中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「統合失調症 患者も誤解も多いんです。」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
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統合失調症 患者も誤解も多いんです。

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2014-10-16 16:43

精神疾患を抱える人が増加している近年、傍目には気づきにくい「統合失調症」も、実はがんと同程度の患者さんがいるとも言われます。

 初めて病名を聞く人にはどこの部分のどんな病気か見当もつかない「統合失調症」。とはいえ最近では、なかなかの知名度であるようです。ざっくり言えば、脳をはじめとする神経系の働きがうまくいかず、現実の正しい判断や感情のコントロール、正しい意思決定ができなくなったりする慢性疾患。つまり、前に書いた「心の病」のひとつ、ということになります(なので、「心の病って何?」という方は、そちらもご参照ください)。
 さて、そう言われてもピンと来ない、身近にはいないな、と思われた方も、ちょっと待ってください。統合失調症は、国や人種を問わず、今このときにも百人に1人がかかっているとされています。これは、医療機関で診断名がついていなくても、実は統合失調症の症状を抱えている人がかなりいるだろう、ということ。珍しい病気ではないのです。
 ところでこの統合失調症、かつては「精神分裂病」と呼ばれていました。そちらの名前のほうが聞き覚えがあるという方もいらっしゃるかもしれません。しかしこの「精神が分裂する」という響きをもつ病名が、さまざまな誤解や偏見を助長してきたとも考えられています。
 最もよくある誤解が、「理性が崩壊し、日常生活が送れなくなる」「多重人格になる」「かかったら一生治らない」「遺伝する病気」「親の育て方や環境の悪いことが原因」といったものです。これらは一部、病気の要素と関係して考えられるところもありますが、正しいとは言いがたいものです。実際に患者の人に接してみると分かるかもしれませんが、さほど重くない段階であれば、症状が出ていないときは普通の人と変わらないことも通常です。そのために、かえって発見が遅れることもあるくらいなのです。
 そこで、間違った理解を少しでも減らせればということで、平成14年に病名が変更されて「統合失調症」となりました。これは思考や行動にまとまりがなくなってしまう症状からつけられたものです。
 ただし、病名は新しくなったものの、統合失調症の症状は実はさまざま、そして原因にも以前分かっていない部分が非常に多くあるのが実際のところです。ですから統合失調症がどんな病気であるかは、患者1人ひとりの症状の特徴と全体像から。「こんな症状の出る病気」と、包括的に理解するしかないのです。
 そういう状況ですから、まだ誤解や偏見がすべて解消されたわけではありません。それだけに、患者や家族の方々だけでなく、一人でも多くの人がこの病について理解していく必要があるんですね。
 では、統合失調症について詳しく見ていきたいと思います。

症状は人によってさまざま。

 統合失調症は、診断自体が難しい病気でもあります。理由はまず、症状の出方が人により違うこと。典型的症状が、ある人には全く出なかったりもします。さらに各症状が最初から一定でないのも通常です。次第に変化することが多く、経過はその人ごとに大きく異なります。そのため、一時の症状だけを見て他の病気と間違うことも珍しくないのだとか。
 それでも一応、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)による診断基準としては、表のような症状が重視されています。各症状の説明が分かりづらいと思いますが、おおまかな捉え方として、症状を大きく3種類に分けることができます。

症状をあえて3分類すると

●陽性症状
 幻覚や妄想など、「本来あるはずのないものが現れる」という特徴をもつ統合失調症の最も典型的な症状です。
 幻覚は、視覚、嗅覚、触覚、味覚など、あらゆる感覚に現れますが、幻聴はこの病気の最たる特徴。そこにいない人の声が聞こえ、自分の悪口や噂について話してきたり、命令するといいます。
 妄想は、非現実的なことを信じ込むもの。「皆が悪口を言って嫌がらせをする」「見張られている」といった被害妄想などがよく見られます。
 その他、自分で考え行動しているのに他人から押し付けられている気持ちになったり、極度に興奮し、突然笑い出したり独り言を言い続けるなどの行動の異常も見られます。

●陰性症状
 感情の起伏や自信、ヤル気などが、低下したり失われるものです。「根気や集中力が続かない」「意欲がわかない」「なぜか仕事や家事が億劫」といった生活意欲の減退が、著しい状態で継続します。
 さらには、自分の感情に無関心、誰が話しかけても喋らない、という状態を経て、自室からほとんど出ず社会や他者との交流のない「ひきこもり」にも。心配した周囲の人に対し、急に興奮して怒鳴るなど、情緒も不安定です。
 ところがこのような症状は、体調や環境により誰にでも生じえたり、「怠け者」「努力不足」などと見られて、病気の発見が遅れることもしばしばです。本人も病気と気づかなかったり、この症状だけ強く出ると、「うつ病」とも間違われやすいようです。

●認知機能障害
 集中力、記憶力、整理能力、計画能力、問題解決能力などが著しく低下するものです。
 その結果、例えば「人の話を聞いても、単語の意味は理解できるのに、文章全体は理解できない」「比喩表現が理解できない」「難しい用語も交えて滔々と喋るのに、全体として言わんとする意味がさっぱり分からない」などの問題が生じます。
 また、意思の疎通ができないため、他者との協調性にも支障が出てきますが、中にはそれを何とも感じなかったり、思考が全く別な方向に向いてしまう人もいます。そのため近所づきあいや仕事、学業など社会生活に困難をきたしてしまうことも多いようです。

脳の中で何がおきている?

 見てきたとおり、症状が一定でなくどういうものか捉えづらい統合失調症ですが、先述のように「心の病」の一つであることは、なんとなくお分かりいただけたと思います。以前の特集で、心の病は「脳の不調」とご説明しました。なかでも統合失調症の症状が現れているときの脳の働きについては、ようやく近年、徐々に明らかになりつつあります。
 通常、脳の中では、精神活動を含むあらゆる情報が「神経伝達物質」という化学物質を介して伝達されています。しかし、その分泌や作用に過剰あるいは不足が生じると、情報伝達に混乱をきたし、さまざまな統合失調症の症状が出現すると考えられています。いろいろある仮説の中で、特に関与が注目されている神経伝達物質は、「ドーパミン」と「セロトニン」です。ちょっとややこしいので図を見ながらお付き合いください。
 幻覚や妄想などの陽性症状は、中脳辺縁系と呼ばれる神経経路を通っているドーパミンの機能が過剰であるために引き起こされています。一方、前頭葉を通る中脳皮質系のドーパミンの機能が低下すると、陰性症状や認知機能障害が現れてきます。
 また、セロトニン神経系はドーパミン神経系を抑制するように作用することが知られています。両者のバランスが崩れて中脳皮質系でセロトニンの働きが優位となった時も、陰性症状が出るとみられます。
 加えて、最近ではグルタミン酸なども統合失調症の症状に関与しているのではないかと考えられています。

発症の原因ははっきりせず

 統合失調症がそもそもなぜひき起こされてしまうのかについては、まだよく分かっていません。ただ、いくつかの原因が複合的に影響して発症するということは間違いなさそうです。ざっと挙げると、遺伝的素因、環境因子、脳の機能的・器質的変化、もともとの性格などの関与が考えられています。
 ただし遺伝的素因については、誤解されやすいので注意が必要です。例えば、遺伝子が全く同じ一卵性双生児ですら、一方が発症した時に他方も発症する割合は約50%程度。また統合失調症の人の約9割は、両親は統合失調症ではないことから、遺伝的素因は発症に関わる一因子でしかないことが分かります。病気が遺伝するのではなく、病気のなりやすさが遺伝するという程度に考えたほうがよいでしょう。
 また、統合失調症はかつて、養育環境の悪さが原因とされた時期もありました。しかし生活の仕方や環境も、あくまで発症の一要因にすぎません。ただ、日常的にストレスの多い環境は発症に影響すると考えられているのは確かです。
 脳の機能的・器質的変化というのは、主に胎児期のウイルス感染や栄養不良、あるいは出生時の無酸素状態などから脳に障害が生じ、神経系の発達・成熟に影響を与えて統合失調症の原因となる、という考え方です。とはいえ、これらもあくまで危険因子です。
 もともとの性格に関しては、一定の傾向が知られています。例えば、内気、おとなしい、神経質かと思えば無頓着、傷つきやすいなどの気質がみられ、社交性がなく孤独を好む人が多いとも言われています。もちろん、そういう性格だと統合失調症になる、という風には言えません。

完治不能な病ではありません。

 統合失調症は、突然に顕著な症状が出て始まることもあれば、数日から数週間かけて徐々に症状が強く出始めることもあります。また、症状が出ていないときは普段と変わらない生活を送る人もいるため、本人や周りが全く気付かず、何年かしてようやく分かることもあるようです。
 それでも多くの場合は、しだいに仕事、対人関係、日常生活に支障が出てきてしまいます。気づいたらいち早く精神科を受診しましょう。
 というのも、統合失調症は適切な薬物療法によって症状の管理・緩和ができる病気だからです。順調にいけば、日常生活や他の活動にも比較的集中できるようになったり、周囲が異常に気になる等の感覚が薄れ、リラックスして日々過ごせるようになってきます。
 ただし、症状は治療を始めてから少しずつ緩和されていきますので、回復兆候が現われるには数週間から数カ月を要します。さらに症状が落ち着いてきた休息期や回復期からが長丁場です。 研究では、20~30年後の時点で、全体の20~30%が快復または社会的治癒に至っています。そう聞くとちょっと気が遠くなる人もいるかもしれませんが、軽症(症状はあるが日常生活に支障ない程度)を保っている人も25~30%、あわせれば、統合失調症と診断された人のおよそ半数は社会生活を問題なく営むことができるようになっているのです。
 さらに近年では、新しい薬剤が登場したことや、薬物療法のみならずリハビリテーションプログラムなどの心理社会的療法が充実してきたことが功を奏し、早い段階から社会生活を十分に楽しめる人がいっそう増えています。

がんばらない、けど あきらめない

 上の言葉、どこかで聞いたことがあるかもしれません。ですが、統合失調症治療の合言葉にもぴったりなのです。
 統合失調症は、切り傷のように、目に見えて回復していく病気ではありません。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、じわじわ改善していくものです。
 重要なのは回復期。とくに長期にわたるところですが、何年かかったとしても、ゆったり気長に、「がんばらない」ように、やれることを焦らず増やしていくことです。逆に、「目に見えて改善したから」と自己判断で薬をやめると再発する場合も。主治医が「薬を休んでみましょう」と判断するまでは、服薬を続けることが肝心です。「まだ治らない」と不安がるより、規則正しい生活、薬の正しい服用、適度な運動を、「あきらめない」で心がけることが順調な回復への鍵なんですね。
 そして何より、長期の治療には家族や周囲の理解と協力が不可欠です。「早く治って欲しい」と願うのは当然のことですが、患者以上に家族が焦って感情的になると、患者本人もプレッシャーを感じるもの。それがストレスとなり、かえって回復を遅らせてしまうことも珍しくありません。ぜひ長い目で見守っていってください。
 「そうはいっても、思いや気持ちを一人や家族内では抱え切れない」ということもあるでしょう。そういうときは、担当医はもちろん、患者や家族を支援する団体や保健所や精神保健福祉センターなど地域の機関に相談してみることをお勧めします。本人だけでなく、周囲の人も、自分たちだけで「がんばらない」こと。だけど、「あきらめない」ことが、本人を回復へ導くというわけです。

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