仏連続テロ:露、国際共闘呼びかけ 孤立脱却図る狙いも
毎日新聞 2015年01月10日 21時50分(最終更新 01月10日 23時08分)
【モスクワ田中洋之】ロシアは仏週刊紙襲撃事件を受け、テロに対する国際共闘を呼びかけるなど協調路線を打ち出した。ウクライナ危機で欧米の制裁に直面するロシアとしては、「孤立」からの脱却を図る狙いもありそうだ。
プーチン大統領は事件発生の7日、オランド仏大統領に電話で哀悼の意を伝え、「野蛮な行為」を非難するとともに「犯人がしかるべき罰を受けるよう望む」と述べた。ラブロフ露外相もファビウス仏外相に電話し、露外務省によると双方はテロの脅威と戦うため、さらなる共同努力の必要性で一致した。ラブロフ外相はパリで11日に開かれるテロ犠牲者を追悼する「反テロ行進」に参加する。
ロシアのプシコフ下院外交委員長はツイッターで「(今回の事件は)欧州とその安全保障を脅かしているのはロシアでないことを示している。真の脅威はテロの信奉者だ」と指摘。ウクライナ危機でロシアの軍事的脅威を強調する北大西洋条約機構(NATO)をけん制した形だ。
またコサチョフ上院外交委員長はブログで、ロシアが自国のテロ対策の経験をフランスや国際社会に提示する用意を表明した。クリンツェビッチ下院国防副委員長も「ロシアを抜きにテロは克服できない」と述べた。
ロシアは南部の北カフカス地方でイスラム武装勢力によるテロが続発しており、中央アジア方面でもアフガニスタンからのイスラム過激主義の流入を懸念している。「反テロ」の国際協調を前面に掲げることで、ウクライナ危機をめぐる欧米との対立構図を緩和したい考えだ。
一方、仏政府はウクライナ危機を理由にロシアが発注したミストラル級強襲揚陸艦の引き渡しを凍結しており、ロシアはオランド大統領の政治決断を促したい思惑もある。
オランド大統領は昨年6月のノルマンディー上陸作戦70周年記念式典でロシア・ウクライナ首脳会談を仲介し、同12月には対露制裁を発動する主要7カ国(G7)の首脳として初めてモスクワを訪問した。