中島 滋隆(心理カウンセラー)- コラム「認知症を知る1 きほんのき」 - 専門家プロファイル

中島 滋隆
心身両面から医学と心理学の両面の視点に立ち支援します

中島 滋隆

ナカジマ シゲタカ
( 兵庫県 / 心理カウンセラー )
ナカジマメンタルヘルス研究室 代表
Q&A回答への評価:
4.4/20件
サービス:0件
Q&A:74件
コラム:101件
写真:20件
お気軽にお問い合わせください
※ご質問・相談はもちろん、見積もりや具体的な仕事依頼まで、お気軽にお問い合わせください。
印刷画面へ
専門家への個別相談、仕事の依頼、見積の請求などは、こちらからお気軽にお問い合わせください。
問い合わせ
専門家への取材依頼、執筆や講演の依頼などは、こちらからお問い合わせください。
取材の依頼

認知症を知る1 きほんのき

- good

2014-10-06 14:12

 まずは本当に基本的なところから。
 歳をとって物忘れがヒドくなったという自覚のある方も多いと思いますが、これは誰にでもある加齢現象であって、認知症ではありません。

 では、一体どういうものが認知症なのでしょう。
 医学的な定義では、「後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が低下し、知的機能障害のために、日常生活や社会生活に支障を生じてくる状態」を指します。
 堅苦しい表現なので少し解きほぐしますと、一つのポイントは「脳の器質的障害」です。脳に、目で見て分かる異変が起きているということです。次のポイントが「知的機能障害」で、記憶、見当識、知識、言語などの能力が、以前の正常だった時と比較して衰えているということです。感情や人格なども変化している場合があります。最後のポイントが「日常生活や社会生活に支障」。だからこそ社会問題化するわけですね。

誰にでも起きる

 さて、朝田隆・筑波大学教授が2010年から全国7カ所で5千人以上を対象に調査した結果、65歳以上の認知症有病率は15.7%という驚くべき数字が出たそうです。また現在のところ、絶対にならない方法というのは分かっていません。要するに、誰がなっても不思議ではないし、なるのは本人の責任でないということです。
 また、発症の原因は多様です。代表的なのは、アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性の三大認知症です(今後1種類ずつ詳しく特集していきます)が、他にも様々なものが認知症をひき起こし、その対応策も異なります。現時点では、ほとんどのものが一度起きてしまったら治せないものの、早期に発見することで治療可能なものも含まれています。
 この治療可能な認知症の発見には、専門の医療機関でCTやMRIなどの画像検査を受けることが欠かせません。きちんと診察を受けないと、治せるのに見逃されてしまう可能性があります。また治せないものの中にも、医療によって進行を止めたり遅くしたりできるものが含まれています。さらに、うつ病などでも、認知症とよく似た症状の出てくることがあります。
 よって、「ん?」と思ったら、早めに「物忘れ外来」などを設置している専門の医療機関を受診するに限ります。

失うものと出てくるもの

 認知症によって起きてくることは、大きく2種類に分類されます。それぞれ認知機能障害、行動・心理症状と呼ばれます。

必ず起きるもの

 認知機能障害は、脳の障害で起きてくる認知症の本体で、記憶障害、見当識障害、判断力障害、言語の障害、失行、失認、実行機能障害などを言います。すべての患者に必ずどれかが起きます。
 記憶障害に関しては、前項でも軽く触れたように加齢による正常な物忘れと、異常な物忘れがあります。その違いは前項表を再確認ください。
 言語の障害は、正常な時であれば言えたはずのことが言えなくなります。失行とは、運動機能は正常なのに、意図したことをうまく行えないことを指します。失認とは、感覚機能は正常なのに、対象を正確に認識できないことです。
 実行機能障害は遂行機能障害とも呼ばれ、作業を順序立てて効率よく行うことができなくなるものです。例えば「食事の支度を順序よくできなくなる」「家電製品を使えなくなる」といったことが起きます。

出るとは限らないもの

 一方、行動・心理症状(BPSDと呼ぶこともあります)とは、周囲の環境や社会との関わりの中で出てくるものです。怒りっぽくなったり、不安になったり、異常な行動を取ったりします。人によって、また周囲の環境によって発現の度合いに差があり、最後まで出ない場合もあります。
 行動・心理症状は、文字通り行動症状と心理症状に分類することができます。
 行動症状としては、暴言・暴力、叫ぶ、拒絶(介護に抵抗する)、食行動の異常(食べ物でないものを食べる、食べ過ぎる)、徘徊などがあります。
 心理症状には、物盗られ妄想、嫉妬妄想、幻視、誤認、不安、興奮、抑うつ状態、自発性の低下(アパシーと呼びます)などがあります。
 「誤認」だけ言葉が分かりづらいかもしれないので具体例を挙げますと、自宅にいるのに自分の家ではないと思ってしまったり、タンスの中に入っている自分の服を他人のものと思ってしまったりするというものです。
 こうやって眺めると、実は行動・心理症状の方が周囲への影響が大きそうなことは分かると思います。
 一方で、行動・心理症状自体が環境との関わりの中で出たり出なかったりするものなので、周囲の人々の本人への接し方次第で、悪循環も良循環も起こり得ることが何となく想像できないでしょうか。
 だからこそ、すべての人が認知症への理解を深めることが望まれるのです。

まず最初にすること

 認知症の大まかなところは、何となく、ご理解いただけたかと思います。
 原因となっている疾患ごとの詳しい説明は、順番にしていきます。今回は、認知症のリスクを下げてくれる生活習慣=表参照=と、「ん? ひょっとして」と思った時、どうすればよいのかということだけ簡単にご紹介します。


「認知症」のリスクを下げる生活習慣

1.習慣的に運動する

2.果実と野菜の多い健康的な食事にする

3.人と付き合う知的刺激を受ける

4.2型糖尿病を治療する

5.高血圧症と脂質異常症を治療する

6.適正体重を維持する

7.禁煙

生活習慣の方は、他の病気の予防にもつながるような当たり前の項目ばかりで、本当だろうかと思うかもしれませんが、逆に言えば騙されたとしても絶対に損はしませんから、心がけてみてはいかがでしょう。

どこに相談するか

 続いて、「ん? ひょっとして」と思った時です。とにかく早めに専門家の診察を受けた方が何かとよいというのは、冒頭にも説明した通りです。認知症に関する研究は世界中で急ピッチに進められており、医療的な常識がどんどん変わっていくような時代です。きちんと最新情報を把握している医師に診てもらった方がよいでしょう。既にかかりつけ医がいるなら、紹介してもらってください。介護保険のコーディネートを主たる業務として各市区町村に設置されている「地域包括支援センター」も、相談すれば地域の実情に即したアドバイスをもらえる可能性があります。

本人を傷つけない

 認知症の厄介な点は、当人は受診の必要をあまり認めず、家族がやきもきするということです。
 病識がないのに認知症の検査を受けさせられる本人が、あまり気持ちよくないことは想像に難くありません。
 本人が受診を嫌がる場合は、「物忘れの検査」という表現にすると抵抗感が和らぐようです。その際は、担当医が話を合わせてくれるよう、事前にその旨を伝えておくとよいでしょう。
 また、本人がいる場で、医師にその異常を説明しなくても済むよう、受診に至った経緯・経過を記したメモを用意し、診療科の受付にそれを渡して、診察前に担当医に読んでおいてくれるよう頼むのもよい手です。

プロフィール評価・口コミ対応業務経歴・実績連絡先・アクセスQ&Aコラム写真