時間管理はチームでこそ効果が上がる
個人のやり方を問うても本質的な解決にはならない
時間管理、生産性の向上というと、とかく個人のやり方がやり玉に上がる。もちろん、それにも一理あるものの、1人では仕事が完結せず、他のだれかと協力し合うことが当たり前のいま、個人でできることには限界がある。むしろ、チーム全体で時間管理に取り組むことで、飛躍的に生産性を向上させ、効率を上げることができる。
時間管理は個人だけの問題ではない
ほとんどのプロフェッショナルが誤った方法で時間管理を行っている。ダイエットやエクササイズの計画を立てては挫折する人を、自己制御できない、自律性に欠けると見なすのと同様に、仕事が遅れる人々は個々に問題があると考えてしまう。その対策として、自己啓発のコーチと同じように、個人の習慣を問題視する時間管理の専門家は枚挙にいとまがない。彼らのアドバイスは、タスク・リストを改善する、eメールのチェック回数を減らす、仕事を先延ばしにしない、といったことだ。
もちろん、私たちのだれもがもっと上手に時間を管理できるのだろう。しかし、つながりや協調性が重視される現代の職場において、真の問題は個人がいかに自分の時間を管理するかではない。いかに集団としての時間を管理するか、すなわち、いかに協力して仕事をやり遂げるかである。ここに生産性向上への本当のチャンスが隠れている。
10年近く前になるが、私はちょっとしたイノベーションと思しきものを実施するために、ボストン コンサルタント グループ(BCG)のあるチームと共同で取り組み始めた。各メンバーを説き伏せて、週に1回、指定日の夜はオフィスを出て、完全に仕事から離れてもらうことにしたのだ。これは、長時間勤務と1日24時間・週7日のカルチャーで悪名高いこの業界で、クオリティ・オブ・ライフの向上を目指すものだった。初期のフィードバックが肯定的だったので、まずは4つのコンサルタント・チームにこの取り組みを拡大、次に10チームに導入した。
その結果は、2009年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に寄稿した“Making Time Off Predictable── and Required”(休みを予測可能にすることが必須:未訳)と2012年に出版した書籍Sleeping with Your Smartphone(枕元にスマートフォンを置いて寝る:未訳)で述べた通り、意義深いものだった。所定の休みを取ったチームのコンサルタントは、仕事に対する満足度が高まり、ワーク・ライフ・バランスが向上。また、仕事中により多くを学ぶようになったと感じていたのである。BCGは当然ながら、このプログラムをさらに展開していった。2014年春の時点で、世界40カ国77事務所の数千チームが採用している。
最初にこの研究を報告してから5年間で、私はさまざまな企業に同様の時間管理プログラムを導入し、こうした取り組みの真の力を理解するに至った。このやり方を取ると、チームの働き方に関する責任がメンバーに委ねられる。チーム全体の時間を最大限に活用するために権限委譲し、意欲を持たせるのだ。その結果、チームはより協力的になる。メンバーは仕事の無駄を省き、期限を守るようになり、生産性と効率が高まる。計画タイムオフ(休暇取得、仕事の切り上げ)目標を設定し、何よりメンバー全員が休めるようにどう協力するかを定期的に話し合うため、チームはよりオープンに対話し、実験やイノベーションにいっそう励み、最終的によりよく機能するのである。
- 時間管理はチームでこそ効果が上がる個人のやり方を問うても本質的な解決にはならない (2015.01.13)