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◆梅田恵子(うめだ・けいこ) 1967年3月6日、東京・豊島区生まれ。89年入社し、主に芸能担当。主なスクープは小泉今日子結婚、広末涼子結婚など。社内屈指のテレビおたくでややネクラ。 ドラマ、アニメ、歌謡曲、80年代洋楽などがやや得意。辛口コラムでやや知られ、10年から紙面等で「勝手にドラマ評」を展開。極度の偏食で昼食はおひとりさまです。

不発だった明菜の紅白、次こそステージで

[2015年1月13日17時45分]

パチンコの新機種発表会に出席した中森明菜(写真は2010年7月13日)
パチンコの新機種発表会に出席した中森明菜(写真は2010年7月13日)

 歌手中森明菜(49)が再び歌い始めた。10年秋から体調不良により活動を休止していたが、大みそかのNHK紅白歌合戦で4年ぶりに歌声を聞かせ、先ごろその舞台裏をまとめた特番も放送された。全盛期を知る同世代としては、本丸のNHKホールで代表曲を歌う明菜を見たかったという思いと、元気な姿を見られただけで十分という、複雑なファン心理の中にいる。

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 歌手が「スケジュールの都合」を理由に「ザ・ベストテン」に出ない時代になっても、ランクインすれば必ずTBSのGスタジオからファンに歌を届けたのが中森明菜だ。ファンと番組に律義で、人と同じ条件のステージで別格の歌唱力を披露してみせる。そんな直球勝負が彼女のかっこ良さだっただけに、紅組でも白組でもない「企画枠」での出演、本丸のNHKホールではなく米録音スタジオ、なじみのない最新曲「Rojo-Tierra-」の披露など、持ち味を消す特別待遇の数々がありがた迷惑に感じられた。視聴者もこれじゃない感に戸惑ったの、歌手別視聴率も全体の14位(42・9%、ビデオリサーチ視聴率をもとに日刊スポーツが順位算出)というぼんやりした結果に終わった。

 紅白のリハーサル取材でも、演出担当者に寄せられる取材陣の質問は「違和感」に関するものばかりだった。明菜の出演を実現させた番組部長三溝敬志氏(51)自身、なんとかNHKホールで歌ってもらう道を探ったという。しかし「レコーディングのスケジュールを優先させたいという明菜さん側の意向を尊重し、スタジオから出ていただくのがいちばんという結論に達した」。目玉企画がほしいという思惑を前に、あっさり折れてしまった。

 ここ数年、外からの中継組も当たり前の光景になったけれど、個人的にはNHKホールという同じフィールドでパフォーマンスを競うのが紅白の醍醐味(だいごみ)だと思っている。結局、明菜をNHKホールに呼べなかった時点で、あらゆることが視聴者の期待からズレてしまった印象だ。選曲も、発売前の最新曲というなじみのない着地となった。三溝氏はベストテン世代。代表曲を望む視聴者の声が多いことは承知していた。しかし「NHKホールなら代表曲を歌っていただきたいが、レコーディングスタジオから今の明菜さんの思いを届けるには、最新曲がいちばんだと思う」と折れざるを得なかった。

 聖子との夢の共演も、明菜がNHKホールにいないことが壁になった。三溝氏自身「それができれば僕たちも最高」と話していた。しかし、紅白の大舞台で4年ぶりに歌手復帰する明菜と、紅白の大舞台で大トリを務める聖子。衛星生中継でやりとりをするのは負担が大きい。「互いにそんな余裕があるのか、やや疑問」と、目玉になるはずのプランも失った。

 明菜の体調の回復具合を考えれば無理も言えない。気を使う出演交渉だったことは理解できるけれど、あれもこれも譲歩して12月28日に出演決定というのは、あまりにもドタバタな気がする。結果論だけれど、互いに生煮えな出方で終わるくらいなら、NHKホールでパフォーマンスできるまで待っても良かったのではと思ってしまう。

 ついでに言えば、そんな明菜の紅白舞台裏を記録した特番「SONGSスペシャル」(9日放送)も薄味に感じた。「ファンを喜ばせたい」という型通りのコメントを一方的に拝聴している雰囲気で、ロスでの靴や帽子のお買い物を延々と映していた。紅白出演1分前の緊張の様子はこちらも手に汗握ったけれど、できればこの緊張を、ほかのアーティストと同じように、NHKホールで取材したかった。

 とは言うものの、元気そうな明菜ちゃんを見ることができ、それだけで紅白を見たかいがあった。髪形も、80年代に聖子ちゃんカットと人気を2分したゆるふわロングの明菜ちゃんヘア。「ごぶさたしております、中森明菜です」「皆さんに少しでも温かさが届くといいなと思います…」。放送事故かと思うような小声トークも相変わらずでほほ笑ましかった。歌も、やつれた仕上がりだったらどうしようとハラハラして見守ったが、イントロが流れるとスイッチが入る明菜ワールドは健在。声量がガツンと届く全盛期の歌い方ではなかったけれど、思った以上に危なげない歌声で感激した。歌い終わった後、くしゃっと笑ってカメラに小さく手を振るファン思いなところも彼女らしかった。

 特番で明菜は「いくら気持ちが急いていても、体がついてきてくれないと無理なので。気持ちはずっとありましたから」。今後も体調と相談しながらの歌手復帰になるのだろうが、再び歌い始めたことは間違いない。それだけでめでたいことだ。いい曲を届けてほしいし、再びライブのステージに立つ日を、あせらずに待ちたいと思う。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

 [2015年1月13日17時45分]

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