中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「こころの風邪、うつを生きる。」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
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こころの風邪、うつを生きる。

- good

2014-10-07 14:45

 春だというのに、やる気が出ない。おまけに眠れない。何だかダルくて、毎日が憂鬱に過ぎていく。
おかしいですね。ひょっとして「こころに風邪をひいた」のではないですか?今回は「こころの風邪」と呼ばれるほど誰もがかかる可能性があり、しかも治療しないと非常につらい「うつ」について、説明していきます。

まずは自分でチェックしてみましょう。

 皆さんは「うつ」について、どんな印象をお持ちですか。
 心の病気と聞くと、何だか普通の病気と違うように思うかもしれませんが、実は非常にありふれていて、5人に1人が経験するという説もあります。大抵の場合は薬もよく効きます。決して恐ろしくも理解不能でもありません。最近では「気分障害」と呼ぶようになっています。
 とはいえ軽く考えすぎるのも問題で、患者さん本人が自分の力で何とかしようと思っても、どうにもならないことが多く、むしろかえって悪化させる危険性が高いのです。早く専門家に助けてもらえば軽く済むものを、人に明かしたくないばかりにこじらせる、この危険性だけは覚えておいてください。
 この辺をご理解いただいたら、いよいよ「うつ病」とは何かの説明を始めましょう。
 人間、気分に良い悪いがあるのは当然のことです。単に憂鬱なだけなら病気ではありません。うつ病と見なされるのは、気分の重いのが2週間以上継続していて、かつ自分のおかれた状況への認識が、普通の人の感じ方や以前の自分の感じ方とだいぶ異なっている場合です。
 ただし、人によっては憂鬱な気分でなく、頭痛、腰痛、下痢など内科的な症状が現れてくることもあり、こういった場合を「仮面うつ病」と呼びます。
 発症しやすいのは、30代後半から40代の中年期と65歳以降の初老期です。最近は若い人にも増えているようです。

うつ病には、こんなタイプがあります。

 一口に「うつ病」と言っても、症状や経過、効く薬の種類などが異なるいくつかのタイプがあります。
 双極性うつ病の場合、躁状態の時に周囲の人も巻き込まれて大騒ぎになり、直接精神科を受診することも多いので、治療の開始が遅れる危険は少ないことになります。
 うつ症状だけが出る場合は、主に体の不調を訴えて内科などを受診する患者さんも多く、うつへの対処が遅れる可能性があります。いきなり精神科を受診するのは勇気がいることだとは思いますが、単なる体調不良と勘違いした場合、取り返しのつかないことが起きる恐れもあります。ひょっとしてと思うなら、どうぞ精神科を受診してください。
 そして、可能なら家族と一緒に受診することをお薦めします。診断にも治療にも、家族の理解と協力が欠かせないからです。
 診断の基準になるのは、通常であれば嬉しいはずの事にすら喜べないほど気分が重いか、それが週単位で続いていて妙に無気力でないか、です。これは後ほど改めて説明しますが、脳の中で気力を司る経路の信号伝達が弱くなっているためと考えられています。この時、患者さんの心の中では、「つらい」→「休みたい」→「休むと、仕事が溜まる」→「頑張るしかない」→「でも頑張れない」→「つらい」という風にぐるぐると考えが巡っています。
 このループの途中で「ええい、休んでしまえ」と、考えられる人は、発症しにくいことになりますし、「なぜこんなに怠け者になってしまったのか」と自分を責める人は、どんどん深刻になっていきます。仕事などの能率も落ちますので、周囲の人に申し訳ないという気持ちが強くなって、ついには自殺したくなってしまうわけです。この自殺願望については、後ほどもっと詳しく説明します。
 このように患者さんの内面の問題で症状が出るものの他に、他の身体疾患によって二次的に現れるものや、薬の副作用で現れるものもあります。また、逆にうつ症状によって、疾患が重症化することもあります。

なぜか眠りが浅い、こうなると要注意。 

 「うつ」になるのは、悲しい出来事があったからとかストレスが増えたからとは限りません。進学・就職・昇進・出産・引越し・荷下ろし(大変な仕事が終わる)など、本来なら喜びや希望につながりそうなことがきっかけになることも多いのです。
 そういう場合、最初はホッと気が抜けて疲れが出ただけと考えがちですが、夜グッスリ眠れない場合は、「うつ」である可能性が高いです。
 といっても、寝つきが悪いことが問題なのではなく、途中で何度も目が覚めたり、朝早く目が覚めてしまったりと、疲れているのに眠りが浅い場合が要注意。体が警報を発しているのだと考えて、早めに対処しましょう。

ご安心ください、治療法はあります。

 患者さんにとって最も重要なのは、おそらく「この苦しみから一刻も早く解放してほしい」ということでしょう。
 ご安心ください。自分がよくある「こころの風邪」をひいたのだ、自分が悪かったのではないのだ、ということさえ認識できたなら、よく効く治療法がいろいろあります。
 基本は、休養と薬の同時並行です。風邪の時と一緒ですね。
 休養が必要なのは、前述の「ぐるぐるの思考回路」からいったん逃れ、気力を取り戻すためです。職場などに迷惑をかけるから休めないと思ってしまうかもしれませんが、その分は作業の能率が以前のように戻ってから返せばよいこと。困った時はお互い様ではないですか。
 メインとなる抗うつ薬は、神経伝達物質(働きはコラム参照)のセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンが脳内で分解されるのを妨害し、結果としてそれらの不足を補います。いろいろな伝達物質に一度に効いて効き目も副作用も共に強いタイプと、特定の伝達物質だけに効いて副作用が軽いタイプとがあります。最初は後者から使われることが多いはずです。
 また別に、感情の起伏を抑えたり、不眠症状を改善したりするための薬も使われます。
 重症で緊急に治療を要する場合には、頭に通電する療法を行うこともあります。全身麻酔下で行いますので、苦痛も危険もほとんどありません。
 注意が必要なのは、これらの治療でいったん症状がよくなったからといって、性格など、うつ病を起こしやすい素地まで変わったわけではないことです。油断するとすぐに再発します。少し気長に服薬を続けましょう。また、気分変調症と呼ばれるような症例では、なかなか薬で良くならないこともあるので、その場合は周囲の人にも協力してもらってのカウンセリングなどが必要になります。

周囲にうつの人がいたら...。

 うつ病の恐ろしいところは、患者さんが自殺を図る点です。自分の大切な人が自ら命を絶つ、そんな不幸は誰だって経験したくないはず。そこまで患者さん本人が精神的に追い詰められてしまった時、救えるのは家族や職場の同僚など周囲の人しかいません。
 次のような事を頭に入れて、自殺させないよう気を配ってください。
 (1)なりたて、治りかけが要注意。(2)励ますのはタブー。
 実は、自殺するのにも気力が必要です。
 うつの特徴は異常な無気力ですから、本当に症状がひどければ、自殺すらできないのです。しかし、自責の念はありますので、気力が残っているうちや気力が戻ってきた時は要注意です。
 うつで自殺する場合、発作的ということが多いようです。患者さんが、何だか冷静でないようだと思ったら、決して一人きりにせず、すぐに医師のところへ連れていきましょう。患者さんが何か話したがっているなら、じっと聞いてあげると良いでしょう。患者さんの考えの誤りを正したり、無理に迎合したりする必要はありません。じっと聞けばよいのです。患者さんを励ましたらいけないのは、「やはり頑張りが足りないのだ」と、自責の念を強めてしまうからです。
 大切なのは、本人が前向きな行動を起こすまでじっと見守ってあげること。途中で衝動的にならないよう気をつけてあげることです。
 症状が軽快したとしても、いきなり過度な負荷をかけると容易に再発しますし、下手をすると患者さんの無力感を増幅させて自殺に走らせてしまう危険があります。職場に復帰させる場合は、上司などに実情をよく伝えて、リハビリ期間を設けてもらうようにしましょう。
 それから、うつ病のコントロールには薬をきちんと飲み続けることが重要です。ちゃんと飲んでいるか、気にかけてあげてください。
 意外と見落とされがちですが、お年寄りの場合、認知症と思われたものが実はうつ病だったということがあります。この場合、症状に不可思議な妄想を伴うことも多いので、「家族の恥」として抱え込まれてしまうことも多いようですが、症状が改善する可能性もあります。可能なら精神科を受診させるようにしてください。

日々の生活では、ここに注意。

 うつは、誰でもかかる可能性のあるありふれた病気だと説明してきました。では、予防する方法はないのでしょうか。
 どうやら、ないことはないようです。要は「思考のぐるぐる循環」に入らないことのようです。
 なぜ「ぐるぐる」思いつめてしまうのか。うつ病の人は、普段からどうも自分の過去・現在・未来について理想と現実のギャップを過大に捉える傾向があるようなのです。何事も満点にできなければ生きている意味はないと思うらしいのです。
 自分自身に思いあたる方、深呼吸してみましょう。ここで自分の性格が全て悪いのだなどと思うと、結局は同じことです。あなたのそのマジメな性格は、周囲の人からは好ましく思われているはずですから、それを変える必要はないんですよ。
 神様のように完璧な人なんて、どこにもいませんから安心してください。あなたは、きっと誰かの役に立っています。
 一度や二度失敗したからといって、あなたの全人格が否定されるわけでないことも忘れないでくださいね。いいじゃないですか、失敗するのも人生の楽しみです。
 これは、うつを発症してしまってからも同じです。あなたが生きていることは十分に素晴らしいことです。何だか妙につらいと思ったら、自分だけで抱え込まずに医師に相談してみましょう。きっとあなたの力になってくれます。
 大丈夫です。

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