イー・モバイルは6日、今秋開始予定のDC-HSDPA(デュアルセルHSDPA)サービスのデモを披露する説明会を開始した。同社代表取締役社長のエリック・ガン氏、取締役副社長の阿部 基成氏、日本エリクソンバイスプレジデントのモーガン・カービー氏が登壇し、説明を行った。
■ 下り最大42Mbps
約40Mbpsでの通信を披露。整えられた環境でのデモとなった |
左から阿部氏、ガン氏、カービー氏 |
DC-HSDPAは、同時に隣り合う2つの周波数帯域を受信に用いることで、通信速度を2倍にする技術。現在、イー・モバイルでは、下り最大21MbpsのHSPA+方式によるサービスを提供しているが、理論上は帯域が2倍となることで、通信速度も倍になる。大容量の通信を行っても、従来より短時間で処理できるようになるため、ユーザー全体での通信処理も向上が見込め、スピードが上がったように感じられるという。
3.9Gの実現に向け、昨年6月、通信各社に対して新たな周波数帯が割り当てられている。イー・モバイルに対してはDC-HSDPAとLTEのサービス提供に向け、1.7GHz帯において10MHz幅が割り当てられている。既存の5MHz幅と新帯域のうち5MHz幅、計10MHz幅でDC-HSDPAサービスが提供される計画だ。
今回のデモでは、説明会場に設置されている商用基地局を用いて、1台の試験端末(USB接続型)で受信し、下り最大40Mbps程度という通信が実現されていた。端末と基地局の間を遮るものがほとんどなく、距離も近く、他の端末が通信していないなど、比較的整った環境下でのデモではあったが、基地局側は商用設備を用いたとのことで、今後の展開に期待を持たせる内容。ただ、1局にアクセスするユーザーが多数存在する場合や通信環境によっては、通信速度は下がると見られる。
技術面での説明は、イー・モバイルではなく日本エリクソンのカービー氏が行った。同氏は「今後、データ通信が盛んになると見られる中、データ通信サービスが中心のイー・モバイルは有利なポジションにある。2つのダウンリンクを同時に割り当てることで、論理的にはスピードが2倍になり、ニコニコ動画のようなサイトを楽しむユーザーも、大容量ファイルを迅速にダウンロードできるようになる」と説明。LTEは、新たな周波数が割り当てられれば構築しやすい方式で、既存周波数を発展させるという手法においてDC-HSDPAはLTEと同等の速度を達成できるとした。
試験用端末 | 可動式と見られるアンテナを備える。筐体には放熱用の穴 |
■ 2本柱の「快適化計画」
「快適化計画」として2つの施策 |
プレゼンテーションを行ったガン氏は、6月末時点での同社ユーザー数が250万に達したことを明らかにしたほか、今後の同社サービスにおいて「快適化計画」を実施するとした。同計画を構成する施策は2つで、1つめは、8月から導入する新たな帯域制御で、帯域を占有するヘビーユーザー(全体の1%以下)に対する速度制限を行う。もう1つが10月頃に予定するというDC-HSDPAサービスになる。
ガン氏は、高速道路を例にして「これまでは7.2Mbpsのレーンと、21Mbpsのレーンがあったが、大きなトラックがゆっくり走る(ヘビーユーザーのこと)と全体的に速度が遅くなる。帯域制御サービスの導入により、大きなトラックは特設レーンを走行することになり、他の車は通常速度でレーンを走行できる。DC-HSDPAの導入は道路が2倍になる」と語り、全体的な速度向上に繋がるとした。
また42Mbpsという速度は、他社に先じて提供するモバイル通信サービスとなることを示し、アドバンテージがあるとした。
質疑応答や囲み取材において、阿部氏から今秋のDC-HSDPAに続き、2012年にLTEを導入する計画であることがあらためて紹介された。DC-HSDPAサービスのエリア展開予定や開始日、料金体系については未定だが、「大都市圏中心に整備する。オフィス街、住宅地同時に展開し、人口の60〜70%をカバーする計画。料金プランについては、さまざまなプランを段階的に導入してきた結果として、現在多岐にわたっていることは認識している。一方、(現在売れ筋の)Pocket WiFiでは今年からフラットレートをオススメする方針にしている。段階制プランのニーズはあると思うが、フラットレートを推していきたい」とした。
DC-HSDPAサービス開始時での端末について、阿部氏は「データカード端末から展開することになるだろう。(Pocket WiFiのような端末は)今後頑張ります」と述べる一方、ガン氏は「Pocket WiFiのような端末の導入は考えている」と述べ、前向きな姿勢を見せた。
また、7月1日に完了したイー・モバイルとイー・アクセスの経営統合について、囲み取材でガン氏は3つのメリットがあるとコメント。1つは財務基盤の強化により、イー・モバイル単体に比べて資金調達が容易になることで、2つめは営業スタッフやコールセンターの統合による効率化、3つめはFMCサービスの提供とする。特にFMCサービスについては、年度内にも何らかの計画を打ち出す考えを示した。
ユーザーは250万に | 帯域制御サービスを高速道路でたとえて説明 |
他社よりも高速サービスを先んじて導入しているとアピール | サービス名や料金、端末、開始日は別途あらためて案内される |
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