新成人、おめでとうございます。私たち“大人”は道に迷っているのでしょうか。みなさんには、持続可能な未来へ、かっこよく歩いてほしい。だから。
「私たちは本気です。大人のみなさんも本気になって…」
去年の秋、岡山と名古屋で開かれたESDユネスコ世界会議。そのフィナーレを飾った「子ども会議」のメッセージの一節です。
ESD(Education for Sustainable Development)=持続可能な開発のための教育。やっぱりピンときませんね。
◆大人世代のつけ回し
<環境、貧困、人権、平和、開発といった、現代社会のさまざまな課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そして、それにより持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動のことです>
要は、今目の前にある国内外の深刻なトラブルを将来解決するために「子どもたち、せっせと勉強してください」と言うのでしょうか。つまりは、大人世代の不始末や不作為のつけ回し。本来ならば、願い下げだと言いたいところでしょう。
しかしそれでは、二十二世紀を迎えることができません。ESDや未来について、この際、一緒に考えてもらおうと、子ども会議が招集されました。
愛知県内の小中学校から全部で百二十一人。夏休み前から「気候変動・エネルギー」「生物多様性」「防災」など、テーマごとに五つのチームに分かれ、現場実習や議論を重ねて、ユネスコ=大人世代へのメッセージを発信することになりました。
◆こんな社会はいやだ
持続可能というぼんやりした言葉のイメージを捉えきれずに戸惑う子ども会議のメンバーに、コーディネーターを務めた大学の先生が、問い掛けました。
<十年後、あなたがこんな社会にはしたくない、こんな社会はいやだと思うことは何ですか?>
「戦争のある社会には絶対にしたくない」「戦争になること」「戦争だらけの社会」「日本が戦争をしているような社会」…。
意外と言うか、やっぱりと言うべきか、最も多く挙げられたのが、どのチームもテーマには掲げていない「戦争」でした。
持続可能な未来とは、たとえば戦争のない未来。閉会式本番。子ども会議はメッセージの中に、持続可能な未来へ向けた七つの提言を盛り込みました。練りに練った大人世代への要望です。
「戦争をしないでください。武力で解決しないでください」。とても切実な第一の提言でした。
そして、このように言い添えました。「子どもにできて大人にできないわけはない」と。
さて、新成人のみなさん。私たちは今、すごく反省しています。
子ども世代に「本気になれ」と言われたこと、というよりは、彼らに、そう言わせてしまったことを、です。
大人とは子どもの未来を築く人。子どもたちが頼れる大人、かっこいい大人になるために、みなさんにお願いしたい。
一つ目は、成人の記念に憲法を通読してみてほしい。憲法とは国民ではなく、国家を規制するものです。
たとえば「新・戦争のつくりかた」(マガジンハウス)という本に、こうあります。
<「憲法」は、政府がやるべきことと、やってはいけないことをわたしたちが決めた、国のおおもとのきまりです。戦争したい人たちには、つごうのわるいきまりです>
そのきまりをゆっくり、可能なら所々声に出して読み、みなさんが憲法を守るというよりは、憲法がみなさんを守ってくれていることを確かめてみてほしい。
二つ目に、言い古されたことのようですが、みなさんが新たに手にした一票の力を信じ、投票に出かけてほしい。
◆自らの未来をひらく
<わたしたちは、未来をつくりだすことができます。戦争をしない方法を、えらびとることも>
そして想像してみてほしい。遠い異国の戦場に立つ自分自身を。
その時戦場にある人は、政治家でも、老いてゆく私たちでもありません。
新成人のみなさん、あなたはもう、子どもたちの未来をひらく大人です。
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