中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「認知症を知る9 夜眠れないのを何とかしたい」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
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認知症を知る9 夜眠れないのを何とかしたい

- good

2014-10-06 14:46

体内時計の乱れ

 改めて言うまでもないことながら、睡眠不足の介護者には、疲労やストレス、フラストレーションが蓄積します。結果として感情的に爆発してしまうこともあり、我に返った後の罪悪感とのスパイラルで、精神的にも追い詰められていきます。介護者の睡眠不足によって、在宅介護を続けられなくなることも珍しくないのです。
 介護者が眠れなくなる理由はシンプルで、認知症の本人が夜中ぐっすり眠ってくれないからです。介護者は、夜中に起きた本人が危険なことをしないだろうか、家から出て行きはしないだろうかと、常に緊張を強いられ眠りが浅くなります。裏を返すと、本人が夜中ぐっすり眠ってくれさえすれば、介護は随分と楽になるわけです。
 ただし、眠らぬなら眠らせてしまえ、と睡眠剤を安易に使うのは厳禁です。これから説明するように、そのことがかえって事態を悪化させる可能性もあるからです。原因を的確に把握して、それを取り除く必要があります。
 さて、認知症の人が夜中ぐっすり眠らない原因は、大きく分けると①生活リズムの乱れ②睡眠導入剤など薬剤の影響③頻尿の三つあり、複合していることもあります。
 これらの原因を取り除ければ、介護者の睡眠不足が緩和される可能性は十分にあるのです。順に説明します。

生活リズム

 加齢と共に睡眠の質が悪くなり、高齢者の場合は健常者でも睡眠中の小さな刺激で覚醒してしまうことが知られています。もともと熟睡しにくいわけです。
 そして末期でもない限り、認知症になったからといって、健常な時より睡眠時間が大幅に増えるわけではありません。むしろ、日中の活動量が減って、居眠りなどしているならば、睡眠時間も減るのが当たり前です。
 このように生活リズムが乱れて昼と夜とでメリハリがなくなると、体内時計も狂いがちになり、寝つけない、変な時に目が冴える、という悪循環に入りかねません。
 よって、昼間きちんと起きて体を動かし適度に疲れるという生活を本人に送ってもらうのが、最初にやるべきことです。特に午前中に太陽の光を浴びると、体内時計のズレが補正されたり、抑うつ傾向が緩和されたりすることも知られており、屋外へ出てもらうのは大事です。
 具体的な方法として、毎日の散歩というのは誰もが思いつくことと思います。付き添いきれないとか、本人がどうしても嫌がるとかで不可能な場合は、忙しく昼間を過ごすための役割や趣味を何か探してあげてください。そこに多少の苦労があったとしても、夜眠れないことと比べれば、はるかにマシのはずです。

薬の影響と頻尿

 認知症の人が夜ぐっすり眠れない原因の二つ目は薬剤の影響です。
 高齢者に不眠を起こす可能性があるものとして、降圧薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド、カフェイン、抗パーキンソン病薬、気管支拡張薬、インターフェロン、SSRI型抗うつ薬などが知られており、場合によっては薬を減量・中止するか同じような効果の別の薬に置き換えることが行われています。
 そして、意外かもしれませんが、中でも睡眠薬は要注意です。
 例えば、睡眠障害への対症薬として、作用時間の短いベンゾジアゼピン系睡眠薬が頻用されています。しかし、大量・長期に使用した後で急に使用を中断すると、睡眠薬使用前よりも強い不眠と不安に襲われる「反跳性不眠」という副作用が知られています。後述するような転倒事故の危険もあります。
 また作用時間の長いベンゾジアゼピン系睡眠薬の場合、翌日の昼間に眠気やふらつき、脱力感、めまい、頭痛などに襲われる「持ち越し効果」という副作用があります。前項で説明したように、昼間に居眠りさせてしまったら、何のために夜苦労しているのか分からなくなります。
 『認知症疾患治療ガイドライン2010』では、睡眠障害への対応として、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を「非推奨」、リスペリドンは「考慮してもよい」、塩酸ドネペジル(アリセプト)や抑肝散も「考慮してもよい」となっており、「推奨」されている薬はありませんでした(コラム参照)。
 薬を使う場合は、主治医とよく相談のうえ、その特徴を把握し、くれぐれも用法用量を守るようにしてください。

過活動膀胱

 認知症の人が夜ぐっすり眠れない原因の三つ目は、夜間頻尿です。その原因の中でも頻度が高いものに「過活動膀胱」があります。
 膀胱が勝手に排尿を始めようとする病気で、排尿を意識的にコントロールしにくくなる病気と表現することもできます。急に漏れそうな尿意を覚え、我慢できず漏らしてしまうこともあります。
 これと認知症が合わさると、失禁して叱られた→失禁してはいけないとの強迫観念→早め早めのトイレ通い→眠れない、という現象になります。
 そして睡眠薬を飲んでいる場合は、意識が清明でないため、転倒など思わぬ事故につながる危険があります。薬の使用を慎重にしなければいけない理由がここにもあります。
 過活動膀胱の原因は様々ですが、脳や脊髄のトラブルから膀胱の神経が思ったように働かなくなるのは、その一つです。前立腺肥大で、狭くなった尿道に尿を押し出そうとしているうちに膀胱に負担がかかってという場合もあります。症状を緩和できる可能性がありますので、ひょっとしてそうかなと思ったら、まずは泌尿器科を受診させるようしてください。
 膀胱の原因が改善されたにもかかわらず、頻繁で強迫的なトイレ使用が残った場合は、精神的なものの影響が大きいことになるので、情動と行動を制御する神経伝達物質である脳内セロトニンを増加させるようなSSRI型の抗うつ薬を用いることもあります。

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