中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「原因不明 もしかしてホルモンの病気」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
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原因不明 もしかしてホルモンの病気

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2014-10-16 13:57

患者数が増えているといわれるホルモンの病気。
しかし症状が分かりにくい、他の病気と誤診しやすい、などの理由もあり、気づかず放置していることが多いようです。

 よく耳にするのに、実のところ「ホルモン」がいったい何者か、きちんと理解できていない人は意外と多いのではないでしょうか。ホルモンは、脳の視床下部や下垂体、首から肩のあたりにある甲状腺や副甲状腺、膵臓の膵島、腎臓の上にある副腎、男性では精巣、女性では卵巣といった主に「内分泌腺」と呼ばれる器官から分泌される化学物質です。作られた器官とは別の器官(標的器官)まで血液に乗っていき、そこでカギが鍵穴にはまるように結合すると、特定の作用を起こすように情報を伝達するのです。こうしてホルモンは全身の器官の機能をコントロールし、成長や発達、生殖、性徴などのさまざまな過程に影響します。
 器官のコントロールに必要なホルモンはごく微量。となると、それぞれのホルモンの分泌量は正確に調節されなければなりません。そこで重要なのが、フィードバック機構。正と負の2パターンあります。
 正のフィードバックとは、あるホルモンの分泌によって他のホルモンの分泌が促され、それによって先んじたホルモンも促進され......という具合に両者が「雪だるま式」に増えていくもの。血液中のホルモン濃度が急上昇する必要があるときに見られますが、いわば安定化と逆行するもので、分娩時など限られています。
 一方、負のフィードバックとは、あるホルモンの分泌によって他のホルモンの分泌が抑制されること。これにより最終的にホルモンの血中濃度は一定に保たれているのです。言い換えると、ホルモンが原因の体の不調は、このシステムに障害が生じていることが多いというわけです。

分泌量異常は全身症状の原因に

 というわけで、「ホルモンの病気」というとき、たいていはホルモンの分泌量の異常が問題になります。多すぎても少なすぎても病気になってしまうのです。それぞれ次頁以降で具体例をご説明します。
 また、まれにホルモンの分泌量は正常でも、それに対する体の反応が低下していることもあります。症状は分泌低下の場合と似ています。
 いずれにしても、問題が生じているホルモンによって体の症状は違ってきます。どこか特定の器官に影響が出るばかりでなく、倦怠感や発汗、のぼせなどの全身症状になって現れることも多いもの。そのため原因の特定がしづらく、対応が遅れてしまうことも珍しくないのです。

分泌量が多すぎるとき。

 ホルモンが分泌され過ぎてしまう原因で最も多いのは、内分泌腺にできた腫瘍が、良性・悪性問わず、過剰なホルモンを分泌するケースです。あるいは、内分泌と本来は無関係な組織(肺など)にできた腫瘍が過剰に分泌することもあります。また炎症によって内分泌腺が破壊されて多量に流れ出したり、自己免疫異常により抗体が内分泌腺を刺激し続けて分泌過剰になることもあります。
 免疫異常の典型例が「バセドウ病」。自分の体が自分の臓器に対してアレルギー反応を起こす自己免疫疾患と考えられています。血液中の異常なタンパク質(抗体)が甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを過剰に分泌させるものです。このホルモンはもともと全身の細胞の新陳代謝を活発にする働きを持っているのですが、バセドウ病では甲状腺が腫れ、脈も速くなります。発汗、手のふるえ、動悸のほか、眼球が突き出て、食欲があるのに痩せてくることも。落ち着きがなくなったり、イライラしたり、精神的にも不安定になるようです。

成長ホルモンも出すぎはダメ

 また、子供たちになくてはならない成長ホルモンも、過ぎたるは及ばざるが如し。成長ホルモンはその名のとおり、骨格、筋肉、その他多くの器官の成長を促進します。ところが過剰に作られると、これらすべての組織で異常に活発な成長を引き起こすことに。原因はたいてい、下垂体にできた良性の腫瘍です。
 思春期前の子どもの場合は「巨人症」となり、身長が異常に伸びて手足も長くなります。思春期の遅れや生殖器の発育不良も見られます。しかしそれにも増して多いのは、骨の成長が止まって長年が経過した30・40歳代での発症。「先端巨大症」となって、骨が伸びるよりむしろ変形します。手足が肥大し、あごが発達して突き出て、声は太くかすれます。関節の痛みがあり、後に変形性関節炎の恐れも。ただし変化はゆっくりで、なかなか気づきません。
 その他、巨人症と先端巨大症どちらも、脳が圧迫されて頭痛を起こしたり、視野が狭まったり、はたまた高血圧、心臓肥大や心不全、糖尿病など、深刻な症状に。先端巨大症は「治療しないと余命が短くなる」とさえ言われます。
 さて治療ですが、血液検査で診断が確定した後、もし原因となっている腫瘍等が見つかれば、手術で取り除くことを検討します。放射線療法を組み合わせたり、手術以外の方法で腫瘍を死滅あるいは小さくする方法もあります。
 薬物療法も行われますが、症状を取り除くか大幅に緩和することしかできません。いずれにしても放置すれば病気の影響は全身に及びますので、一刻も早く治療を始めるに越したことはないのです。

分泌低下も身近なところに。

 さて一方、ホルモンの分泌低下による問題も多くあります。原因の多くは、内分泌腺が炎症や腫瘍、放射線、手術、血管の障害、感染などにより破壊されるもの。食べ物や服用した薬によって内分泌組織の機能が抑制されることもあるので、注意が必要です。まれに、先天的に内分泌組織が欠けていたり、遺伝子の異常でホルモンが作られないケースも見られます。
 ホルモン分泌低下による病気や症状もさまざまです。たとえば一部の糖尿病は、インスリンの分泌が低下することによるもの。また、典型例ともいえるのが、更年期障害です。
 更年期障害は、エストロゲンの分泌低下がもとで起こるさまざまな症状。エストロゲンは主に女性の卵巣で作られ、卵胞ホルモンあるいは女性ホルモンとも呼ばれていて、女性特有の体つきや体のリズムをつくりだします。加齢とともに卵巣の機能が衰えてその分泌が減ると、フィードバック調節のバランスが崩れて心身に不調をきたすのです。閉経を迎える50歳前後の10年くらいが更年期です。
 更年期障害は自律神経の乱れによるものなので、検査でも病的な変化は発見されない場合が多く、自覚症状が中心。 気になる症状があったら婦人科、女性外来、更年期外来等を受診してみてください。
 治療の基本は「ホルモン補充療法」。簡単に言ってしまえば足りないエストロゲンを補うことです。ただし副作用の報告もありますので、主治医と相談して判断は慎重に。
 
骨粗しょう症の原因にも

 意外ながら、骨粗しょう症も分泌低下と関係があります。
 骨粗しょう症は、骨の中の柱や壁が細く薄くなって弱くなり、骨折しやすくなるのもの。70歳を超えると約半分の人が、潜在的な患者になりますが、特に女性は50歳前後で急激にその数が増えるというのです。
 というのも、実はエストロゲンには骨の溶け出しを防ぐ役割もあり、分泌低下が骨密度の低下に直結しています。
 とはいえ骨粗しょう症には、体質や遺伝、ビタミンDやカルシウムの不足も大きく関わっています。人間は最も多くの骨量を20歳までに得て、その骨量を40代半ばまで維持して生活していますので、20歳のピーク時にどれだけ多くの骨量があったかがとても重要。子どもを持つご家庭では、小・中・高校生の頃から骨の健康を考えて生活習慣を見直していくことが大切でしょう

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