中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「認知症を知る13 介護者の気づき生むひもときシート」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
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認知症を知る13 介護者の気づき生むひもときシート

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2014-10-06 15:31

前回11.12を簡単に復習すると、PCCは、認知症の人を尊厳ある個人として捉え、本人が幸せに暮らせるよう支えるケアのことでした。また、問題解決型コーピングは、介護者がストレスを感じた時、問題の見方を変えて解決法を導き出す方法論のことで、それによって認知症の進行が遅くなるかもしれないという報告が最近ありました。

 こうして並列で眺めてみると、PCCを実践することが、介護者の問題に対する見方を変え、結果的にストレス緩和につながれば、それは理想的な「問題解決型コーピング」と言えるのでないかという気もします。

 そんなことに役立つ道具はないかと探してみたら、何と日本にありました。

国の事業で作成

 それが「ひもときシート」です。

 認知症介護研究・研修東京センターが2008年度から3年間、厚生労働省からの委託で行った「認知症ケア高度化推進事業」の中で作成されたもので、著作権は同センターに帰属します。
 事業そのものは終了していますが、Webサイト「ひもときネット」は現在も稼働しており、その成果物も「法令違反や公序良俗に反する」のでない限り自由に使ってよいということになっています。

 サイトの文言をなぞると、シートの特徴は「パーソン・センタード・ケアを基本に作られており、課題や問題と思っていることを、援助者中心の思考から本人中心の思考に転換」していくことです。

 また、作成の趣旨は「ケアに携わる援助者は、認知症の人の言葉や行動にばかり目を奪われてしまい、背景にある本人からのメッセージやシグナルに気づけないでいることが多いのではないでしょうか。そのシグナルに気づいていくためには、援助者がそれを読み解く力を身に着け、その人の生活背景や事象の前後について状況分析を行いながら、『本人にとっての問題』をひも解いていくことが大切です。私たちは、まず、援助者が『困難』と感じていることについて、一定のプロセスを踏みながら思考整理の手伝いをすることが大切だと考えました。そこで開発したのが、困難や課題と考えていることを明確にし、事実に基づいた情報の整理をしながら本人の求めるケアを導き出す(ひもとく)ための『ひもときシート』です」だそうです。

 同センターが、研修に参加した介護のプロなどを対象にアンケート調査した結果(回収率40パーセント)では、シートを使ってみて、約8割の人が介護対象者を以前より理解できるようになったと答え、7割の人は自分のすべきことが分かったと答え、4割弱の人は介護対象者の状態が改善したと答えるなど、その効果は概ね肯定的に評価されています。

気づきにつながる、考え方のステップ

 ひもときシートは介護のプロが使うことを想定して作られたものなので、いきなり自由自在に使いこなすというわけにはいかないと思いますが、その使い方を学ぶだけで問題解決型コーピングのステップも身に着きそうです。

ステップは、困っていることを具体的に挙げるところから始まります。次に、介護される本人になってほしい姿や状態を考え、そのために自分が取り組もうと思っている方法)を挙げます。ここまでが左側の水色枠の部分で、以後は中央の緑枠の部分に移ります。

 緑枠の中央に、問題の場面で本人が口にしていた言葉や表情、しぐさ、行動などをありのままに書きます。

 その後で、以下八つの影響が考えられないか確認していきます。①疾病や薬の副作用②身体的痛み、便秘・不眠・空腹による苦痛③悲しみ・怒り・寂しさなどの精神的苦痛、本人の性格など④音・光・匂い・寒暖など感覚的な苦痛を与える刺激⑤家族・介護者など周囲からの過剰あるいは少な過ぎる関わり⑥障害の程度や能力の発揮に対して、住まい・器具など物的環境⑦要望や障害の程度、能力と実際の活動のズレ⑧生活歴・価値観に基づく暮らし方と現実とのズレ

 ここまでで何か気づくことはあるはずなので、問題の背景や原因を考えて書いてみます。

 最後は桃色枠の共感的理解です。これを踏まえて、本人の思いや立場から「困っていること」「悩んでいること」「望んでいること」を考えてみます。

 それに対して、状況や本人の能力に照らして可能な解決策を挙げ(F)たら、一連の流れは終了です。

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