仏テロ連鎖:突入…銃声、爆発音と煙 田舎町が戦場に

毎日新聞 2015年01月10日 01時35分(最終更新 01月10日 05時49分)

容疑者立てこもり現場付近で、銃を構える特殊部隊の狙撃手=パリ北東ダマルタンアンゴエルで2015年1月9日、ロイター
容疑者立てこもり現場付近で、銃を構える特殊部隊の狙撃手=パリ北東ダマルタンアンゴエルで2015年1月9日、ロイター

 【パリ宮川裕章】銃声と爆発−−。9日午後5時、特殊部隊が突入し、立てこもり現場の印刷所から白い煙と真っ赤な炎があがった。フランスの田舎町が戦場と化した。仏週刊紙「シャルリーエブド」襲撃事件の容疑者らは治安当局と約1時間のカーチェイスの末、パリ北東約40キロのダマルタンアンゴエルに逃げ込み、町を恐怖に陥れた。一方、パリ市内のユダヤ人向けスーパーでも立てこもり事件が発生。フランスは連鎖するテロに襲われた。

 「殉教者として死ぬ用意ができている」。容疑者の一人は、説得を試みた当局の交渉担当官に断言した。容疑者の兄弟は自動小銃やロケット砲などで重武装している可能性があり、現場に危機感が高まっていた。

 「室内にいろ。明かりを消せ」。容疑者が人質1人を取って立てこもった印刷所。英BBC放送によると、重武装の特殊部隊隊員が周囲のビルや住宅になだれ込み、中にいた住民に作戦が終了するまで外に出ないように指示した。

 ダマルタンアンゴエルは、工場などが点在する商工業地区で、人口約8500人。パリの玄関口シャルル・ドゴール空港へもわずか12キロ、パリ市内は目と鼻の先だ。サイレンを鳴らして急行する警察車両と装甲車が道路をふさぎ、雨天を複数のヘリコプターが旋回する。ビルの屋上では警察のスナイパーが銃を構える。町当局は住民に外出禁止令を出した。また事件発生で帰宅できなくなっていた幼稚園や小学校の生徒約200人が特殊部隊に警護されたバスで救出されたが、まだ1000人近い生徒が校内に残っているという。学校関係者は米ABCテレビに対し「(帰宅できなくなった)子供たちがパニックにならないよう、みんなで歌を歌っている」と話した。

 仏週刊紙のパリ本社が襲撃されたのは7日正午ごろ。8日朝、パリの北東約60キロのビレコトレにあるガソリンスタンドで2人が食料を奪ったとの情報などから、仏治安当局は2人は車を乗り捨て、近くに潜伏していると考え、特殊部隊など約1500人を動員し、クレピアンバロワやロンポン一帯で大規模な捜索を行った。熱感知機を手にした完全装備の特殊部隊隊員や警察犬が走り回り、住宅一軒一軒をしらみつぶしに調べた。フランス全土では8万8000人の警察官が捜索にあたった。

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