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”新生DeNA”クリエイターインタビュー:池田修氏

2015-01-12 12:00 投稿

利用者側の感覚的な部分を含めロジカルにコントロールする

2014年11月に配信された『ファイナルファンタジー レコードキーパー』(以下、『FFRK』)は、アプリマーケットのトップセールスランキングで上位をキープしている人気タイトル。同ゲームをスクウェア・エニックスとともに手掛けたのがディー・エヌ・エー(以下、DeNA) だ。同社は、これまでブラウザゲームでの成功は多かったものの、ネイティブアプリ、いわゆるスマートフォン向けのゲームに関しては苦戦が続いていた。そんな状況のなか、『FFRK』がヒット。今後は、ネイティブアプリで攻勢をかけるため、大きな体制変更なども行っていくという。そこで今回DeNAのクリエイター3名にインタビューを実施。本記事ではDeNAでゲーム開発全体を統括している池田修氏(以下、池田)のインタビューをお届けする。

なお、インタビューの中では各クリエイターの取材に同席していた執行役員の渡部辰城氏(以下、渡部)の回答も合わせて掲載。

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——まずは池田さんの経歴についてお聞かせください。

池田 元々フリーでゲーム開発をしていたんですが、14年前の2000年にカプコンに入り、最初は『カオス レギオン』というタイトルをリリースしました。プログラマとして入社したのですが、僕がゲームを作っていた頃はプログラマが何でもやるのが当たり前の時代だったので、サウンドやグラフィックも自分でやっていました。ゲームを作る仕事においては、シナリオを書く以外のことはほとんどやったことがあります。『カオス レギオン』は主にグラフィック周りの担当プログラマだったんですが、チームが立ち上がったばかりで人数が少なかったので、シェーダ(ライティングとシェーディング、レンダリングを実行するためのプログラム)も書いていて。エフェクトを作る人も少なくて、この作品のエフェクトは、僕が絵を描いたりもしていました。

その後に『新鬼武者』というタイトルに関わり、メインプログラマという形でプログラマのチームを引っ張っていました。このタイトルをひと通り作ったときに、僕がいたチームがオンラインゲームを開発することになって、『モンスターハンター フロンティア オンライン』を立ち上げたんです。最初はネットに興味があったので、ゲームタイトルのネットワーク担当みたいな感じで気軽に始めました。本当に何のノウハウもないところで始めたので、最終的にはデータセンターの契約やサーバーの調達などのところからゲームサーバーを作り、データベースの面倒もみていましたね。

——コンシューマでのゲーム作りをひと通り経験されているんですね。

池田 そうですね。

——DeNAの入社はいつ頃ですか。

池田 2011年11月ですね。オンラインゲームも楽しかったんですが、よりサービスに寄ったところや、プログラマがけっこうビジネスに対しても前向きにやっている所が魅力的でした。カプコンは作品性重視で、開発者がゲームをかなり作り込むのですが、ビジネスやサービスについては専任のスタッフが考えることが多かったんです。僕はそれが開発者が両立できるものだと思っていたので、もっと自由に両方やりたいと思いました。僕自身プログラマであり、アーティスト・クリエイターだと思っているんです。カプコンは、アーティスト・クリエイターの欲求をすごく満たしてくれる会社なんですが、もっと踏み込んだところに行こうと思って転職しました。

——DeNAに入社されてからはどういった仕事をされてきたんですか。

池田 入ってすぐに、新しいタイトルが大炎上していたので、「とりあえず鎮火してきて」と無茶を言われました(笑)。

——いきなり炎上している真っ只中に入られたんですね。

池田 そうですね。僕が入社して二日目くらいにチーム宛に出した「はじめまして」のメールから、直近のチームの動き方の指示を書いていました。「今日はコレをしてください、明日はアレをしてください、ココは次回のリリースに回しましょう」って(笑)

——担当されていたのはブラウザゲームだったそうですが、コンシューマーゲームとは勝手が違いましたか。

池田 ほとんど一緒です。オンラインゲームの運営のノウハウは、カプコン時代に『モンスターハンター フロンティア オンライン』の運営チームと、すごく楽しく、どういう風に運営するかも勉強していたので。提供したうえで、お客さんと向き合いながら運営していくというところは一緒ですね。ブラウザのほうがサーバーの更新が早くできるし、コンテンツの作りこみに時間がかからない分早く提供できるのですが、それ以外は一緒だなと思います。

——その後は、どんなタイトルに関わられてきましたか。

池田 入社直後に担当したタイトルが比較的安定してきた後は開発全体というか、ほぼすべてのタイトルを見るようになりました。そもそも全部を見るようになったきっかけというのが、担当タイトルがMobageの中で売り上げがトップクラスで、なおかつトラブルが一番少なく、安定していたからなんです。例えば、いくら売上が高くても、トラブルが多かったりそれに伴って残業が増えるということってありますよね。その辺のプロセスやプロジェクトマネジメントの分野で、当時の担当タイトルのやり方を広げていって欲しい、というリクエストがあったんです。最初はエンジニアリングやプロジェクトのマネジメントをしていたんですが、新規タイトルのレビューをしている中で、やっぱりちょっとゲーム作りの部分で未熟なチームが見えてきたんです。そのときにコンソールの知見が役に立つので、プロジェクト全体に目を配り、ゲーム開発の部分もより深く見る、ということになっていきました。今は各タイトルをレビューするという立場に立っているので、そこで新規開発されるタイトルは全部見ているということになります。

——カプコンからDeNAに入られて、具体的に一番違ったことは何でしたか。

池田 「やっちゃいけないことがあまりない」ところでしょうか。やっぱり強いIPを持ってる会社ってお客様が持っているイメージを大切にするために、このタイトルではこういうことはやってはいけないという禁則事項のようなものがあるんです。DeNAでは「試しにやってみてもいいんじゃないか、お客様に問うてみてもいいんじゃないか」というところがあるので、そういう意味では自由度が高いと思います。

——DeNAに入られてこれはよかったなと思えた、ガッツポーズをとったような作品はありますか?

渡部 当時担当していたタイトルは売上も上がっていったから、あの時はうれしかったでしょう。

池田 そうですね。計画通りになったのでしめしめ……と(笑)。お客様の反応が良くて、楽しんでくれているのは本当にうれしかったですね。

渡部 今はほぼすべてのタイトルに入っているからね。

池田 なんだかんだで、自分はプログラマでありクリエイターなので、細かいディテールでしめしめと思うんです。コンソール出身なので、フレームレート60分の1秒で勝負するのって、僕にとっては当たり前だったんですが、誰もがそうではないんですね。例えば、今度リリースされるパズルゲームがあるんですが、パズルゲームなのに触っている感触が悪くて、「エフェクトが出るまで、4フレームくらい遅れている気がするんだけど」と言ったのですが「そんなはずはない」という返事が返ってきたんです。そこで、60分の1で撮れるムービーに録画して確認するように言ったら、本当に4フレーム遅れていることがわかり「ほら見ろ」と(笑)。ただその後、チームミーテイングで「我々も池田さんくらい動体視力を上げる必要がある」という話が出たそうなんですが、動体視力だけの問題ではないので(笑)。

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——池田さんは、ゲーム作りでどんなところを大事にしていますか。

池田 僕自身は、そんなにセンスが尖ってる人間だとは思っていなくて、どちらかと言うと手法や理論できちんと積み上げていくタイプなんです。なので、ある程度遊んでくれている方々の感情や感触、感覚的なことを含めてロジカルにコントロールしていけるようになるというのが、僕が目指しているスタイルです。

——具体的にこんなゲームを作りたいというよりも、大局的な目標があるということですね。

池田 センスや感情に訴えかけるものが何もないものは、ただの技術デモになってしまうのですが、ゲーム作りの8~9割はロジカルに、きちんと作っていかないといけません。そこで作りきれないようだと、たとえセンスのある人が社内にいてパートナーが組めたとしても、ゲームとしてのセンスが発揮できなかったりするので。まずはDeNA全体で、きちんとゲーム作りができるようにするというのが、今の目標ですね。

——最近は『ファイナルファンタジー レコードキーパー』など、ヒットタイトルが出ていると思うんですが、池田さんのチーム作りが浸透してきているという感触はありますか。

池田 どうでしょう。議論はけっこうできるようになってきた感じですね。土壌はきちんとできてきているような気がします。

渡部 メンバーそれぞれが考えるようにはなってきています。そこから、答えに持っていったり、決めたりすること、一旦これに向かって進めようっていうのがなかなか難しい。それが出来る人はなかなか少ないので。

——実際に、今見ているタイトルはどれくらいですか。

池田 15本前後はあるでしょうか。開発のマイルストーンがあるので、プロトタイプ、α版、β版と順番で各タイトルごとに入っています。週に2~3回レビューのミーティングが設定されていて、OKだったら引き続き進行するんですが、ちょっと問題があるようだったらトラブルシューティングをするために入り込んだり、やり直してもう一度持ってきて、などと指示を出したりするので、αが2回になったり3回になったりしますね。内製タイトルは特に、現場に入ることも多いです。

——その数をこなしているのはすごいですね。ご自身のモチベーションは、どうされているんですか。

池田 こういうゲーム作りがいいんじゃないか、とか、モバイルでゲームを楽しんでいる方にこういうものが提供できたらいいんじゃないかなど、ゲームの面白さをまだまだ提供しきれていないところがあると思っているので、それを提供できるようにしたいですね。このゲームから提供できるようになる、「進んでいるな」という手応えがあるところが最大のモチベーションですね。

——技術基盤というか、ゲーム作りの基盤作りは難しいですね。

渡部 池田には現在、単純にレビューしているだけでなく、プログラマ全員のアサインを任せていて、どのプロジェクトに誰をどう配置するかということまで全部決めてもらっているんです。

——DeNAの場合は、入社希望者が全員プログラマというわけではないですよね。そうすると、ゲーム作りが目的ではない人も入ってくることがあると思うんですが、本人の希望と職種をすべてアジャストさせることができるものですか。

池田 ゲームはすごく作るものが多いので、9割は何かしらマッチできるものが出て来ます。そういうところにフィットしないメンバーは、技術基盤寄りにアサインします。ゲームはビジネスを回していくところなので、例えば決済系を始めとするお金周りのところは、エンターテインメントなどと言っていられないほど重要なので、そこを担当してもらうということを考えたりしていますね。

渡部 新卒などジュニア人材も育てるというか、そういうこともやってもらっています。だからゲーム志望でなくても、ゲームを作ることができるようになる。

——それは、コンシューマ時代の経験がすごく活きているっていうことですか。

池田 カプコンの時代は「体で覚えろ」的な感じだったので、当時「こうやったらうまくいくんじゃないのか」と思っていたことを、今試しています。それでうまくいったりいかなかったり……という感じですね。

——今後DeNAにて目指すところは何ですか?

池田 やはり、きちんと理論手法が現場で身につけられるようになってもらうことですね。ゲームの出来映えのうち80%のところまではどのチームでも作れるようになるので、残りの20%をDeNAとしてはどうするのか。自分としては、アーティスト・クリエイターでありたい。ゲームをどう作り上げるかという手法がメンバーにきちんと浸透して開発に繋がるという基盤が作れた上で、僕は好き放題やりたいです。

——引き続き頑張ってください。本日はありがとうございました。

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▲左から佐々木悠氏、池田修氏、高木正文氏。

池田氏以外のほか2名のクリエイターのインタビューは下記関連リンクからチェックできます。

【関連記事】
”新生DeNA”クリエイターインタビュー:佐々木悠氏
”新生DeNA”クリエイターインタビュー:高木正文氏

ファイナルファンタジー レコードキーパー

ジャンル
RPG
メーカー
スクウェア・エニックス/ディー・エヌ・エー
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS6.0、Android2.3以上

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