仏連続テロ:スピード突入は事件「連鎖断ち切り」図る
毎日新聞 2015年01月10日 12時28分(最終更新 01月11日 02時43分)
◇スーパーの「人質の全員殺害」殺害示唆で
【パリ斎藤義彦】仏週刊紙「シャルリーエブド」襲撃事件は9日、サイド・クアシ容疑者(34)とシェリフ・クアシ容疑者(32)の兄弟が籠城(ろうじょう)する印刷所と、兄弟に同調するアメディ・クリバリ容疑者(32)が人質を取って立てこもるスーパーへの仏憲兵隊特殊部隊(GIGN)の同時強行突入で解決した。スーパーの人質事件は発生からわずか4時間のスピード突入だった。クリバリ容疑者が「人質の全員殺害」を示唆したり、治安当局にクアシ兄弟を逃がすよう要求する動きを見せたりしたため、捜査当局は人質の安全確保や両事件の連動阻止のため早期解決を図ったようだ。
強行突入には高度の政治判断が必要で、バルス首相によると、オランド大統領が直接指示したという。
フランスでは、立てこもり事件は交渉によって人質の安全を確保し、容疑者を生きたまま逮捕することが重視されている。2012年に仏南部トゥールーズでユダヤ人学校が襲撃され、容疑者が立てこもった時には、人質がいなかったにもかかわらず、30時間以上交渉して強行突入に切り替えた。
それに比べて今回は「スピード突入」が際立つ。検察幹部は9日、パリ東部のユダヤ教徒向けスーパーに立てこもったクリバリ容疑者が「人質全員を殺害する」と脅したほか、「仕掛け爆弾を置いた」と爆弾の設置も示唆したことを強行突入の理由に挙げた。幼児や高齢者、女性を含む約15人の人質が長時間耐えられないとの判断もあったとみられる。
一方、仏週刊紙を襲撃した後、パリ郊外の印刷所に立てこもったクアシ容疑者兄弟について、クリバリ容疑者は「同調した」と仏メディアに証言している。警察の調べでは、クリバリ容疑者のパートナーと、クアシ兄弟の兄サイド容疑者の妻は知り合いで、500回以上通話していた。2カ所の立てこもり事件が連動し、容疑者の解放要求が強まれば、政府は苦慮せざるを得なくなる。この点でも早期解決が求められていた。
結果として、スーパーの人質約15人のうち、強行突入以前に殺害された4人以外は無事だった。オランド大統領は特殊部隊を「誇りに思う」とたたえ、スピード突入の成功を強調した。