今や実質的に「日本一の書店」となったアマゾンが、学生向けに展開するポイントサービスが、再販制度が禁じる「値引き販売」に当たるとして、小さな出版社3社が、自社の出版物をアマゾンに出荷しない措置を続けている。圧倒的な販売力と洗練された流通システムで、出版業界に風穴を開けた海外の巨大なパワープレーヤーに対して、異議を申し立てた真意とは−−。(戸谷真美)
「今(出荷停止を)やらなくちゃダメなんですよ。時間がたってしまえば、今よりもっとアマゾン(を通じて売る本)の割合は増えていくでしょうから」
平成26年5月からアマゾンへの出荷停止を続けている「晩成書房」(東京都千代田区)の水野久社長はこう話す。演劇関連の書籍を中心に出版する同社が、アマゾンへの出荷を止めた出版物は約440点。同時期に出荷停止に踏み切った「緑風出版」(文京区、高須次郎社長)、「水声社」(同、鈴木宏社長)の出版物と合わせ約2700点に上る。
アマゾン経由の売り上げは3社とも、自社の直販を除く売り上げ全体の1〜2割を占め、決して小さい数字ではない。「出荷停止は誰もやったことがないことだし、影響がどれくらいかわからない。でも、打てる手はそれしかなかったんです」と水野社長は苦笑混じりに振り返った。
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