中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「認知症5 その他の原因」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
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認知症5 その他の原因

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2014-10-06 14:33

人格が変わる

 まず、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と診断されている方の中に、実は相当数隠れているのでないか、と近年考えられるようになったのが、「前頭側頭型認知症」です。
 アルツハイマー型認知症では主に脳の側頭葉内側や頭頂葉の萎縮が目立つのに対して、前頭葉や側頭葉前方の萎縮が目立つことから、そのように総称されるようになりました。
 人柄が変わってしまうなど、表で説明するような特徴的症状が出てきて、しかし本人には病識がないため、本人が社会的に困難な立場へ追い込まれていくと共に、介護者も大変に苦労します。

 前頭側頭型認知症で最も多いのは、以前はピック病と呼ばれていたもので、その他に前頭葉変性症と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の認知症(コラム参照)があります。この前頭側等型認知症に、意味性認知症と進行性非流暢性失語症を加えて前頭側頭葉変性症とも呼ばれています。
 ほとんどの場合、65歳以下で発症します。性格の変化と社交性の消失が初期から現れ、記憶障害は目立ちません。発症頻度に男女差はないようです。症状はゆっくりと進行していき、最終的には寝たきり状態になります。
 治療法は今のところなく、介護が中心となります。落ち着きのなさ、多動、徘徊などに対症療法として抗精神病薬を使うことがあります。場合によっては精神病院への入院を余儀なくされることもあります。
 専門医でなければ、どの病気なのか見分けるのはほぼ不可能なので、もし表のような症状が続くようなら、早めに精神科や神経内科等の専門医を受診してください。

原因疾病を治療すると症状改善が望めるもの

 最後にご紹介するのは、何らかの疾病が原因で脳機能の低下が起き認知症を呈しているのだけれど、脳の神経細胞死までは起きていないため、元の疾病に働きかけることで認知機能改善が望めるものです。
 これらの治療の機会を逃さないためにも、専門医への早期受診が大切と言うことができます。

①慢性硬膜下血腫

 脳を覆う「硬膜」(脳を覆う膜は3層構造で外側から硬膜、クモ膜、軟膜と呼ばれます)と脳の間に徐々に血の塊(血腫)が溜まっていく病気です。原因の多くは頭部外傷で、なかには数か月前に頭をぶつけて徐々に血腫が起こることもあります。
 脳が圧迫され、頭蓋骨内部の圧力が高まっていくため、不機嫌、痙攣発作、嘔吐、傾眠などの症状が見られ、また認知症も出てきます。
 局所麻酔をして頭蓋骨に小さな穴を開け、血腫を取り除くと、多くの場合、速やかに症状が改善します。ただし再発することも少なくありません。

②正常圧水頭症

 脳の中心にある「脳室」に髄液が溜まり、脳が圧迫されることで、認知症や歩行障害、尿失禁などの症状が徐々に出てくるものです。
 ちなみに、髄液は、脳室壁のある部分からから浸み出し、脳と脊髄の周りを回ってから、静脈に吸収されます。何らかの原因で、この髄液の流れや吸収が妨げられると起きます。
 クモ膜下出血や髄膜炎など原因がはっきりしているものを続発性正常圧水頭症と呼び、その原因を治療することで認知症が改善することもあります。
 一方、原因がはっきりしないものは特発性正常圧水頭症と呼びます。腰椎に穿刺し髄液を少量抜いてみた後で症状が改善するようであれば、髄液を継続的に腹腔内などへ逃がすよう体内に管を埋め込む「シャント術」を行います。これによって半数ほどの人は認知症が改善します。シャント術の合併症として、慢性硬膜下血腫が起きてしまうこともあります。

③甲状腺機能低下症

 全身でエネルギー利用を促す甲状腺ホルモンの分泌量や働きが不十分となる疾患で、代表例が「橋本病」です。エネルギーを利用できなくなった神経系や循環器系、代謝系など各器官の働きが低下します。これに伴って認知機能低下も起きます。
 甲状腺ホルモンの投与を行うことによって、症状改善が見込めます。

 いかがだったでしょうか。一口に認知症と言っても、ここで紹介しきれないほど、原因は実に多彩です。
 素人が見分けることなど絶対に不可能ですから、とにかく早めの専門医受診を心がけてください。

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