仏連続テロ:3容疑者、10年以上前から過激思想に染まる
毎日新聞 2015年01月10日 21時21分(最終更新 01月11日 02時46分)
【パリ斎藤義彦、宮川裕章】フランスだけでなく、世界を震撼(しんかん)させた同時立てこもり事件解決から一夜明け、射殺された3容疑者の人物像が、仏治安当局やメディアの報道から浮かび上がってきた。3容疑者は10年以上前からイスラム過激派の思想に染まり、中東での射撃訓練など「ジハード(聖戦)」に向けた準備を進めてきた。
米メディアによると、週刊紙「シャルリーエブド」本社を襲撃したサイド・クアシ容疑者(34)とシェリフ・クアシ容疑者(32)の兄弟は、編集室で風刺画家らの名前を一人ずつ確認した上で処刑するように射殺した。同紙は、イスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)を風刺する漫画を掲載してきた。
目撃者によると、社屋から出た2人のうちの1人は「預言者のかたきを討った」と叫んだという。
ユダヤ教徒向けのスーパーで立てこもったアメディ・クリバリ容疑者(32)も残忍だった。買い物に来ていたマリと名乗る女性によると、クリバリ容疑者は店に入ってくるなり店内にいた2人を銃で撃ち殺し、さらに容疑者から銃を取り上げようとした女性の頭を撃ち抜いて射殺した。
「俺は死を恐れない」−−。
クリバリ容疑者の言葉にマリさんら人質たちは震え上がった。マリさんは「彼はこの日が自分の最期の日だと知っていたのだろう」と話した。
仏テレビBFMTVの電話取材に対し、クリバリ容疑者は、「フランスが(過激派組織)イスラム国を(イラクで)攻撃したためここに来た」と説明、「自分はイスラム国のメンバーだ」と述べた。ユダヤ教徒向けスーパーを狙った理由を「イスラム国の敵のユダヤ人だからだ」と答えた。
クリバリ容疑者は現場から友人たちにも電話をかけ、「パリ周辺の警察署など、たくさんの施設に攻撃を仕掛けてくれ」と依頼していた。さらに警察の突入などに備え、店内に15個の爆弾を仕掛けていた。
◇アルカイダから勧誘
仏メディアなどによると、クアシ兄弟は、パリでアルジェリア移民の両親の下に生まれた。幼い頃に両親と死別し、アルバイトをしながら生計を立てていたという。2001年ごろ、イラク戦争で米軍と戦う戦闘員を募集していた男と出会う。弟のシェリフ容疑者は05年、シリアに渡航してイラクに行こうと試み、捜査当局に逮捕される。拘束先の刑務所で、国際テロ組織アルカイダの勧誘員だったフランス人と出会い、過激派思想に染まったらしい。