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まだ怖い結核 せき長引くなら受診、薬飲み切って

2015/1/9付
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 結核は古くて新しい病気といわれる。かつて不治の病と恐れられたが、現在は薬を飲めば治せるようになった。ただ、日本は「中まん延国」に分類されている。毎年2万人以上の新しい患者が発生し、年間2000人以上が亡くなっている。症状は風邪と似ているが、せきなどが2週間以上続く場合は結核を疑い、早めに医療機関を訪れることが大切だ。

■日本は中まん延国

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 結核は結核菌の感染によって発病する。厚生労働省によると、2013年に新しく結核を発病した人は2万495人に上る。人口10万人あたりの新規結核患者数を示す罹患(りかん)率は16.1で、大半が10を下回る欧米先進国より高い。世界保健機関(WHO)の3段階の分類では日本は中まん延国で、他の先進国のレベルに追いつくのには20年以上かかるといわれる。

 結核菌は人から人にうつる。せきやくしゃみの小さなしぶきの中に含まれていたり、室内の空気中に漂っていたりする結核菌を吸い込んで感染する。ただ、感染しても免疫力が高ければ、結核菌は死滅するか体内で休眠状態になる。感染した人のうち、生涯で結核を発病するのは1~2割で、大半は発病しないで済む。

 しかし高齢者や糖尿病、がんなどの病気で免疫力が落ちた人では、何十年も休眠状態にあった結核菌が増えて発病してしまうケースが起こる。「ストーカーのようにしつこくまとわりつく」。公益財団法人・結核予防会結核研究所の石川信克所長は結核菌をこう例える。13年に発病した人の多くは70歳以上だった。

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 一方、20~30代も発病者の1割以上を占めた。子どものころに結核予防のための「BCGワクチン」を接種していても、その効果は10~15年程度にとどまるとされている。「結核は今も街の中で静かに流行している」(石川所長)

 結核を発病すると、せきやたん、発熱など風邪によく似た症状が出る。せきもぜんそくのような激しいものではなく、本人は大したことはないと思いがちだ。

 ただ、普通の風邪ならば1週間程度で症状が改善する。2週間たってもせきやたんが続くようなら、結核を疑って医療機関を受診することが重要だ。結核を発病している場合、胸部エックス線検査をすると結核菌の増えた病巣が白い影となって映る。たんを薬剤で染色して結核菌を検出する方法もある。

 健康診断も結核感染を調べるのに有効だ。マラソン大会に向けて訓練を重ねていた東京都在住の80代男性は、健診を受けたところ、結核の発病が分かった。幼少期に感染した結核菌が原因である可能性が高いという。「まさか自分がかかるとは」と驚いたが、治療に専念することにした。

 結核治療は薬の服用が基本だ。3~4種類を半年間飲み続ければ、治せる。病状や経過によっては服用期間が長くなることもある。

■耐性菌生むリスク

結核菌は長さが数マイクロメートルの棒状=結核予防会結核研究所提供
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結核菌は長さが数マイクロメートルの棒状=結核予防会結核研究所提供

 結核を発病し症状が進むと、結核菌が増えてせきやたんとともに空気中に吐き出される。これは「排菌」と呼ぶ状態で、周囲の人に結核菌をうつす恐れがあるため、入院治療が必要だ。適切な治療を受ければ、2週間から数カ月で退院できることが多い。入院中の費用は基本的に公費負担だ。排菌していない人は通院で治療可能だ。

 治療で注意したいのは、症状が治まったからといって途中で薬を飲むのをやめてしまうと、薬の効きにくい薬剤耐性菌が生まれやすくなる点だ。耐性菌には通常の薬が効かず、場合によっては病巣を取り除く手術が必要になることもある。医師の指導に従い、処方された薬は最後まで飲みきることが重要だ。

 医療機関側でも、入院中の患者が看護師と対面して薬を飲んだり、薬局で薬をもらった際にその場で飲んだりする工夫で、薬の飲み忘れを防ぐ取り組みが進んでいる。結核研究所の石川所長は「結核をなくすには個人の心がけだけでなく、社会全体の取り組みが必要だ」と訴える。

 その中で、大きな役割を担うのが地域の保健所だ。結核を発病した人がいると、保健所は同居家族や同じ職場の人など、感染の恐れのある人の健康状態を調べる。この調査で結核菌の感染が判明したら、結核の薬を半年間服用して発病を防ぐ。

 個人はどんな心がけをしたらよいのだろうか。東京都の渡瀬博俊・感染症対策課長は「職場などの定期健診をしっかり受けるのが基本だ」と話す。特に学校や塾の先生、医師など、大勢と接する機会が多い職業の人は自覚を持つことが大切だという。

 また、働き盛りの世代は結核の症状が出ても、「多忙なので」などの理由で受診が遅れる傾向がある。本人の治療が長引くだけでなく、周囲にうつす可能性も高まってしまう。結核を甘く見ないで、早期に発見し、きっちり治すことが重要だ。

(出村政彬)

[日本経済新聞夕刊2015年1月9日付]

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