仏連続テロ:情報機関再編で監視対象から外れた可能性

毎日新聞 2015年01月12日 20時55分(最終更新 01月12日 21時41分)

 【パリ宮川裕章】仏週刊紙「シャルリーエブド」襲撃事件の実行犯で、仏情報機関の監視対象だったサイド・クアシ容疑者(34)とシェリフ・クアシ容疑者(32)の兄弟が、2013年の情報機関の機構改革の影響で監視対象から外れた可能性が高いことが12日、分かった。仏フィガロ紙が、関係者の話として報じた。一連の事件を受け、仏政府は12日、大統領府で関係閣僚による国内治安対策会議を開き、これまでのテロ対策の問題点や改革案などを協議した。

 現地報道によると、兄のサイド容疑者は11年に中東イエメンを訪れアルカイダの傘下組織の訓練を受けた。弟のシェリフ容疑者は05年、シリア経由でイラクに渡って対米軍の戦闘に参加しようと試み、渡航前に捜査当局に逮捕された。また、シェリフ容疑者は、ユダヤ教徒向けスーパー立てこもり事件で射殺されたアメディ・クリバリ容疑者(32)とともに10年に、仏東部の刑務所からアルジェリア人のイスラム過激派の男を脱獄させる計画を立てたとして拘束されている。フィガロ紙によると、過去のイスラム過激派との接点から、11年以降、兄弟は当時の情報機関・中央国内情報局(DCRI)の監視対象リストに入っていた。

 だが12年3月、仏南部トゥールーズのユダヤ人学校などでアルジェリア系フランス人のモハメド・メラ容疑者(当時23歳)=特殊部隊が後に射殺=が銃を乱射し、計7人が死亡した事件後、これを契機に情報機関の地方監視網を強化する機構改革が行われ、DCRIは国内治安総局(DGSI)に再編された。フィガロ紙は関係者の証言として、この機構改革時にクアシ兄弟の情報ファイルが中央から地方に移管され、引き継ぎにも不備があったという。

 また、仏リベラシオン紙などによると、DGSIは人員的な制限から、一定期間、対象者が犯罪や不審な行為を行わない場合、監視の優先順位が低下するという。クアシ容疑者兄弟は、イスラム過激派との関係が濃厚だったにもかかわらず、情報機関の監視対象から外れ、事件を未然に防げなかったため、国内で批判が高まっている。

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