仏週刊紙襲撃:特殊部隊が包囲し人質解放交渉 情報錯綜も
毎日新聞 2015年01月09日 23時44分(最終更新 01月10日 00時02分)
【パリ宮川裕章、ワシントン和田浩明】仏週刊紙「シャルリーエブド」のパリ本社が襲撃され12人が死亡した事件で、逃走しているサイド・クアシ容疑者(34)とシェリフ・クアシ容疑者(32)の兄弟が9日午前(日本時間同日夕)、捜査当局の追跡を受けてパリ北東約40キロのダマルタンアンゴエルの印刷所に人質1人を取って立てこもった。仏メディアによると、特殊部隊などが建物を包囲し、人質の解放などを交渉している。2人が立てこもる前に車で逃走中、銃撃戦も起きた。一方、パリ東部ポルトドバンセンヌのスーパーでも同日午後、男が人質6人を取って立てこもる事件が発生。警察当局は両事件の容疑者の関係についても調べている。
現地メディアによると、捜査当局が同日午前、パリ方面に向かう幹線道を猛スピードで走る車を発見。追跡されると捜査車両に向かって銃撃しながら逃走し、最後は印刷所に逃げ込んだ。容疑者は「殉教者として死にたい」と当局側に電話で話したという。
襲撃事件は7日午前11時半(日本時間同午後7時半)ごろ、パリ中心部にある同社本社で発生。覆面姿の男2人が風刺画家の編集長ら12人を殺害し、車で逃走。仏捜査当局は兄弟を指名手配し行方を追っていた。
8日朝、兄弟とみられる男2人が、パリ北東約60キロのビレコトレのガソリンスタンドに車で乗り付け、食料品を奪って逃走。捜査当局は特殊部隊やヘリを投入し、周辺のロンポンやクレピアンバロワの森林地帯などを捜索していた。
一方、ロイター通信などは、パリ南郊で8日に女性警察官を射殺し逃走中の容疑者が、かつて兄弟と同じ仏国内の過激派グループに属していたと報じた。この容疑者がパリ東部で立てこもっている可能性もある。
また、米CNNは仏情報当局が米政府関係者に明かした話として、兄のサイド容疑者が2011年にイエメンを訪れ、国際テロ組織アルカイダ系団体「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)の武器使用訓練を受けたほか、爆発物の製造も学んだ可能性があると伝えた。
米当局は兄弟の情報を以前からテロリストデータベースに登録し、航空機の搭乗を拒否する「ノー・フライ・リスト」に登載。仏当局も一時、2人の動向を監視していたが、対象者の数が多すぎ、中止したという。