中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「不規則な生活 なぜ悪い」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
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不規則な生活 なぜ悪い

- good

2014-10-18 14:54

健康には、規則正しい生活が大切ということ、皆さんもよく耳にすると思います。
当たり前すぎることではありますが、その理由まで考えたことありますか?

寝不足を招く

 そもそも規則正しいとは、何がどういう状態になっていることでしょうか。こう書き起こしておいて何ですが、医学的に厳密な定義は、どうやらないようです。
 一般に思い浮かべられるのは、日常の生活リズムが一定ということですよね。日常の中で区切りとなる行為は、睡眠(起床・就寝)、食事、主たる活動(通勤・就業・家事)、運動のあたりでしょうか。
 この中で、今回は睡眠に着目してみます。脳が睡眠でしか疲労解消できないこと、体の補修に働く「成長ホルモン」も睡眠中にしか分泌されないことから、睡眠が健康に直結していることは間違いありません。
 現代社会は刺激に満ち満ちています。やりたいことが多すぎて、1日が24時間では足りないと感じている方も多いことでしょう。あれもやりたいこれもやりたいと欲張れば、そのしわ寄せが睡眠時間に及ぶことは、火を見るよりも明らかです。ありがちなのは、平日は睡眠時間をギリギリまで削り、休日多めに寝て帳尻を合わせるというパターン。
 せっかくの休日が勿体ないなどという話は置いておくとして、こういうパターンは1週単位では規則正しくとも、1日ごとに見た場合は明らかに睡眠時間が不規則になっています。何が問題でしょう。
 考え方としては、たとえば飛行機を飛行ごとにコマメに点検整備するのか、1週間飛ばし続けてからまとめて点検整備するのかというものに近いかもしれません。1週間後には両方とも同じ状態かもしれませんが、週の間は随分と差がありますよね。
 ましてや、もし週単位で帳尻を合わせきれなかった場合、脳の疲労や体のガタが、どんどん蓄積していくことになります。体のガタは言わずもがな、脳の疲労だって解消しきれなければ不都合が色々と起きてきます。
 ここまでは言われなくても分かること。ただ、だったら睡眠時間さえ確保していれば、寝る時間や起きる時間が不規則だって別に構わないじゃないかという意見も出そうです。残念ながら、そうは問屋が卸しませんよというのが、今回の特集のお話になります。
 前提として知っておく必要のあるのが、私たちの体には1日単位で動く時計のようなものが備わっているということです。腹時計のことではありません。ウソのような話ですが、植物・動物を問わずほぼすべて生物に、時を刻む「時計遺伝子」というものが備わっており、哺乳類でも20種類ほど見つかっています。

体内時計に逆らうストレス

 私たちの体では、①遺伝子発現②自律神経の興奮③ホルモン分泌という体の状態を制御する3系統すべてが、ほぼ1日周期で、波のように上がったり下がったりを繰り返しています。このような上がったり下がったりを制御しているのが「体内時計」です。ほとんどすべての細胞に時計があって、親時計は脳の視床下部というところにあります。
 あまりピンと来ないと思うので、思い切り簡略化して述べます。遺伝子の観点から見ても、自律神経の観点から見ても、ホルモン分泌の観点から見ても、私たちの体は1日の中で波のように変動していて、時間帯によって状態が異なるということです。極端な言い方をすれば、朝のあなたと夜のあなたは、中身が少し違うということになります。
 これは、何かを楽にこなせる時間帯と、骨の折れる時間帯があるということでもあります。当然、楽に眠れる時間帯と、なかなか寝つけない時間帯も存在します(コラム参照)。
 体内時計は、完全に内発的に刻まれるのではなく、外界の影響によって日々ズレが生じていきます。環境の変化に速やかに適応できるよう、体内時計も調節可能になっていると書いた方が正確かもしれません。
 ともあれ、毎日同じような時間帯に同じようなことをしていると、体の方でも適応して、そうした行為を楽にこなせるような状態になってくれることになります。ただし、そうした単調な生活を現代人の脳が快く感じるかという問題は残ります。
 一方、日によって行為の時間帯や行動そのものが変わると、体は適応しきれないので、何かと骨が折れ、言うなればストレスにさらされたのと同じ状態になります。ヒドイ場合には、体内時計がグチャグチャになって3系統バラバラに動いてしまったり、上下動の振幅が小さくなったりすることもあります。
 体内時計は、人類が発生してからに限っても200万年もの途方もなく長い期間、太陽が出て明るくなれば活動する、太陽が沈んで暗くなれば休息するというサイクルに適応して発達してきています。
 夜間に活発に動く現代人の生活そのものが、体内時計の観点から言うと、知らず知らずにストレスを蓄積させるようなものだ、ということはお分かりいただけると思います。
 で、実は卵と鶏のような関係として、睡眠の取り方と体内時計の健全さとの間にも強い関連性があります。体内時計の親玉が睡眠でしか疲労解消できない脳に存在しているからであり、体内時計の調節に光が大きな役割を果たしているからでもあります。
 そして、体内時計が狂うと睡眠障害や自律神経失調や内分泌系の疾患、そして精神疾患などが現れやすくなると知られています。

時計を制御する光と食事

 前述で、体内時計に合わせて生活する方が、体へのストレスは恐らく軽いだろうという話をしました。卵が先か鶏が先か、規則正しく生活をしている人は、ほぼその活動に適した時計になっているはずです。
 人間の体内時計は、概ね25時間周期で動いていることが知られています。季節ごとに日照時間が変化する自然環境に適応するには、24時間カッチリ刻むより、少し長めのものを毎日リセットしていく方が都合良かったと考えられています。
 放っておけば1日に1時間ずつズレていくところ、暗い所にいた後で目に強い光を浴びるとリセットされ、ほぼ24時間周期になります。毎晩きちんと暗くして眠り、朝起きて太陽の光を浴びるとちょうどよいことになります。
 ただし夕方以降に似たようなことが起きると、逆に1時間延びて26時間周期になってしまいます。夜中にコンビニエンスストアなどへ行くのは要注意です。同様に夜中にパソコンや携帯電話をいじりすぎるのも考えものです。また、食事の摂取も時計に影響を与えることが知られています。
 さて、結論です。
 まずは毎日、きちんと一定の睡眠時間を確保しましょう。休日に平日より2時間以上長く寝ているような人は、普段から寝不足になっています。睡眠時間を削って眼先の何かをこなしても、体を壊しては元も子もありません。大体、睡眠不足のボーッとした頭より、ぐっすり眠った後の頭の方が何でも効率よくできるのではありませんか?
 分かってるけど眠れないんだという場合は、まず無理してでも眠りたい時刻の15時間前に起床すること、運動などをして眠りやすい状態に持っていくのが有効です。アルコールに頼るのは、睡眠の質が悪化して循環になるので、絶対にダメ。そんなことをするくらいなら、医師に相談して睡眠導入剤を処方してもらいましょう。最近は副作用の軽いよい薬が出ています。

 

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