仏連続テロ:人質女性「これは戦争だ」娘を抱えて逃げ出す
毎日新聞 2015年01月10日 11時58分(最終更新 01月10日 22時57分)
◇特殊部隊がスーパーに突入、容疑者射殺
【パリ斎藤義彦】静かにシャッターが開いた後、盾を持った特殊部隊員がスーパーに突入する。爆発音が響き、銃弾の雨が降る中、悲鳴をあげて人質が飛び出した−−。仏週刊紙「シャルリーエブド」襲撃事件は9日、容疑者らが印刷所とスーパーに押し入って立てこもった後、治安当局の強行突入で容疑者が殺害され終結した。だがスーパーの人質4人が殺され、事件は無関係な市民も巻き込む理不尽な悲劇で終わった。
「バーン」「バーン」。夕闇迫る9日午後5時(日本時間10日午前1時)ごろ、パリ東部のユダヤ人向けスーパーに襲撃犯を威かくする閃光(せんこう)弾が炸裂する中、次々と特殊部隊員が突入した。白煙の中、まず幼児を抱えた男性が飛び出した。警察に保護され安堵(あんど)の表情を見せる。
「これは戦争だ!」。娘を抱きかかえ、逃げ出した女性が大声で叫んだ。地下室などに隠れていた人も一斉に出口に逃れた。容疑者の反撃で負傷した警官が地面をはって逃げ、仲間に救出された。
特殊部隊約50人は二つの入り口から突入に成功した。しかし、目にしたものは、アメディ・クリバリ容疑者(32)の姿だけでなく、床に倒れた中年男性など人質4人の遺体だった。「おそらく容疑者に事前に殺された」と検察幹部は悔やむ。
難を逃れた客の一人、ダニエルさんは仏誌に「軍服を着た男が突然店内に入ってきた。落ち着いた様子で笑みを浮かべ、銃を店内の客に向けたため客が叫びパニックになった。店内には子供を含め20人の客がいた。自分は壁に隠れ、店外に逃げることができた」と話した。人質の中には冷蔵室に隠れ、難を逃れた人もいた。
スーパーへの強行突入とほぼ同時刻、週刊紙を襲撃した兄弟のサイド・クアシ(34)とシェリフ・クアシ(32)の両容疑者が立てこもっていたパリ北東部の印刷所でも、大きな爆発音とともに白煙が上がった。激しい銃撃戦の末、2容疑者が殺害された。
検察によると、2容疑者がシャッターを開けて自ら飛び出し、当局に発砲し始めたため当局側も応戦したという。兄のサイド容疑者は8日、乗用車を奪った後に警察と銃撃戦になり、首を負傷していた。「殉教者として死にたい」と話していて容疑者たちが、活路を求め攻撃に出た可能性がある。