東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県山元町の常磐山元自動車学校の教習生25人とアルバイトの女性(当時27)の遺族が、教習所側に約19億7千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は13日、全員に対する教習所側の責任を認め、計約19億円の賠償を命じた。地裁は「学校側が津波を予見し、教習生らを安全に送迎する安全配慮義務があった」と指摘した。
津波犠牲者の遺族が学校側や勤め先など管理者を相手取った訴訟の一審判決は4件目で、損害賠償が認められたのは園児5人が死亡した日和幼稚園の訴訟に続き2件目。従業員に対する責任を認めたのは初めて。
判決理由で高宮健二裁判長は「教習所に津波が襲来することを具体的に予期し得た」と認定。当時の教官らが「速やかに教習生らを避難させ、安全なルートを通って送迎先に送り届ける安全配慮義務があった」として、死亡との因果関係を認めた。
判決によると、2011年3月11日午後2時46分の地震発生後、海岸から約750メートルの学校は授業再開を検討し、教習生を敷地内に待機させた。その後打ち切りを決め、午後3時40分ごろ、教習生が分乗した送迎車などを出発させたが、津波にのまれ4台の23人が死亡。発生時に路上教習で内陸側にいた2人は海側の教習所に戻った後、徒歩で移動中に被災した。
アルバイトの女性は後片付けを指示された後、教習所か周辺で津波に巻き込まれた。
教習所側は津波到来は予見できず、安全配慮義務はなかったとして、請求棄却を求めていた。
教習生の遺族が11年10月、女性の遺族が12年4月にそれぞれ提訴し、一緒に審理された。教習所側によると、ほかに役員や教官ら10人も津波の犠牲になった。
判決後、原告の1人、寺島浩文さん(52)は取材に応じ「勝訴判決が出て、ほっとしている」と静かに語った。寺島さんは津波で長男、佳祐さん(当時19)を亡くした。「今日まで遺族全員が一緒に頑張ってきたことに対して、子供たちは喜んでいると思う」と繰り返し、教習所に対しては「防災対策も取られておらず、防災意識も低かった」と批判した。〔共同〕
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