沖縄振興予算減額:翁長知事と深まる亀裂 表向きは財政難

毎日新聞 2015年01月09日 08時35分(最終更新 01月09日 12時56分)

沖縄県の翁長知事=那覇市の沖縄県庁で2015年1月5日、佐藤敬一撮影
沖縄県の翁長知事=那覇市の沖縄県庁で2015年1月5日、佐藤敬一撮影

 政府・自民党が2015年度当初予算案で沖縄振興予算を減額する方針を固めたことで、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設反対を掲げる翁長雄志知事との亀裂がさらに深まる。政権は財政難を表向きの理由とするが、移設を容認した仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事と予算面で差をつけ、移設反対派に圧力をかける思惑がにじむ。翁長氏は8日、減額に一定の理解も示したが、政権と現県政のパイプは細る一方で、対立の行方は不透明だ。

 自民党は8日朝、15年度の振興予算などを議論する沖縄振興調査会を開催。翁長知事は招待されず、猪口邦子調査会長は記者団に「出席の希望があれば正式に言ってきてほしい」と述べるにとどめた。昨年11月の知事選で、かつて自民党県連幹事長も務めた翁長氏に敗れた自民党内の空気は冷ややかで、「裏切り者」(沖縄県連幹部)と厳しい声が上がっている。

 自民党はその後、山口俊一沖縄・北方担当相に予算の確保などを要請したが、政府関係者は「党には『どかんと減らせ』と強硬論もある」と明かした。

 予算減額について、政府側は消費再増税の先送りなどで財源確保が難しいと説明する。だが仲井真氏の在任中に決定した14年度予算は、概算要求から約50億円上乗せされた。繰越金が発生しても、15年度概算要求では14年度からさらに300億円積み増しており、移設反対の県政誕生で手のひらを返した印象は否めない。

 態度を硬化させる政府・自民に対し、翁長氏側は当面静観する構えだ。翁長氏は8日、東京都内で記者団に「沖縄に限らず、予算が厳しく査定されている。決まるまで話しにくい」と評価を避けた。

 ただ、翁長氏と山口氏以外の閣僚らとの面会は、11月の知事選以降実現しない異例の状態が続いてきた。翁長氏は「県民や本土の方々があるがままを見て考えてほしい」と遠回しに政府をけん制。一方、沖縄の自民党議員は「『頼んでも会ってくれない』と政府を悪役にしようとしている」と反論し、さながら情報戦の様相も呈している。【影山哲也、小田中大】

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