竹谷俊之
2015年1月13日12時39分
東京の台所・築地市場の正門に、気になる掲示板がある。マグロ切り身、スッポン、パスモ、スマホ、裸現金、観音経……。昨年一年間の「落とし物」の数々だ。市場らしい「品目」に観光客も思わず足を止める。
管理しているのは同市場正門巡視詰所(つめしょ)で24時間常駐している都職員。昨年の拾得物総件数は593件で、約半数は落とし主が見つかった。現金は計288万3956円。この10年間では2013年に次いで多かった。落とし物の数は、景気や天候に影響するという。正月準備でにぎわう12月は、拾得件数も増える。昨年は11月末まで計191万円だった現金の落とし物が、12月だけで計97万円も届けられた。
落とし物の多くは市場関係者が落とした物だ。箱やケースで届けられることもある。運搬中に車荷台から落ちたり、誤って配達された物が放置されたりすることが多いそうだ。
拾得物が届けられると場内アナウンスで広報され、金銭的な価値があると職員が判断した物は掲示板に記載する。厄介なのは日持ちしない生鮮品の落とし物だ。以前は、その日のうちに業者が買い取って現金化した上で、警察に届けていた。しかし、2006年の遺失物法改正で安全や衛生面が優先され、現在は冷蔵・冷凍庫で3日間保管した後、廃棄処分される。内臓などに毒があるフグだけは別の冷蔵庫で保管する。その他の拾得物は、築地署に届けられる。
冷凍マグロが一本まるごと落ちていたり、販売用のスッポンが逃げ出して市場中が大騒ぎになったりしたこともあった。変わったものでは、ネコの骨つぼが届けられたこともあった。
「どんな落とし物でも、落とした人にとっては大切な物。拾われたら近くの詰所や交番に届けてください」と都職員の小菅一吉さん(60)。
2016年11月、市場は江東区豊洲に移転することが決まっている。担当者によると、新市場での拾得物掲示板の運用については未定で、築地市場ならではのユニークな掲示板が姿を消すかもしれない。(竹谷俊之)
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