政府は12日、2015年度の政府経済見通しを閣議了解した。物価上昇でかさ上げされる分を差し引いた実質ベースの経済成長率は14年度にマイナス0.5%と5年ぶりのマイナス成長に落ち込んだ後、15年度は1.5%まで回復すると見込んだ。原油安で家計の負担や企業の収益が改善して消費や投資が活発になる、民需主導での成長の姿を描いている。
15年度の名目成長率は2.7%と想定した。名目国内総生産(GDP)は504兆9000億円で07年度以来、8年ぶりに500兆円を超えると見ている。甘利明経済財政・再生相は同日、記者団に対し「大事なことは実質賃金が上がり、消費や生産を後押しする好循環が回っていくことだ」と強調した。
15年度の実質GDPは個人消費が前年度に比べ2.0%増える。15年春の賃上げを見込み、経済対策として自治体が配る割安な商品券なども消費を下支えする。15年度は原油の価格が14年度より27%下がることを前提とし、ガソリンの値下がりなどが家計の負担を和らげる。
設備投資は5.3%増え、更新投資が根強いと見る。昨年4月の消費増税後に落ち込んだ住宅は1.5%増える。
実質成長率には民需が2.0ポイント寄与する。公共投資が14年度に集中した反動で、公需が0.6ポイントの押し下げ要因となる。
輸出は5.2%増、輸入は3.9%増で、輸出の伸びが輸入を上回る。円相場の想定は1ドル=118.7円で、円安を追い風に輸出から輸入を差し引いた外需(純輸出)が成長率を0.1ポイント押し上げる。
内閣府は14年7月に実質成長率を14年度が1.2%、15年度は1.4%と試算していた。増税後の消費が冷え込んだため、今回の見通しでは14年度をマイナス0.5%へ1.7ポイント下方修正した。
政府内では「足元の個人消費はまだ弱く、先行きは慎重に見ざるを得ない」(経済官庁幹部)との声も多い。15年10月の消費再増税を見送ったが、成長率の見通しはほぼ据え置いた。民間エコノミストの予想を12月上旬にまとめた平均は実質で1.7%で、政府は民間よりも景気の先行きを慎重に見たことになる。
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