中島 滋隆
ナカジマ シゲタカ睡眠のリテラシー1
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私は中央労働災害防止協会(中災防)という厚生労働省所轄の所に所属しています。当協会は、健康で安全に働くために役立つ科学的なデータを提供するために、調査研究を行っています。職場にはたくさんの有害なものや危険なものがあるため、色々な分野の専門家が問題の解決にあたっています。私自身は、5年前にこの協会の「心理相談員」の名称で、働く人々の睡眠について調べています。同時に「衛生管理者」の立場からも同様なことを研究しています。
「労働態様と睡眠」。今取り組んでいるのはのはこのテーマです。大学では医学専攻で、人の行動パターンなどには臨床心理学や精神医学等で触れていましたが、睡眠については全く無関心でした。
中央労働災害防止協会の同僚からの「これからは健康を高める研究が大事」という一言が決め手になりました。また、当時いわゆる"過労死"が社会問題化してきており、幸せになるために働いているのに、なぜ死ななければならないのか、という強い疑問も心理相談員養成研修の後押しをしました。そして、働く人々にとって、睡眠がいかに大切であるかが染み入るようにわかってきました。これはとても幸運であったと思います。
さて,この連載のタイトルである「睡眠のリテラシー」は、あまりなじみのない言葉かもしれません。一言で言えば、ぐっすり眠るために、睡眠に関する様々な情報を正しく使いこなす力でしょうか。
よく眠ることは誰にとっても大切です。働く人々とっては、健康を保つためだけでなく、生産的に、そして安全に働くためにも、良い睡眠が不可欠です。にもかかわらず,国内外の競争、24時間サービスの提供、雇用の不安、職場のストレスなどが今は目白押しで、安眠が妨げられています。このような状況はすぐには変えられません。ですが、睡眠のリテラシーがあるとないとでは、日々の生活に大きな差が生まれるはずです。
この連載では、睡眠のリテラシーを高めるヒント、健康で充実した働き方のヒントについて、皆さんと一緒に探していきたいと思います。