仏連続テロ:現場に大量の武器 組織的支援が濃厚
毎日新聞 2015年01月10日 23時33分(最終更新 01月11日 01時16分)
【パリ宮川裕章、斎藤義彦】仏週刊紙「シャルリーエブド」襲撃事件の容疑者兄弟によるパリ近郊の印刷所での立てこもり事件と、連鎖する形で起きたパリ東部のスーパー立てこもり事件は9日夕(日本時間10日未明)、治安当局の特殊部隊が同時間帯に突入し、容疑者3人を射殺したことで収束した。立てこもりの現場からは大量の武器が見つかっており、国際的な組織が資金や武器の提供、軍事訓練を通じてテロを支援していた可能性が濃厚となっている。捜査当局は計17人の犠牲者を出した一連の事件に関連性があるとみて武器の入手経路や背後関係の解明を進める方針だ。
パリ北東約40キロのダマルタンアンゴエルの印刷所に立てこもっていた弟のシェリフ・クアシ容疑者(32)は、射殺される前に仏テレビの電話取材に「イエメンのアルカイダから派遣された」と語り、イエメンへの渡航歴を明かした。仏当局もシェリフ容疑者がイエメンに渡航していたことを確認している。ロイター通信によると、兄のサイド・クアシ容疑者(34)も2011年、イスラム教を学ぶ名目でイエメンに渡航。軍事訓練を受けたとされる。米CNNは仏治安当局の情報としてシェリフ容疑者が昨年8月にシリアから帰国していたと報じている。
一方、パリ東部ポルトドバンセンヌのユダヤ教徒向けスーパーでは、約15人の人質を取って立てこもっていたアメディ・クリバリ容疑者(32)が特殊部隊に射殺され、立てこもり開始時に殺害されたとみられる人質4人の遺体が見つかった。
クリバリ容疑者は射殺される前に応じた仏テレビの電話取材に対し、イラクやシリアで勢力を広げる過激派組織「イスラム国」に所属していると説明し、「クアシ兄弟に同調した。彼らはシャルリーエブドを、私は警官(の襲撃)を行った」と語っていた。AFP通信は治安当局者の話として、クリバリ容疑者が立てこもり現場から複数の友人に電話し、パリ周辺の警察署などを襲撃するように依頼していたと伝えた。
検察当局によると、印刷所からは容疑者兄弟が所持していたM82ロケットランチャー、発煙弾10発、自動小銃2丁、拳銃2丁が見つかった。また、クリバリ容疑者が立てこもったスーパーからは、トカレフ拳銃2丁、自動小銃2丁、防弾チョッキ、起爆装置付き爆発物が発見された。組織的な支援がなければ入手困難な武器も含まれており、捜査の焦点の一つとなる。