仏週刊紙襲撃:容疑者「殉教者として死ぬ」…厳戒の町

毎日新聞 2015年01月09日 21時10分(最終更新 01月10日 03時04分)

容疑者らが人質を取って立てこもったとみられる現場付近に到着した救急車や警察車両=パリ北東のダマルタンアンゴエルで2015年1月9日、AP
容疑者らが人質を取って立てこもったとみられる現場付近に到着した救急車や警察車両=パリ北東のダマルタンアンゴエルで2015年1月9日、AP

 【パリ宮川裕章】サイレンを鳴らして急行してきた警察車両と装甲車が道路をふさぎ、雨天を複数のヘリコプターが旋回する。9日午前(日本時間同日夕)、仏週刊紙「シャルリーエブド」襲撃事件の容疑者らは治安当局と約1時間のカーチェイスの末、パリ北東約40キロの田舎町ダマルタンアンゴエルに逃げ込み、町を恐怖に陥れた。

 ◇雨の追跡劇、TV中継

 「室内にいろ。明かりを消せ」。容疑者が人質1人を取って立てこもった印刷所。英BBC放送によると、重武装の特殊部隊隊員が周囲のビルや住宅になだれ込み、中にいた住民に作戦が終了するまで外に出ないように指示した。

 「殉教者として死ぬ用意ができている」。容疑者の一人は、説得を試みた当局の交渉担当官に断言した。容疑者の兄弟は自動小銃やロケット砲などで重武装している可能性があり、現場に危機感が高まっている。

 ダマルタンアンゴエルは、工場などが点在する商工業地区で、人口約8500人。パリの玄関口シャルル・ドゴール空港へもわずか12キロ、パリ市内は目と鼻の先だ。町当局は住民に外出禁止令を出した。また、町は事件発生で帰宅できなくなっていた幼稚園や小学校の生徒約200人を救出したが、まだ1000人近い生徒が校内に残っているという。学校関係者は9日、米ABCテレビに対し「(帰宅できない)子供たちがパニックにならないよう、みんなで歌を歌っている」と話した。

 仏週刊紙のパリ本社が襲撃されたのは7日正午ごろ。8日朝、パリの北東約60キロのビレコトレにあるガソリンスタンドで2人が食料を奪ったとの情報などから、仏治安当局は2人は車を乗り捨て、近くに潜伏していると考え、特殊部隊など約1500人を動員し、クレピアンバロワやロンポン一帯で大規模な捜索を行った。熱感知機を手にした完全装備の特殊部隊隊員や警察犬が走り回り、住宅一軒一軒をしらみつぶしに調べたが、容疑者は見つからなかった。

 フランス全土では8万8000人の警察が捜索にあたった。新たな事態が発生したのは、9日朝。兄弟は再び車を奪い、パリ方向に戻る途中の高速2号線で捜査車両と雨の中、猛スピードでカーチェイスをしながら、銃撃戦を繰り広げた。テレビ各局はカーチェイスを追跡する緊迫のライブ映像を流し続けた。

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