体」という言葉は有名ですが、同様に、読むことに対して「読体」という言葉があります。「読体」とは、個人個人が持っている読み方の癖です。


この本を読むことで知らず知らずのうちに偏っていた自分の「読体」を知ることができます。そして、これにより、偏りのない読み方へ向け、改善へとつなげることができます。


私たちはスキーマを使って文章を理解している

まず、私たちは文章をどのように理解しているのでしょうか。その答えの1つとして、著者はバートレットのスキーマという考えを紹介しています。

読み手は文章そのものを単純にコピーしているわけではありません。その人がすでに持っている知識の枠組みを用いて、与えられた文章の意味を理解し、再構成していると考えられます。


おおざっぱに言うと、スキーマとは、この知識の枠組みのことを指します。私たちが文章を読み理解するときには、これまで培ってきた知識を援用し、意味を汲み取るのです。


たしかに、何かを読むと、真っ白な頭でイチから理解していくのではなく、これまでに見知ったことをもとに理解していくものです。スキーマはこちらを一般化した興味深い考えですね。


また、このスキーマという概念は、大意の把握を目的とした速読で活躍すると著者は述べています。


無骨な文章ほど頭に残る

読みやすい文章が記憶に留まりやすいかというと、かならずしもそうとはかぎりません。スッと頭に入る文章は、スッと頭から抜けていきます。むしろ、試行錯誤のすえにようやく理解できた難しい文章のほうが、記憶に残っていることが多いものです。


このように考えると、文章を次から次へ頭に入れる速読はかえって効率が悪いことになります。無骨な文章ほど、理解しにくく意味を汲み取りにくいですが、その分理解してしまえば記憶に長く留まり忘れにくい、こういうことがあるのです。


ただ、速読はとにかく悪で、精読が善というわけではありません。目的と状況によって、速読・精読・味読、この3つを使い分けていくのが理想でしょう。


まとめ

  • 人ぞれぞれ、読み方の癖である「読体」を持っている
  • 人は、これまで蓄積してきた知識を利用し、文章の意味を理解している
  • 読みにくい文章ほど、一旦理解してしまえば、頭により長く残る


以上、『「読む」技術』の読書記録でした。「読む」ことについて、体系的に理解したい、「読み方」を見直したい人におすすめです。


それでは、またお会いしましょう。


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