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EDITOR'S / CHIZURU MUKO

  • 編集部で一番背が高いウィメンズ・ファッション担当。タイツフェチなので、パンツよりも断然スカート派!コスメはオーガニック派で、バターはエシレ派。スポーツはゆる~いゴルフを時々。尊敬するミュージシャンはフレディ・マーキュリー。

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「足のサイズは24.5」の呪縛

夏前にオーダーした「ジェイエム ウエストン(J.M.WESTON)」の靴が年末に届きました。

アーティスティック・ディレクターのミッシェル・ペリーさんにアドバイスをもらいながら革の種類や色を自分で選んだ一足。パーフォレイト(穴)の下のオレンジ色がポイントです。足に馴染むまではしばらく我慢の日々だろうと覚悟していたのですが、なんの、なんの。3日目で自分の足の一部となりました。デザインだけではなく、サイズもその場で計測をして私に合うサイズを選んでもらったからです。好きなデザインで、身体に合ったサイズの靴をはけるのはとても幸せです。

足のサイズは自称24.5センチ。本当は25センチです。

この25センチというサイズを人前で堂々と言えるようになるまでに一体何年かかったことでしょうか。な、なんと 30歳を超えるまでは「自分の足のサイズは24.5センチ」と固く思い込んでいました。思春期に背が高いことがコンプレックスで深く悩み、足のサイズも「女ですもの24.5センチ以上であってはならない」という呪縛(思い込み)から逃れられなくなっていたからです。今でこそ25センチ以上のサイズを揃える靴屋さんは多いですが、以前は24.5センチまでが基本の品揃えであり、25センチはいわば規格外。規格外の自分を認めることができなくて、24.5センチに無理やり脚を押し込み、テーピングをして履いたりしていました。今思えば、ホントおかしな話ですが、それが当たり前だと本人は信じていたのです。

コンプレックスは、見る目を曇らせ、大きいサイズの靴は同じデザインでもなぜか可愛く見えないと思い込んでいました。家から遠いところにオープンした「大きいサイズの靴屋さん」に赴くもなんだかコソコソしつつ、欲しいデザインに出会えなかったという経験もあります。

服も靴もサイズ選びはとても重要。身体に合ったサイズは服を数倍輝かせて、足に合った靴は目には見えない満足感をくれます。それはわかっていても、たかがサイズ、されどサイズ。サイズは自尊心や思い込みともつながっています。24.5センチと25センチの間には何の意味もないのに目には見えない深い谷と闇があり(笑)、5ミリの差は繊細なティーンエージャーを傷つけるのに十分な長さだったのです。

女性の靴は24.5センチまで、という当時の多くの靴ブランドや靴屋さんの設定は最大公約数を反映した結果だったのでしょう。靴やブラジャーなどサイズがポイントとなるファッションアイテムを扱う場合、売れ筋サイズの欠品は売り上げに大きく響きます。ただ、きっと当時の「24.5センチ」の売り上げの中には私のような「自称24.5センチ」の売り上げが多く入っていたでしょうし、「そもそも自分のサイズがないから買わない」という数字にならない売り逃しがたくさんあったに違いない、と思う今日この頃です。

私はたまたま足のサイズが25センチだから、25センチの足を持つ女性の気持ちはわかりますが、足のサイズも背の高さも胸の大きさも、その他諸々の身体のパーツに関しても、「標準サイズ」以外の人がファッションを語る時にはその人にしかわからない切ない経験があるのではないでしょうか。

話は変わりますが今日、15年前に買った「グローバーオール」のダッフルコートをサイズ直しに出しました。大好きだったのに、アームホールが広くて今着ると野暮ったくてずっとお蔵入り。靴と違って服の"ジャストサイズ"は時代によって変わりますよね。近所のお直し屋さんに相談してあちこち詰めることにしました。どんな風に生まれ変わって返ってくるか、2週間後が楽しみです。

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