仏連続テロ:突入予感し身を伏せた スーパー人質男性

毎日新聞 2015年01月12日 10時00分(最終更新 01月12日 10時40分)

ユダヤ教徒向けスーパー襲撃事件の犠牲者の名前を掲げ、追悼する女性=パリ東部ポルトドバンセンヌで2015年1月10日、ロイター
ユダヤ教徒向けスーパー襲撃事件の犠牲者の名前を掲げ、追悼する女性=パリ東部ポルトドバンセンヌで2015年1月10日、ロイター

 【パリ斎藤義彦】仏週刊紙襲撃事件に関連し9日に発生したパリ東部のユダヤ人向けスーパーでの立てこもり事件について、人質だった男性が詳細な経緯を仏ルポアン誌に証言した。人質を取ったアメディ・クリバリ容疑者(32)は抵抗しようとした客を殺害、人質の「虐殺」も示唆した。また、この男性の機転で警察と連絡が取れ、突入が可能になった。

 男性はミカエルさんで、3歳の子供と共に人質になった。男性の証言は以下の通り。

 パンと鶏肉を買ってレジに並んでいたところ、爆発音のような銃声を聞いた。自動小銃を抱えた容疑者を見て店の奥に走りこんだ。他の客と地下の冷蔵庫に身を隠したが、中からカギが閉まらない。みな恐怖に陥った。

 ◇容疑者の男は「静かだった」

 5分ほどすると、店員が下りてきて「(容疑者が)地上に上がれと言っている。さもないと虐殺がある」と伝えた。従わないでいると、10分後に再び店員が来て上がれと言う。今度は従った。

 戻ると男性の死体が転がっていた。容疑者は奇妙に静かで、「イスラム国」に属していると自己紹介した。立てこもりを正当化し、パレスチナやシリアについて見解を説明した。一人の女性客が店のカウンターに置かれた容疑者の銃を奪おうとした。しかし、その銃は故障して動かなかった。容疑者は振り向き、女性客を射殺した。

 容疑者は人質に携帯電話を床に置くよう求めた。容疑者は私の電話を取り、テレビ局に電話するよう要求。私がBFMTVに電話すると容疑者は政治的な主張をした。

 店の電話は鳴りやまなかった。メディアからの電話だ。私は取って「そんな場合じゃない」と切った。息子は「家に帰りたい」と泣き出した。

 容疑者が店内を回っている間に私は電話を取り戻し、警察に連絡した。警察官は「突入の際には伏せるように」と指示した。私は電話をつないだままにしておき警察が店内の音を聞けるようにした。容疑者が祈り始めたのを警察は聞き、店のシャッターを上げた。突入を予感して身を伏せた。

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